不安いっぱいの子どもに寄り添う小さな存在“セラピードッグ”

注射を前に不安でいっぱいの子どもに、犬がそっと寄り添う。
鳥取・米子市のせぐち小児科では、「セラピードッグ」が診療をサポートするユニークな取り組みが進んでいる。

山陰地方ではまだ珍しい”動物介在療法”の現場を訪ねた。

“小さな”患者に届ける“大きな”安心

米子市のせぐち小児科の待合室には、オーストラリアン・ラブラドゥードルの2匹の犬、メルシーとミカがいる。
白くふわふわとした見た目の2匹は、来院する子どもたちに寄り添い、診療をスムーズに進める「セラピードッグ」として活躍している。

セラピードッグとは、医療や福祉の現場で高齢者や障害者、がんや心の病気などを抱える患者に寄り添い、体と心の機能回復を助ける役割を担う犬のことだ。
2匹は週に1日”出勤”し、訪れた子どもたちと触れ合う。

この日クリニックを訪れたのは3歳の女の子。
これから予防接種を受けることから不安な表情の女の子に、メルシーがそっと寄り添った。

注射が終わると、女の子は泣くことなく笑顔で「痛くなかったから楽しかった。ありがとう」と言った。

オーストラリアン・ラブラドゥードルのメルシー(左)とミカ(右)
オーストラリアン・ラブラドゥードルのメルシー(左)とミカ(右)
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「自分でやってみよう」独自で開拓 院長が一から育成に挑む

このクリニックに動物介在療法が導入されたのは2021年のこと。
瀬口正史院長が、県外で活動するセラピードッグの存在を知ったことがきっかけだった。

当初は兵庫県の日本レスキュー協会から育成されたセラピードッグを毎回関西から受け入れていたが、2025年1月からはクリニックが独自に育成を開始した。

瀬口院長はその経緯を「毎回、関西から来ていただいていたんですけど、今度は自分でやってみようということで、犬を購入して自分たちで飼育してトレーニングもした」と話す。

現在は2匹を自宅で飼育しながら、週に1回クリニックに連れてくるスタイルで運営している。

「セラピードッグ」導入の経緯を語るせぐち小児科・瀬口正史院長
「セラピードッグ」導入の経緯を語るせぐち小児科・瀬口正史院長

病院で「子供たちの笑い声が聞こえる」 多くのハードル克服し運営

メルシーとミカが属するオーストラリアン・ラブラドゥードルは、セラピードッグの「先進国」とされるオーストラリア生まれの犬種だ。
性格が穏やかで、毛が抜けにくく、においが強くないことからセラピードッグとして「適任」とされている。

しかし、繁殖が認められているのはオーストラリア国内だけで、日本では入手が難しい犬種でもある。

医療現場で活動するうえで衛生管理も欠かせない。
クリニックでは感染症予防のため、2週間に1回の体毛カット、シャンプー、爪切りを徹底。
さらに半年に1回は血液と便の検査を受けている。

子どもたちと安全に触れ合えるよう、週に1、2回は警察犬の訓練士によるトレーニングも行っている。

自前での育成には多くのハードルが伴うが、それでも続ける理由を瀬口院長は「子どもたちの笑い声が聞こえる。小児科でワクチンを打つと、大体は泣きますよね。心に問題がある方も犬に会うことで変わってくることもある」と語る。

「セラピードッグ」の存在で安心して予防接種を受ける子供
「セラピードッグ」の存在で安心して予防接種を受ける子供

広がる動物介在療法 入院中の子供の心のケアにも

こうした取り組みは、地域の医療機関にも波及しつつある。

鳥取大学附属病院もこの活動に注目し、2026年度から児童精神科病棟でも定期的に受け入れ、入院中の子どもたちの心のケアに活用している。

「小児病院や大きな病院で長く入院している子もいますよね。入院しているお子さんが勇気づけられたらと思っています」と瀬口院長は期待を込める。

日常的な体調不良から心の病気まで幅広く対応する「かかりつけ医」として、せぐち小児科は、セラピードッグという新たな選択肢を地域に根付かせようとしている。

山陰ではまだ例の少ないこの取り組みが、病気と向き合う子どもたちの心に寄り添い続ける存在として、さらに広がっていくことを瀬口院長は願っている。

鳥取大学附属病院の児童精神科病棟でも「セラピードッグ」導入
鳥取大学附属病院の児童精神科病棟でも「セラピードッグ」導入
TSKさんいん中央テレビ
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