停戦期限が迫る中、イランとアメリカによる2回目の和平交渉の行方が注目されている。イラン側の交渉団の1人として同行したテヘラン大学のメフディ・ハンアリザデ教授が、日本のメディアの取材に初めて応じ、内情などを語った。
「アメリカは目標何一つ達成していない」
19日、Mr.サンデーが取材したのは、イラン最高峰のテヘラン大学で教授を務める、メフディ・ハンアリザデ氏。
1週間前に行われた和平交渉では交渉団の1人として、最前線に同行した人物だ。
今回、日本のメディアの取材に初めて応じた。
テヘラン大学・ハンアリザデ教授:
私は様々な核交渉の局面で、イラン交渉団の顧問も務めてきました。アメリカは当初の目標を何一つ達成していません。戦争で成果を得られず敗北したのは彼らです。
停戦期限の21日が迫る中、世界が注目する2回目の和平交渉。
その行方はどうなるのか?ハンアリザデ氏が、イラン側の内情や本心を明かした。
テヘラン大学・ハンアリザデ教授:
2回目の和平交渉の具体的な日程はまだ決まっていません。
現時点では、交渉に進むための環境が整っているようには見えません。
アメリカメディアでは「今日や明日にも行われる見通し」と報じられてきたが、実は、イラン側が同意していないという。
その理由を次のように主張した。
テヘラン大学・ハンアリザデ教授:
アメリカ側は約束を1つも実行していないからです。前回の交渉前に、アメリカ側はイランが出した事前条件を受け入れると、仲介国のパキスタンに文書で伝えていました。
例えば、イランの凍結資産の解除や中東における米軍の移動停止などですが、彼らはそれを反故にしたのです。
今回は、約束が守られない限り、また、議題が明確にならない限り、イランは2回目の交渉に応じません。
一方で、アメリカ側は、前回の交渉後、バンス副大統領が次のように主張した。
アメリカ・バンス副大統領:
ボールはイラン側にある。進展はあったが、最終的に大きな合意に至るための、最後の一歩を踏み出せるかどうかは、イラン側の対応次第だ。
アメリカ側は、核開発の放棄などを“譲れない条件”として提示し、後はイランにかかっているとしたが、ハンアリザデ氏からは、驚くほど強気の言葉が…。
テヘラン大学・ハンアリザデ教授:
今回の交渉は、イランがアメリカに譲歩をして、見返りに利益を得るようなものとは完全に異なります。いわば、戦争に勝利したということです。
「イランが譲歩する場ではない」
2回目の和平交渉へ、イラン側の本音とは…。

テヘラン大学・ハンアリザデ教授:
イランは戦争で優位に立ち、こちらの論理を押し通すことに成功しました。
いわば、戦争に勝利したということです。
戦闘の停止をより望んでいるのは、イランよりもアメリカです。
もはや交渉は、イランが譲歩する場ではなく、アメリカ側に出口を用意するための場なのです。
イラン側は「譲歩しない」と主張。
方や、トランプ大統領は16日…。
トランプ大統領(16日):
イランとは多くのことで合意に至っていて、良いことが近々起こるだろう。戦闘の終結が決まれば、イスラマバードに私が行くかもしれない。
イランと合意した点は多いと強調。
ハンアリザデ氏の話とは真っ向から食い違っているが…。
テヘラン大学・ハンアリザデ教授:
イラン側のレッドラインは、以前要求した10項目に基づいています。全ての戦線における戦闘の終結や、戦争の再発防止も必須条件としています。
少なくとも言葉の上では、アメリカ側がイランの10項目のうち70から80%を受け入れました。
したがって、書面上ではほぼ合意しているというのは正しいです。
しかし、それは和平交渉の合意が近いことを意味しません。残る20%の重みが非常に大きく、問題の核心は依然として未解決のままなのです。
その残る20%が…。
テヘラン大学・ハンアリザデ教授:
「核問題」と「ホルムズ海峡問題」です。
私の見解では、2回目の交渉は非常に短期間で行われる可能性があります。なぜなら、これらは「YES」か「NO」かの問題だからです。
核開発を行うか否か。
ホルムズ海峡を完全開放するか否か。2回目の和平交渉で落としどころを見いだせるのか。
イラン革命防衛隊“海峡再び封鎖”と主張
船員(19日、ペルシャ湾上):
4月19日、日曜日です。この辺りの船はちょっと少なくなりました。開放されたという発表があったので、ホルムズ海峡に向かって行ったのです。
今、混乱極まるホルムズ海峡。その発端は18日…。
イラン・アラグチ外相のSNS投稿(17日):
停戦期間中は全ての商船に、ホルムズ海峡を全面的に開放する。
イランのアラグチ外相がイスラエルとレバノンの停戦合意を受け、ホルムズ海峡を開放するとSNSに投稿。
トランプ大統領もSNSで…。
トランプ大統領のSNS投稿:
ありがとう!
だがその直後、海上に緊張が走った。
無線(18日):
イラン軍に告ぐ、イラン軍に告ぐ。どうか私たちを撃つのを止めて下さい。
これは、とある船から入ってきた無線の音声。
イラン革命防衛隊に銃撃されているとみられる。
無線(18日):
どうか私たちを撃つのをやめてください、撃つのをやめてください。停止します。停止しますので。
我々は***(船舶名)である。引き返します。引き返します。
(背後で銃声 バンバン!バンバン!)メーデー!メーデー!メーデー!
よく聞くと、声の裏で銃声が鳴り響いている。
アラグチ外相の「開放宣言」から一転、イラン革命防衛隊はホルムズ海峡を再び封鎖したと主張。
アメリカ側が海上封鎖を続け停戦合意に違反しているためだとした。

