物であふれがち…今しておきたい両親のための「実家の片付け」

「人生100年時代」を考える。

カテゴリ:暮らし

  • 自分の家の片付けと実家の片づけとでは、ゴールが異なる
  • 「いる・いらない」の判断に迷うものは、一時保管箱へ
  • 片づけた後も、定期的にリバウンドチェックをすること

日本は今まさに、超高齢化社会の真っただ中。そこにプラスされるのが「人生100年時代」という考え方。

世界規模で長寿化が進み、100歳を超えてもなお元気に生きる人たちの姿が珍しいものではなくなるという。

そこで意識しておきたいのが、「実家の片づけ」だ。

年老いた両親がまだ元気なうちに、実家を居心地のいい場所にしておく。年をとるとなかなか物が捨てられなくなるというが、物で溢れがちな実家をキレイにしておくことで、不意の事故を防ぎ、両親の人生を豊かなものにする。これは最後の親孝行ともいえるだろう。

しかし、そこで注意すべき点があるという。

それは「自分の家の片づけと、実家のそれとはまったく異なるもの」であるということ。いったいなにが違うというのか。実家片づけアドバイザーであり、『カツオが磯野家を片づける日』など、「実家の片づけ」に特化した著書を多数執筆されている渡部亜矢さんに話を聞いた。

「実家の片づけ」のゴールはどこにあるのか

自分の家を片づけるのと、実家を片づけるのとでは、そもそも目指すべき「ゴール」に違いがあるという。

「自分の家を片づける際のゴールは、自分たちが心地よい空間にしたり、楽に家事ができたりするような家です。一方で、実家の片づけのゴールは、“親が安心して、安全、健康に暮らせる家”にすること。そこで注意すべき点は、実家の主はあくまでも親であり、子どもが目指すキレイなモデルルームのような家がゴールではないということなんです」(渡部亜矢さん、以下同)

ゴールの設定を誤ってしまえば、それがトラブルのもとにもなりうる。まずは認識を正すことが第一歩といえる。

しかし、ここでやりがちなのが、「親が亡くなるまで、そのまま放置しておこう」という考え方。渡部さんはそれを「逃げの論法」だと指摘する。

「いちいち親の言うことを聞いていられない。険悪な雰囲気になりたくない。そんな理由で実家の片づけから逃げる人たちがいますが、なんの片づけもしないまま迎えた遺品整理は大事なものがわからず、親が元気なうちにする片づけとは比べものにならないほど大変で、かつ哀しいものです。なかには業者に頼む人もいますが、想像以上に莫大なお金がかかってしまうケースも。そう考えると、重い腰をあげて、いまのうちに少しずつ実家の片づけを進めておくのが賢い選択だと思います」

一時保管箱を活用し、親世代に気持ちよく片づけてもらう

いざ、実家の片づけをはじめようと決意したものの、なにから手をつけるべきかわからない。なるべくなら、効率的に進めていきたい。渡部さんによると、大切なのは「事前に行う準備」だという。

「最初に、親に電話をして聞き取りを行いましょう。日常生活がどのように変化しているのか、置きっぱなしのものはないか、使っていないものはないか、さらには健康状態や近所との付き合いにいたるまで、現在の親を取り巻く環境を把握しておくことが肝心です」

置きっぱなしのものや使っていないもののチェックはともかく、近所付き合いを把握することがどう片づけに結びつくのか。ここで思い出してほしいのが、実家の片づけのゴールは「親が安心して、安全、健康に暮らせる家」ということだ。ここには、親の精神衛生も大いに関係してくる。

たとえば、ご近所さんと頻繁に行き来するような関係を築いているのだとすれば、実家もそれにあわせて不便がないように片づけてあげなければいけない。友達が遊びに来たのに、座布団が出せない。湯呑がない。そんな小さなストレスが溜まるようでは、正しく実家を片づけられたとはいえないのだ。

また、親世代には「ものを捨てること=悪いこと」という価値観を持っている人が少なくない。これが実家にものを溢れさせる原因にもなるのだが、片づける際にも大きな障害になりうる。一つひとつのものに対して、なかなか「いる・いらない」の判断がつきづらいのだ。

「だからこそ、実家を片づけるときには、“一時保管箱”を設けましょう。片づけの際、『いる・いらない』の判断に迷うようなものは、一時的に保管しておくのです。そうすることで、『捨てなくてもいい』という安心感から、親世代も片づけに意欲的になり、スピーディーに進めることができます。一時保管箱に入れたものは、半年ほど保管しておいて、使う気配がなければそのまま捨ててもいい。見えなくなってしまえば、親も忘れてしまうので簡単に処分できます」

定期的に帰省し、実家がリバウンドしていないかチェック

事前に入念な聞き取りを行い、一時保管箱を活用することでスムーズに進められる実家の片づけ。しかし、それでも片づけに労力のかかる「厄介なもの」がある。それが、「思い出の品」だ。

「特に亡くなった方の思い出がつまったものは、なかなか捨てられないものです。そういったものが出てきたら、一つひとつ吟味をするのは膨大な時間がかかってしまいます。なかには、写真を一枚一枚懐かしそうに眺めはじめてしまう人も。そうなると、片づけもストップしてしまう。そういったものは、一箇所にまとめておいて、家中がキレイになってからゆっくり整理すればいいのです。その際、たとえば写真はデータ化するなど、親世代の知らない方法で整理整頓をフォローしてあげましょう」

こうして、ある程度実家がキレイになったら、それで終わり…ではなく、「リバウンド」していないかどうかも定期的にチェックする必要がある。

「実家の片づけが完了したら、次の帰省時に一時保管箱が開けられたかどうかを確認します。一旦開けてしまうと、忘れていたはずのこんなもの、あんなものに目がいってしまい、結果としてたくさんのものを部屋に戻してしまうのです。また、洋服が脱ぎっぱなしになっていないかどうかもチェックします。洋服の山ができていたら、リバウンドのサイン。さらに、まとめ買いが増えていないか、ゴミは定期的に捨てられているかなども確認しておきます。せっかく片づけができたのならば、リバウンドは防ぎ、快適な家をキープできるよう外からも注視してあげることが大切です」

年老いた両親に、人生100年時代を、生涯を通じて豊かに過ごしてもらうためには、実家の片づけはマスト。

面倒だからといって後回しにすればするほど、結果的に自分たちの首を絞めることにつながる。これは自分たちのためでもあると認識をあらためて、早速今週末にでも実家に電話をしてみよう。


取材・文=五十嵐 大
取材協力=実家片づけ整理協会 代表理事 渡部亜矢
https://jikka-katazuke.jp/

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