2020年、宮城県柴田町で建設会社社長のインド人男性が死亡した事件をめぐり、暴行に加わったとされ、強盗致死などの罪に問われていた元従業員の差し戻し審で、仙台地方裁判所は6月25日、元従業員に対し、無罪判決を言い渡しました。
起訴状などによりますと、パキスタン国籍で建設会社の元従業員、レフマン・アブダル被告は、2020年、柴田町船迫で、別のパキスタン人の男が金品を奪おうと、建設会社の社長のシン・ラカウェンダラさんの首を絞めるなどして死亡させた際、暴行に加わったとされ、強盗致死の罪などに問われていました。
2021年、一審の仙台地裁は捜査段階の供述などをもとに、レフマン被告がシンさんの体を押さえたとして共同正犯の成立を認定し、懲役23年の実刑判決を言い渡しました。
一方、控訴審で仙台高裁は、その供述について、通訳による許容範囲を超えた意訳があり「事実誤認がある」として一審判決を取り消し、審理をやり直すよう仙台地裁に差し戻していました。
6月10日に始まった仙台地裁での差し戻し審で、弁護側は、「犯行について意思は通じ合っていない」などと主張し、無罪を主張。
レフマン被告は通訳で異なる内容が伝えられることを防ぐため、黙秘権を行使し、法廷では発言しないとしていました。
25日の判決公判で、榊原敬裁判長は「被告人質問では問いと答えがかみ合わない場面が多くみられるなど、被告人の理解力や母国との文化的な背景の違いなどから、自らの認識を正確に表現することができるか定かではない」と、犯意や共謀立証の穴を指摘。
その上で、「共謀以外にも事実関係全体を合理的に説明できる別の仮説が存在し、共謀を認定するには合理的な疑いが残る」などとして、レフマン被告に無罪を言い渡しました。
齋藤拓生弁護士
「“疑わしきは被告人の利益に”という刑事裁判の大原則をきちっと踏まえて、直接証拠がない間接事実。裁判員の皆さんが間接事実を的確に認定して無罪になった」
弁護側によりますと、レフマン被告は拘留中に体調を崩した影響で、今後も病院で治療を受けるということです。
齋藤拓生弁護士
「起訴されてからですね、5年半かかっています。100キロ近くあった体重も、現在もう半分以下になり、拘置所での食事もですね、口に合わずで、運動もできないという中で、結局自力歩行できなくなって、大変な苦しみを味わって25日まで至っている」
一方、仙台地検は、「判決内容を精査し適切に対応したい」とコメントし、控訴するかどうか、方針を明らかにしていません。
判決が言い渡された後、裁判員の一人が取材に応じ、審理を進めるなかで「言葉の壁」を感じたと振り返りました。
裁判員
「前回の裁判の内容、被告人の証言っていうのは全部そちらから引っ張られてきてる内容で、通訳の方と齟齬が実際あるのかなっていうところが結構あって、実際その通訳の内容と、被告人が伝えたい内容が本当にそうであったのかなっていうところ、分からない部分が結構多くて。審理として正しいものなのかどうかっていうのを、ちょっと不安に思いながら、聞いていたところがありました」