現地のタンカーなどの動きを分析している東京大学大学院・渡邉英徳教授は…。
東京大学大学院・渡邉英徳教授:
アラグチ外相の(ホルムズ海峡開放の)発表があった直後ぐらいからの様子を見ているんですけど、(船が)一斉にホルムズ海峡を目がけて進んでいるのがわかると思います。
だが、わずか20分足らずで…。
東京大学大学院・渡邉英徳教授:
一斉に今、元いた場所に戻って行って。赤はタンカーなんですが、それらがやはり開峡を目指して通行を始めるんですけれども、これを見てると引き返したり止まったりしてしまいます。
再封鎖に、多くの船が翻弄された。
中には海峡を突破した船もみられたが、インド船籍の2隻が、イランの艦艇から銃撃されたと、複数のインドメディアは報じている。
「もはや海峡は以前の状態には戻らない」
2回目の和平交渉を前に緊迫する情勢。
一方で、イラン内部にも不穏な空気が…。
アラグチ外相がSNSで表明した開放宣言に反して、イラン革命防衛隊が船に「再封鎖」を伝えた無線を聞くと…。
イラン革命防衛隊の無線音声(17日):
海峡は封鎖されている。我々は一部の愚か者たちのSNS投稿などではなく、指導者、モジタバ・ハメネイ師の命令によって海峡を通過させる予定だ。
イラン革命防衛隊はアラグチ外相を含めているかの文脈で、「一部の愚か者」とまで言い放った。

政府との溝があるのだろうか。
元・イラン革命防衛隊の司令官に聞くと、封鎖を維持したい目的があるという。

元イラン革命防衛隊司令官 キャンアニモ・ガダム氏:
もはやホルムズ海峡は以前の状態には戻りません。
イランは決して海峡を手放さず、新しい2つの法的ルールを導入するでしょう。
イランから石油を買う船には通航料を課さないこと。もう1つは、他から買う船や貨物船には通行料を課し、それを安全保障費用に充てるということです。
仮に、次の和平交渉で戦闘が終結しても、通航料を課す可能性が高いという。
「目標叶わないと判断すれば再び戦場に戻る」
交渉団の1人、ハンアリザデ氏も…。

テヘラン大学・ハンアリザデ教授:
イランはずっと通航料を取ってきませんでしたが、その善意ある対応に対して否定的な反応が返ってきたため、新しい安全保障を導入することにしたのです。
2回目の交渉で、目標が叶わないと判断すれば、再び戦場に戻ることになります。
和平交渉の出口が見えない中、緊張が高まるホルムズ海峡。
現地の船員を取材すると悲痛な叫びが…。

まさに今も、ホルムズ海峡周辺で停泊を続けるタンカーの船長、カプール氏は…。
カプール船長:
私たちは関係する全ての当局、全ての国に訴えます。どうか戦争を早く終わらせてください。これは誰にとっても人類にとっても、良いことではありません。私たちは家族と希望を持つただの人間です。どうか私たちをこの紛争地帯で巻き添えにしないでください。
開放から一転、再封鎖となり、緊張が高まる海峡周辺には、日本の船もいる。

日本船主協会・篠原康弘理事長:
日本関係船舶で42隻、船員さんでは1000人以上がこの中に閉じ込められて、50日を経過しました。(船員に)大きなダメージを与えていると思っています。
湾内が大変危険が高まってきて、船内に留まることが危険だということになれば、これはもう船を放棄してでも船員の命を優先せざるを得ません。
停戦の期限が迫る中、2回目の和平交渉の実現ははたして…?
(「Mr.サンデー」4月19日放送より)
