主人公は働く人!働くことが最高になる新しい働き方「セムコスタイル」とは?

カテゴリ:ビジネス

  • 働き方も変わった!今の時代に合う働き方を見つけよう
  • あなたは“大人”ですか?最も重要な原則は「信頼」
  • 「セムコスタイル」は企業の規模や業種問わず適応

「セムコスタイル」という言葉を知っているだろうか。

フレックスタイム制、リモートワーク、自分の夢や目標を追いかけられるような“ちょっとだけリタイア”、合理的な理由が説明できる範囲内で自分の給与を設定、といった新しい働き方のことだ。

フレックスタイム制やリモートワークなど現在日本企業でも導入されている制度は、実は約30年前からブラジルのある企業がすでに実施していた。それは1945年創業の「セムコ社」で、父親から会社を引き継いだリカルド・セムラーが、この取り組みで先代とは全く違う新しい組織に生まれ変わらせたというのだ。

このセムコ社のユニークな働き方はセムコスタイルと呼ばれ、欧米を中心に世界で広まりつつある。

著書『奇跡の組織』(光文社)では、実際にセムコスタイルを導入し、従業員の一人あたりの売上高が過去最高、ボーナスを社員同士で話し合うなど、10ヵ月で組織改革を行い奇跡が起きた企業の、その過程と変化について記されている。

秦卓民さん

著者の秦卓民さんは、マネジメント会社の株式会社ENERGIZEの代表取締役で、セムコスタイル・インスティテュート・ジャパンの代表でもある。CEOであるセムラーが自ら出資した「セムコスタイル・インスティテュート」とライセンス契約を結び、日本で独占的に「セムコスタイル」のコンサルティングをしている。

そんな秦さんにこれからの日本で必要とされるかもしれない、今話題のティール組織の先を行くと言われる「セムコスタイル」や、今の日本の働き方について話を聞いた。

究極のゴールはMake Work Awesome!

「セムコスタイル」という言葉を初めて聞いた人も多いだろう。「簡単に説明すると、“今の時代に合った社員の働き方を一緒に見つけていきましょう”というスタイル」と秦さんは言う。

「現代の働き方のモデルは科学的管理法の父と呼ばれるフレデリック・テイラー(アメリカ)が考えたものがベースです。それは工業が中心の社会になった時代の働き方であるため、現代とは大きく異なります。しかし情報社会になり、多様化も進む中で働き方だけは100年前と同じモデルなのです。

そして、企業で働いている人は、抱えている事情も違います。だからこそ、一律の働き方はおかしい。今の時代に適していて、企業ごとのオリジナルな働き方を見つけるフレームワークがセムコスタイルの5つの原則です。この原則に沿って個々の企業でディスカッションを進めていくことで、“Make Work Awesome!=働くことが最高”になる道しるべが見えてきます!」

「セムコスタイル」の5つの原則は信頼・代替コントロール・セルフマネジメント(自主経営)・徹底的なステークホルダーアライメント・創造的イノベーション。セムラーが中心となって発見した究極の原則だ。

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最も重要な原則は「信頼」

中でも、「信頼」が最も重要な原則であり、他の4つの原則の土台になるという。「一緒に働いている人たちと信頼関係はある…」と思っている人も多いかもしれない。しかし、セムコスタイルの信頼は社員たちが互いに「一人の“大人”として接すること」だ。

社内で多くのルールを設けていたり、限られた人しか情報が見られないようにしていることが多くの企業にあるだろう。だが、そうした状態では社員が「信頼されていない」と感じてしまう。一緒に働くメンバーは、交通ルールを守り、子育ての方針についても自身で決め、住まいも決めることができる社会的にも知性ある“大人”のはず。だからこそ、一人の大人としてもっと責任を与えてもいいはず、というのがセムコスタイルだ。

「スタイル」と聞くと型にはまったルールがあってそこに当てはめていくイメージがあるが、「セムコスタイル」は5つの原則があるのみ。この原則に則っていれば全てがセムコスタイルになるという。

「セムコスタイルの中心軸は、どうやったら“知性=情報”が集まるのか、ということ。それをベースに作られた組織モデルでもあります。情報にフィルターを掛けないことが、社員の信頼へとつながります。

例えば、『同僚が転職を考えている』という情報。この情報を逃さずに、その理由をしっかり考える機会を設けることが、良い企業へ改善することにつながる。目をつぶってしまうと、その機会が妨げられることになってしまいます。

アイデアやお客様からの情報、同僚間で話す解決策や不平不満も知性です。こうした知性を『どうすればもっと言いやすい環境になるのか』を中心にセムラーは考えました。これは簡単に見えますが、実際にはできていないことが多いですね」

「セムコスタイル」は企業規模、業種問わず適応

オランダの金融大手・ABNアムロ銀行は「セムコスタイル」を導入し、組織改革を行った。

導入するにあたって、さまざまな問題はあったが、役職者の一人が嫌われることも覚悟でこの改革に臨んだという。銀行のような企業でも「セムコスタイル」が通用することが証明された。

「セムコスタイル」はベンチャーで機動力や小回りがきく企業の方が適応すると思いきや、どんな規模の企業でも、どんなジャンルの企業でも適応するという。

だからこそ、「今の時代に合うスタイルを模索することが重要です。そこに勇気を持って踏み込める企業とそうでない企業の、どちらが生き残るかと考えたら、踏み込んで改革をする企業。『セムコスタイル』を一時的なブームで終わらせず、自然と全ての企業がセムコスタイルのような企業になることを目指しています」と秦さんは語った。

そんな秦さんに今の日本の働き方改革について思うことを聞いてみると「サンプルが多すぎる」と指摘する。

「企業での事例(サンプル)が新たに発表されると、その都度その事例を取り入れようとする企業が多いように思います。リモートワークがいいと言われればそれを実践したりしている。しかし、職場に行くことで安心する人がいる一方、リモートワークを望む人もいたりと、社員が思うことはみんな違います。働き方改革の主人公は“働く人”なんです。国が先導するよりは、それぞれの会社の社員が中心となって改革していくと良い会社になるのではと思います」

今、日本で行われている働き方改革は、国が中心となって考えられているが、セムコスタイルでは人が中心。セムコスタイルが目指すべき究極のゴールは「Make Work Awesome!=『働く』を最高にする!」こと。つまり、社員が会社で働くことが最高と思える組織を作ることが目的だ。会社ごとに働き方も仕事の進め方も異なる。本当の働き方改革とは、一律の改革ではなく、会社ごとに存在するものなのかもしれない。

最後に明日からできることについて、「いくつかありますが、上司がコーチ役になることが第一だと思います。部下に質問をして彼らの力を引き出す力を身に付ける。指揮命令ではなく、見守ることが大事。まずは、上司をコーチ役にして、それから従業員を10人単位のチームに区切ること。何万人という単位の企業であってもです。あとは、月に1回は不満の声を聞いたりするような、働き方を見直すミーティングをしてください」と秦さんからアドバイスをもらった。

『奇跡の組織 「最高の働き方」を導き出すセムコスタイル5つの原則』(光文社)

秦卓民
セムコスタイル・インスティチュート・ジャパン代表。株式会社ENERGZE代表取締役。2009年に総合コンサルティング会社である株式会社ENERGZEを共同設立。顧客にはリンクアンドモチベーション、Plan・Do・See、サニーサイドアップなど多数。

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