生乳余りの生産者が救われ、店舗は客を引き寄せ、食べておいしい鮮度が命のフレッシュチーズとは。

映像に映るのは、つやつやの白いチーズが乗ったルッコラと生ハムのピザです。
チーズの中は、とろりとした白いクリームが入っています。

これは、ミルキーで濃厚な味わいが魅力のイタリア生まれのフレッシュチーズ「ブッラータ」です。

世界中の食通たちをとりこにする一方、賞味期限が短く鮮度が命とあって、日本への輸入は少なく手に入りづらいチーズのひとつです。

そんなブッラータを国内で生産する動きがじわりと広がっています。

東京・高輪にあるロサンゼルス生まれのピザレストラン「800°DEGREES NEWoMan TAKANAWA」には、まき窯で焼き上げたピザに新鮮なルッコラと生ハム、その上にはブッラータが乗った料理があり、ブッラータにナイフを入れるとトリュフ入りのクリームが広がります。

客からは「チーズがとろけるのと、ピザの他の具材とよく絡んでいてすごくおいしかった」「あっさり食べられる」「フレッシュな感じ。チーズなんだけど新鮮な感じ」といった声が聞かれました。

800°DEGREES NEWoMan TAKANAWAの料理長は「フレッシュさと濃厚さのバランスがいい。皆さんイタリア産のを召し上がっていると思うが、国産のものって食べてフレッシュさがわかるので、好評いただいている」と話します。

新鮮さの秘密は、国内の生乳を使い店舗の近くの工房で製造していること。

2025年の夏オープンしたチーズ工房「FRESH CHEESE STUDIO 深沢工房店」は、もともと明治の社内新規事業のプロジェクトから誕生しました。

ゼロワンブースター・桑畑遼さん:
牛乳やヨーグルトは生活を支えるインフラ的な食品としては浸透しているが、より魅力的な価値のあるものとしてお届けできないかと。

生乳余りなどが社会課題となる中、酪農家の数は年々減少。
一方で、国内でのチーズの消費量は増加傾向にあるといいます。

そこで、北海道・十勝で絞った生乳を使って、“カード”と呼ばれるチーズの元を作り、それを東京へと運び、最終的な製造を行うことで、酪農家の支援と出来たてのおいしさを両立させることができました。

工房では、職人が一つ一つ手作り。

製造後、マイナス30度で急速冷凍することで、出来たてと変わらない風味を保ったまま、レストランなどに提供することが可能になり、生乳の生産調整も不要になったといいます。

ゼロワンブースター・桑畑遼さん:
余っているものも冷凍技術を使って、価値の高いものとして必要な時に届けられる。大きな課題にはなかなか届いていないが、フレッシュチーズが世の中に浸透すると、調整弁としての役割、牛乳が余っているタイミングでチーズのもとを作っておいて、食べてもらう時に届けるということが将来的にはできると思う。

ブッラータは、もともとモッツァレラチーズの切れ端をおいしく食べるために考え出された、いわば“もったいないチーズ”が始まり。

余った生乳もより価値のあるものへ。
牛にも人にも優しいブッラータの消費拡大を目指します。