校舎に響く三味線の音が、歴史を語りかける。秋田・由利本荘市にある由利高校民謡部は、創設から57年にわたり地域の文化を守り、次の世代へと受け継いできた。初心者からスタートし、全国の舞台を目指す生徒たち。その活動の裏側には、伝統をつなぐ覚悟と未来への思いがある。
創設57年 受け継がれてきた民謡
校内に響き渡る三味線と太鼓の音。真剣な表情で音を合わせているのは、由利高校民謡部の部員たちだ。
同好会として始まった活動は代々受け継がれ、2026年で創設57年を迎える。
現在の部員は1、2年生合わせて15人。それぞれが三味線、太鼓、歌、踊りと役割を担い、一つの演目を作り上げている。
長い歴史を持ちながらも、部の雰囲気は柔らかい。互いに声をかけ合い、音が揃った瞬間には自然と笑顔がこぼれる。
ほとんど初心者 それでも音は重なる
部員の多くは、民謡未経験からのスタートだ。
2年生の佐藤一花さんは「中学校まではバレー部で、民謡とは無縁だった」と話す。祖母が踊りを続けていたこともあり、民謡部を知ったとき、「自分もやってみたい」と入部を決めた。
玄関での勧誘が転機になったのが、2年生の西村昊さん。「演奏を聞いた瞬間、三味線の迫力に圧倒された」という。
ただ、独特のリズムには苦戦した。「リズムを作って一定に保つのが本当に難しい」と話す西村さん。それでも繰り返し練習することで、少しずつ体に染み込んでいった。
30曲に挑む発表会 つかんだ全国への切符
部員たちが特に力を入れているのが、年に一度の民謡部発表会。2026年は「秋田音頭」や「秋田甚句」など、県内の民謡を中心に約30曲を披露する予定だ。
曲目の多さに、部長の佐藤璃音さん(2年)は「正直、かなり多い」と本音を漏らす。「キャスティングを考えるのも大変で、もっと人数が欲しい」と笑う。
それでも努力は確かな結果につながった。
2025年11月の郷土芸能発表会・県大会で最優秀賞を受賞し、7月の全国高校総合文化祭への出場が決定。2026年の総文祭は秋田開催とあって、部全体の士気も高まっている。
支える人がいて歴史は続く 最高の舞台へ
民謡部の活動を支えているのは、顧問の樫村篤先生やOBたち、そして創設時から指導を続けているコーチの存在だ。
小松與志男コーチは、「まとまりの輪を大切にしてきたことが、ここまで歴史が続いてきた理由」と話す。
多くの先輩たちが守ってきた伝統を、今の部員たちが未来へとつないでいく。
「引退しても『民謡部で良かった』と思える部活にしたい」と語る佐藤部長の言葉には、57年分の歴史を背負う覚悟がにじむ。
全国大会は7月、湯沢市で開催される。
積み重ねてきた日々の練習、その全てを音と踊りに込めて――。由利高校民謡部は、地域の文化とともに、全国の舞台へと歩みを進める。
(秋田テレビ)
