源泉の過剰用途で温泉資源を保護
深まる秋と言えば紅葉。それに温泉。スキーとともに温泉も人気の北海道後志地方のニセコ地区。温泉付きのホテル建設が進む中、その温泉資源を保護する動きが出てきた。
この記事の画像(10枚)北海道内屈指の温泉地ニセコ。紅葉も深まり、絶好の温泉シーズンを迎えている。
"温泉ソムリエ" 八木隆太郎キャスター:
豊富な泉質と湯量を誇るニセコ地区。この温泉が今後掘れなくなるかもしれません
スノーリゾートの中心地・倶知安町ひらふ地区では、温泉を楽しめるホテルが集中している。ところが、源泉に変化が見られるようになった。
道総研 高橋徹哉さん:
(源泉の)過剰用途だと思います。水位が徐々に下がっているのは、入れ物の中の量が少しずつ減っている証拠
その背景には過剰なリゾート開発が影響していた。スノーリゾートの中心地・倶知安町ひらふには約20軒の温泉付きホテルがある。
ひらふ地区の温泉は、ナトリウム、塩化物、炭酸水素塩泉、天然の炭酸ガスが溶け込んでいる。そのため血行促進に効果があると言われている。
2020年は新型コロナウイルスの影響で、観光客は減っているが、上質な雪質と、豊富な温泉が魅力のニセコ地区では、海外資本のリゾート開発が進んでいて、ひらふ地区だけでも、2021年までに3軒の温泉付きホテルが開業する予定だ。
しかし、専門家は、こうした開発が温泉資源に影響を与えていると指摘する。
道総研 高橋徹哉さん:
(源泉の)過剰用途だと思います。2016年、17年、同じ夏の期間で比べると(ある源泉の水位が)10メートルくらい下がっているということは明らかに入れ物の中の量が少しづつ減っている証拠です。源泉の数が増える、つまり温泉使用量が増えているのが主な原因だと思います
そこで、北海道は温泉の資源を守るために動き出した。
北海道保健福祉部 萩谷友洋さん:
(来年から)ひらふ坂周辺については、新たな温泉が掘削できない保護地域に指定しました。(東側と南側のその他の地域は)準保護地域となりました。準保護地域では、既存の温泉井戸から250メートル以上の距離を離さなければ、新しい掘削ができない、ということになりました
温泉資源を確保するため、特にホテルが密集しているひらふ坂周辺を保護地域に指定し、これ以上温泉が掘れないよう定めた。さらにその周辺も源泉の距離を250メートル以上離さないと、新たに掘れないルールに変えることを決めた。
この要綱改正に地元や観光客は…
観光客:
いいことだと思います。森がどんどん切り開かれてるので。ニセコにはたくさんあるので、これ以上温泉は増えなくていいかな。
地元住民:
うーん、微妙だね。掘りすぎるのも問題だけど、そこそこ温泉出るなら施設もあったほうがいい。でも、今まであった施設で温泉でなくなったとか、そういうのも困る
このような道内の温泉資源保護の動きはニセコ地区が初めてではない。
北海道保健福祉部 萩谷友洋さん:
温泉資源の衰退現象がみられる地域など、これまでに12カ所を保護地域に指定しています。例えば札幌市内で言いますと、定山渓温泉ですとか、近隣で言いますと登別温泉ですとか、保護地域に指定されています
温泉資源を守るべく動きだした北海道。今回の指定は、16年前の札幌平野部の「準保護地域」の指定以来だ。
北海道保健福祉部 萩谷友洋さん:
今回のひらふ地域のように急激に温泉開発が進んでいる地域はないと認識している。北海道としては温泉資源を守りながら末永く利用できるようにしていきたいと考えています
賑わいの一方で資源をどう生かせるか。ニセコ地区がいま試されている。
(北海道文化放送)