日本国憲法が施行されてから、まもなく80年が経つ。その間、一度も改正されることなく現行の文言を維持してきた憲法が、現在国会の憲法審査会で問い直されている。自衛隊の明記、緊急事態条項の新設の是非をめぐって、沖縄県選出国会議員の意見を聞いた。

 「解釈に頼る憲法ではなく、明文で責任を果たす」

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5月14日、衆議院の憲法審査会が開かれた。自民党や日本維新の会など政府・与党が改憲の必要性を訴えるなか、野党側からは反対論や「内容によって判断すべき」との慎重論が相次いでいる。

沖縄県選出の自民党衆議院議員・宮崎政久氏は、弁護士資格を持つ法律の専門家だ。
政府の要職に就く立場だが、今回はいち衆議院議員として取材に応じた。宮崎氏は現状をこう断じる。

「(自衛隊が)国を守るためにどのように担っていくかという大前提としての規定が抜けていることがあると思う。解釈に頼る憲法では無くて、明文で責任を果たしていく憲法へと変えていくために、いま憲法を改正したいと考えています」

自民党は改憲によって自衛隊と9条を巡る論争に終止符を打つとともに、国防の担い手として自衛隊を明文化すべきだとの立場を取る。9条1項(戦争の放棄)と2項(交戦権の否定)については維持する方針を示し、国を守る存在を憲法に刻み込む必要があるという主張だ。

ただ明記するだけでは済まない問題

自衛隊の明文化に対して真正面から異議を唱えるのが、無所属の参議院議員・高良沙哉氏だ。

当選以前は憲法学を専門とする大学教授だった高良氏は、条文の細部まで熟知した学者の目で改憲の「落とし穴」を指摘する。

「自衛隊のような強度の実力組織になっている状態でこれを明記した場合、今まであった(交戦権を否定する)9条2項よりも新しい条文の方が優先されるような可能性、(9条2項が)効力を無くしてしまう可能性があるので、ただ明記するだけという議論は当たらないです」

高良氏が懸念するのは、条文の「格」の問題だ。一般的に、後から制定された規定は前の規定に優先するという法解釈の原則がある。自衛隊を新たな条文で明記した場合、9条2項が実質的に空文化するリスクがあるとみる。

今年3月に行われた日米首脳会談では、自衛隊のホルムズ海峡派遣が大きな注目を集めた。高良氏は「9条の存在こそが、国際社会に対して日本が戦争を否定する根拠になってきた」と振り返り、改憲によってその抑止力が失われることへの危機感を示す。

「制度の空白を埋める」緊急事態条項 「濫用の危険」も

憲法審査会による議論のもう一つの焦点が、緊急事態条項のイメージ案だ。

「大規模な自然災害」「感染症の大規模なまん延」「内乱」「外部からの武力攻撃」を緊急事態として定義し、それらを理由に選挙の実施が不可能と判断された場合、国会議員の任期を延長できるとする案だ。
さらに内閣の権限を強化して法律と同等の効果を持つ「緊急政令」の制定も盛り込まれている。

新型コロナウイルスが猛威を振るった時期を念頭に置く宮崎氏は、緊急事態条項の必要性を訴える。

コロナ禍当時、国は法的根拠が曖昧なまま、いわば「お願いベース」で行動制限を求め続けた。緊急時に内閣が何をどこまでできるかを憲法に明記することで、制度の空白を埋めるべきだというのが宮崎氏の立場だ。

一方、高良氏は「濫用の危険」を鋭く指摘する。

「どういう時に緊急事態が発せられて、どの程度(国民の)権利の制約っていう事になるかという事については、本当に明確でないと結局緊急事態と判断するのは国民ではないわけですから。濫用の危険があるので本当に警戒しなければいけないことだと思います」

高良氏がとりわけ警戒するのが、緊急政令の仕組みだ。時の政権の意向次第で、国民が戦争への動員を強いられる恐れがあるという。

「戦争が起こって権利が制約されて、それが当然だ、国民が甘受すべきことだという議論になっては本当に困る」

憲法改正の最終的な判断は

宮崎氏は「80年前と今を比べて、社会の実相も大きく変わった」と述べる。

変えるか変えないかを含め、国民全体で議論を深め、必要であれば改正するという営みを「不断に続けるべき」という立場だ。

対して高良氏は「憲法の現代的な要素は80年前からすでに備わっている」と断言する。変える必要はなく、その精神を現代の文脈で活かすことこそが政治の力であり、国民が憲法を使いこなすことで政治の腐敗を防ぐこともできると説く。

憲法が改正されるとなると、国会による発議を経て国民投票が実施される。最終的な判断は、国会議員でも憲法学者でもなく、私たち一人ひとりに委ねられる。
80年間変わらなかった文言を変えるかどうか。その問いの重さを、自分事として受け止めながら国会の議論を注視していく必要がある。

沖縄テレビ

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