バレンタインデーまであと1カ月となり、チョコレートの商戦がいよいよ本格化しています。

しかし今、その舞台裏では「カカオショック」と呼ばれる価格高騰の波が押し寄せています。

原料となるカカオの価格は、生産国が異常気象に見舞われ、生産量が減少。

数年前と比べて2倍、3倍に高騰しています。

この危機にメーカーや販売店はどう対応しているのか、そして打開策はあるのか、緊急取材しました。

■急上昇するカカオ価格、打撃を受ける日本市場

「正直に言います、高いですね…。原料が上がってしまうと、価格転嫁をしなければならない事態があって、本当に心苦しい状況が続いています」

こう語るのは、高島屋大阪店ストアマーチャンダイザーの中村茂樹さん。

高島屋大阪店ではことし、バレンタイン向けに販売されるチョコレートの平均価格が去年と比べて約10%上昇する見通しです。

その原因は、チョコレートの主原料であるカカオの世界的な価格高騰です。

カカオの価格は去年1月にピークを過ぎたものの、2022年と比べるとなお倍以上の水準で推移しています。これが「カカオショック」と呼ばれる現象です。

チョコレート専門店も「値段上げたくないけどやむを得ない」と苦しい胸の内明かす

大阪市中央区にあるチョコレート専門店「エクチュア」の植松真央社長も苦しい胸の内を明かします。

【エクチュア 植松真央社長】「コロナの時から包材が上がったり、色々な材料の原価が、どんどん上がってきていた。

追い打ちをかけるように”カカオショック”。1.5倍とか、どんどん(仕入れの)値段が上がっている」

この店では年間1~2トンものチョコレートを使用しており、原料価格高騰の影響は甚大です。

現在は値上げやカカオ使用量の少ない焼き菓子の種類を増やすなどの対応を取っていますが、さらなる対応を取らざるを得なくなるかもしれません。

【エクチュア 植松真央社長】「できれば(値段は)上げたくはないけど、やむを得ない。次はどうしていくかとなると、今はやっていないが、”ボリューム感を減らす”などの展開になる」

■「安い時代には戻らない」専門家が警鐘

広島大学の佐藤清隆名誉教授は「(カカオショックの)最大の原因は、世界で最もカカオ豆を生産しているコートジボワールとガーナが異常気象で生産が落ちた」と説明します。

佐藤名誉教授によると、この2カ国は世界のカカオ生産量のおよそ7割を占めますが、異常気象で弱ったカカオの木にウイルスが蔓延し、生産量が激減しました。

そして日本のカカオ輸入はこの2カ国にほぼ8割を依存しているため、特に大きな影響を受けているのです。

佐藤名誉教授は今後の見通しについて「農園が”カカオショック”で、基本的に(世界で)カカオが足りないこと学習した。(今後は従来通りの量を)売らないと思います。かなりの確率で、カカオ豆の値段は、2023年以前の安い時代(現在の半値以下)には戻らない」と警鐘を鳴らしています。

■危機を打開する新たな取り組み

こうした厳しい状況を受け、海外に頼らない新たな取り組みも始まっています。

三重県に本社をかまえる食用油などを製造する「辻製油」は、三重県多気町にある商業施設「VISON(ヴィソン)」と協力して、2021年に国産のカカオの栽培を開始しました。

「こちらがカカオの木になります」と案内してくれたのは、辻製油営業部の井藤利浩課長。ビニールハウスの中には、すでにカカオの実をつけた木々が生い茂っていました。

現在は29本のカカオの木のうち10本に実がなっているといいますが、井藤課長は「カカオは熱帯植物なので、温度と湿度の管理がすごく難しい」と語ります。

商業化の目処はまだ立っていないものの、時間とコストをかけて国産カカオを育てる思いを次のように訴えました。

【辻製油営業部 井藤利浩課長】「純国産カカオを使用したチョコレートを、いつかは販売させてもらいたい。今騒がれている”カカオショック”、そこの部分で、少しでも役にたてるようなことが、今後できればと考えています」

■カカオなしでチョコの味?代替チョコも登場

カカオショックを乗り越えるための取り組みはほかにもあります。

大阪府泉佐野市の「不二製油」が開発したのは、カカオを全く使わない「代替チョコレート」。

エンドウやキャロブというマメ科の植物などを使用して、ミルクチョコレートのような味わいや香りを再現しています。

【不二製油代替チョコ開発チーム 石渡暁之課長】「最近ですとカカオの相場もすごく上下動が激しい。購買の方も苦労されていると思う。

そういった点で、1つ安心材料(代替チョコ)があるだけでも、買い方を含めて安定的にしていけるかなと。

バレンタイン向けなどに本格的に製造されているお客さまも多いので、今、右肩上がりに(売り上げが)増えています」

■経済学者「代替チョコや輸入に頼らず新しい楽しみ方を模索していくことが重要では」

経済学者の安田洋祐教授(政策研究大学院大学)は、「カカオは育てるのにも時間がかかります。そして取引価格はすごく上がっていますが、カカオ農家はそこまで潤っていないのでは、ということが言われています。なので、代替チョコレートであったり、輸入に頼らず、新しい楽しみ方を模索していくことが重要ではないかなと思います」と話しました。

国産カカオの栽培や代替チョコレートの開発など、危機を乗り越えようとする新たな取り組みに、豊かな「チョコレート文化の未来」がかかっています。

(関西テレビ「newsランナー」2026年1月13日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。