想像してみてほしい。もし、耳が聞こえない状態で突然、大きな地震が起きたら、私たちはどうやって身の安全を守ればよいのだろうか。

高知ろう学校で6月11日、地震を想定した避難訓練が行われた。児童や生徒たちには、事前に訓練があることは知らされていない。いつものように穏やかな授業が行われている最中、突如として緊迫した緊急地震速報が鳴り響いた。

何も知らされていない児童や生徒たち
何も知らされていない児童や生徒たち
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突然の揺れ、そのとき教室は

教室に一瞬の緊張が走る。しかし、耳が聞こえにくい子どもたちにとって、警報の音だけで瞬時に危険を察知するのは難しい。そこでいち早く動いたのは先生たちだ。

先生はすぐさま手話や大きなジェスチャーを使い、児童たちに机の下へ入るよう促す。訓練上の激しい揺れは数分間にわたって続いた。

手話やジェスチャーを使い児童に行動を促す
手話やジェスチャーを使い児童に行動を促す

暗く狭い机の下で不安な時間を過ごす中、先生と児童は手話を使ってコミュニケーションを取り続ける。揺れが収まると、先生は速やかにヘルメットを装着するよう指示を出した。

児童を気にかける先生
児童を気にかける先生

「今から安全な場所へ行きます。それまで待ってください。大丈夫?怖かった?」

先生の優しい手話による問いかけに、子どもたちも少しずつ落ち着きを取り戻していく。児童が安全に待機している間、先生たちはトランシーバーなどの無線機を使い、他の教師と連携を取りながら避難場所への安全な経路を慎重に確認する。

避難経路の安全を無線機を用いて確認
避難経路の安全を無線機を用いて確認

「視覚」で安全を導くための工夫

安全な経路が確保されると、避難場所への移動が始まる。ここで重要なのは、耳の不自由な子どもたちが「一目で次に取るべき行動が分かる」ことだ。

誘導の際、先生の手には特製のボードが握られていた。そこには大きく「にげる」と書かれた文字、走って逃げる様子の分かりやすいイラスト、そして避難場所である図書室の写真が貼り付けられている。

避難指示の書かれた特性ボード
避難指示の書かれた特性ボード

言葉による指示が届きにくくても、このボードを見れば誰もが直感的に状況を理解できる。高知ろう学校ならではの、命を守るための細やかな工夫である。

この日の訓練には、児童生徒16人が参加した。学校全体で、目で見て分かる視覚情報をもとに、子どもたちが自ら安全に避難できるよう日々の取り組みを重ねている。

訓練を通して見えたものとは

無事に避難を終えた子どもたちの表情には、安堵とともに真剣な眼差しが浮かんでいた。

小学部の児童は「押さない、走らない、しゃべらない、戻らないように気を付けた」と、避難時の基本ルールである「おはしも」をしっかりと振り返る。

中学部1年の山田恭平さんは、避難時に注意した点について「先生の話を(手話などで)しっかりと聞くことだ」と答え、「これからも落ち着いて行動したい」と力強く語った。

「これからも落ち着いて行動したい」
「これからも落ち着いて行動したい」

高知ろう学校の柏原智子教頭は、「速やかに静かに避難できたと思う。今後起こるかもしれない地震に備えて、実際に役立つ訓練にしていきたい」と手応えを口にする。

「今後起こるかもしれない地震に備えて、実際に役立つ訓練にしていきたい」
「今後起こるかもしれない地震に備えて、実際に役立つ訓練にしていきたい」

災害時、情報が届きにくい環境にあっても、確かな備えと工夫があれば命は守れる。学校では今回の訓練から見えた課題を一つ一つ洗い出しながら、子どもたちの安全をさらに確実なものにしていく構えだ。