今年3月、政府は2026年度から30年度の“物流政策”の指針となる「総合物流政策大綱」を閣議決定。宅配便の受け渡しは「置き配」などの“非対面方式”を現在の2倍の50%まで引き上げる方針だという。

2030年度までは物流革新の「集中改革期間」だそうだ。置き配の話題がよく取り上げられているが、ほかにも「商慣行の見直し」「物流人材の地位・能力の向上と労働環境の改善」などさまざまな施策に取り組むらしい。

物流革新でわれわれの生活はどう変わるのか?

日本物流学会会長で、各種物流政策の検討・策定に深く関わった流通経済大学の矢野裕児教授に詳しく聞いた。

消費者に合わせるのは限界が来ている

【流通経済大学 矢野裕児教授】
『総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)』で打ち出した方針は、大きく5つに分類され、そのうち、われわれの生活に深く関わってくるのは「商慣行の見直しや荷主・消費者の行動変容」と「物流効率化」です。

「商慣行の見直しや荷主・消費者の行動変容」とは、例えばコンビニは、多いところでは1日に8台ぐらい商品の配送があるのですが、それを減らすといったことです。

ローソンでは、弁当や総菜などのチルド商品の配送を1日3回から2回に変更しました。セブンイレブンもおにぎりや弁当などの配送を1日4回から3回へ減らし、地域によっては2回に減らす試みも始まっています。

多くの人が利用するコンビニにも変化が
多くの人が利用するコンビニにも変化が
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それにより何が変わるかというと、“商品の欠品”が増えます。

お昼などピーク時以外はおにぎりやサンドイッチの品ぞろえが少なかったり、開店時に全部の棚に商品が並んでない、といったことが起こってくるでしょう。

通販などで、今は翌日に届いている注文商品が、翌々日になることもあると思います。

他にもセールの時など、今は商品が売れたら次々補充されますが、これからは「売り切れ御免」になるかもしれません。

これまでは、消費者のニーズにあわせて、「いつでも商品棚に並んでいる」ように早朝から1日に何回も配送し、スーパーの開店時に商品がそろっているのが当たり前でした。

(流通経済大学 矢野裕児教授)
(流通経済大学 矢野裕児教授)

しかし物流はもう限界が来ています。

今の生活を少し見直さなければいけない時期が来ているのです。

置き配が抱える問題

もうひとつ大きく変わるのが“宅配の受け取り方法”です。
「物流効率化」の施策のひとつで、玄関先などへの置き配や宅配BOX、コンビニでの受け取りなどの“非対面方式”での受け取りを、現在の25%から2倍の50%に引き上げるというものです。

非対面での受け取りは「再配達を減らす」「荷物受け取りのために在宅しなくてよい」など、ドライバーと受け取り側それぞれにメリットがあります。

しかし課題も山積しており、なかでも「トラブル時の責任問題」は早急な対策が必要です。

置き配や宅配BOXの受け取りの場合、届かなかった、紛失したということが起こります。そのような時、誰に言えばよいのか?

通販会社なのか配送業者なのか、今は明確ではありません。また一部の通販会社や百貨店などは、配送業者がどこなのか、ドライバーの連絡先なども消費者に分からないケースが多々あります。

「補償」の問題も重要です。

さまざまなケースが起こりうるため、誰がどのように責任を取るのかをルール化するのが非常に難しく、さらに金額の問題もあります。

紛失した商品が数百円など低価格の場合だと通販会社がすぐに新しい商品を手配してくれたりしますが、高額の場合は簡単にはいかないことが多いでしょう。

事業者側の保険加入も進んでいますが、多くが1万円程度までというのが現状です。

事業者によって「宅配のルール」が少し異なっているのも課題です。

「宅配BOXへの配達」や「置き配」を指定していても、事業者によっては「まずピンポンを鳴らし、在宅していたら手渡しする」運用をしています。

また、「置き配指定でも宅配BOXが空いていたら入れる」事業者もいます。

配達のルールや補償について、国交省は早急にガイドラインを作ろうとしていますが、各社の足並みがそろうのに時間がかかるかもしれません。

地域の実情に合った新たなサービスに期待

「置き配」が増えたことで、宅配BOXの売り上げが非常に増えています。

セキュリティ面に加えて、雨風を防ぐこともできるので、玄関先に宅配BOXがある家を見かけることが多くなりました。

マンションの宅配BOXも、新築では標準化が進んでいますし、築古物件の後付け設置も普及してきています。

しかし、マンションを中心に宅配BOXの数が足りないという問題は依然残っています。

そんな中、最近、民間で面白い取り組みが始まりました。

ちょっとした空きスペースを利用した「宅配荷物の無人受け取りサービス」です。

自宅近くの「受け取りスポット」に荷物を届けてもらい、都合の良い時に取りに行くという形です。無人拠点ですが、監視カメラと受け取り時の厳格な認証により、不正持ち出しや盗難を防ぐ体制が整えられているようです。

階段やエスカレーターの脇の空きスペースやATM跡地など小さなスペースの有効活用と、配送業者はまとめて配達でき再配達も不要、受け取り側は自分の都合で受け取りができると、それぞれにメリットがあるようです。

今年から本格展開が始まったサービスですが、宅配BOXの設置が難しいマンションや、数が足りていない所には非常に便利なのではないでしょうか。

都心部と地方では宅配事情が異なります。今後、その地域の実情に合ったさまざまなアイデア、サービスが物流問題の解消につながることを期待したいと思います。
(流通経済大学 矢野裕児教授)

取材: 高知さんさんテレビ

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