アメリカとイランが戦闘終結に向けた覚書に署名し、中東情勢に緊張緩和の兆しが見え始めています。

「これでようやく物価高も落ち着くのでは」と期待する声は少なくありません。

しかし現実はそう単純ではありません。

取材を進めると、増加コスト分が転嫁された商品はこれから出荷されるため、日本の物価高のピークはむしろ“これから”であることが見えてきました。

私たちの日常を支える生活必需品が、秋にかけて本格的に値上がりしていく可能性があります。

■ガソリン価格「いずれ下がると思うが…時間かかるのでは」

兵庫県尼崎市のガソリンスタンド「冨尾石油セルフ尼崎園田店」では、今年3月、中東情勢悪化の影響を受けて140円台だったレギュラーガソリンが一気に180円台まで跳ね上がりました。

現在は政府の補助により150円台に抑えられています。

緊張が緩和されたことで、ガソリン価格が下がることを期待していますが、店長の尾野英一さんは「いずれ下がってくると思いますけど、かなり長く時間はかかるんじゃないですかね」と話します。

早期の値下げを願いながらも、楽観はできないというのが現場の正直な声です。

■クリーニング店では一部の溶剤は今後3割程度値上がりする見込み

大阪市内のクリーニング店「クリーニングコージー」では、業務のいたるところで石油系の溶剤やビニールを使っています。

益田浩二社長は1か月前の取材に「石油の溶剤がなくなると、たちまち仕事が止まってしまいます」と語っていました。

現時点で供給は安定しているものの、一部の溶剤は今後3割程度値上がりする見込みだといいます。

夏物クリーニングのニーズが高まる秋ごろには事態が落ち着いてほしいと話します。

【クリーニングコージー益田浩二社長】「落ち着いてもらわんと困るよね。生活もしていかなあかんし、クリーニング屋さんって厳しい業界なんで」

■「物価はこれから秋にかけて本格的に上がってくる」

戦闘終結やホルムズ海峡の開放で、物価も下がるのでしょうか。

野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト・木内登英氏は「値下がりが起こるのは当面はなさそうで、むしろいろんなものの物価はこれから上がってくる」と指摘。そのワケは「時間差」だと説明します。

今、市場に出回っている食料品や日用品の多くは、中東情勢が悪化する前に生産されたものです。

情勢悪化による原油高などのコスト上昇が価格に転嫁された商品の出荷は、まさにこれからになるということです。

【野村総合研究所・木内登英さん】「イラン情勢は改善して原油価格は下がってるんですけども、逆に我々の身の回りのものは、これから秋にかけて勢いをつけて上がっていく。

洗剤とかシャンプーとか、接着剤とか、化学繊維で作られた服とか、そういうのが上がってくる」

■関西各地で値上げの影響も

すでに関西各地では値上げの影響が出始めています。

滋賀県彦根市では、日常生活に欠かせない市の指定ごみ袋が、6月19日の出荷分から値上げされました。中東情勢の影響で製造費が高くなっていることなどが要因です。

「燃やすごみ用」の袋(40リットル・税抜き)は、10枚入りが130円から230円に値上がり。市によると、一般的な家庭では年間1500円程度の負担増になります。

【彦根市生活環境課 吉田誠課長】「非常に値上げというのは心苦しいところではあるんですけれども、値上げがいつまでというのは決まっておりません。中東情勢がいつ、どの水準で収まるかもよくわからない中で、答えが難しい」

市民からは「便乗値上げや!元の値段に戻してほしい」「倍くらいになるんよね。1人で怒ってた、家で」といった厳しい声が上がっていました。

■来月には飲食料品2419品目が値上げへ

大阪市内のスーパーでは、メーカーから7月に値上げするとの通知が相次いで届いています。

値上げはパンメーカーを中心に、即席めんなど多岐にわたっています。

フレッシュマーケットアオイの内田寿仁社長によると「パンメーカーは合計で約700品目ぐらいの値上げになるかと思います」ということです。

帝国データバンクによると、7月に値上げを予定している飲食料品は2419品目にのぼり、少なくともおよそ2割が中東情勢悪化の影響を受けているとされています。

さらにスーパーを悩ませているのが包装用資材の値上がりです。弁当容器は3割値上がりし、食品を包むラップやトレー、無料で提供しているポリ袋なども先月から値が上がりしています。

現在は商品価格への影響が出ないよう工夫していますが、内田社長は「秋頃ぐらいからどんどん出てくる可能性もある」と警戒感を示しています。

買い物客からも「え、そんなに上がるんですか…ますますやりくり考えないといけないですよね」という戸惑いの声が聞かれました。

■「今後物価が下がっていくことはない」専門家は厳しい見方も

野村総研の木内氏は、今後物価が下がっていくことはないという厳しい見方を示しました。

【野村総合研究所 木内登英氏】「物価の基調がかつてのように、ゼロとかマイナスではなくて、プラスになってきてますんで。下がることは全体としてはないと思いますので、物価の上昇ペースが緩んでくるのは年末ごろになるんじゃないかな」

もはや「物価が上がること」が当たり前になりつつある時代に、政府はどのような手を打てるのでしょうか。

■来年4月から2年間食料品の消費税を引き下げる案も…

国民会議では来年4月から2年間、食料品の消費税を1%に引き下げ、中低所得層への給付によって「実質負担ゼロ」とする案が浮上しています。

ただし野党はこの案に反発しています。

政治ジャーナリストの青山和弘氏は、来年4月からこの案を実施し、2年後に再び消費税を引き上げることについて「自民党内からも『そんなことできるわけない』という声があがっている。ある意味不誠実な案ではないか」と指摘。

また、「年間5兆円程度の財源をどこに求めるかという課題、そして物価高対策やガソリン・電気代への補助、防衛費増額といろいろなところに税金がかかる中で、ここに税金を使っていいのか」とも述べた上で、次のように話しました。

【青山和弘氏】「理屈じゃない。政治論。高市さんが選挙でこれをやりたい。悲願だと言った以上、やらなきゃいけない。これで押し切っていくと思います」

さらに青山氏は、円安が進めばより輸入品の価格が上昇し、物価高がさらに加速するというリスクも指摘し、消費税を減税しても、効果を感じられない事態も予測しました。

(関西テレビ「newsランナー」 2026年6月19日放送)

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