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プレスリリース配信元:株式会社帝国データバンク

日銀の追加利上げが企業に与える影響度調査(2025年12月)




株式会社帝国データバンクは、保有する企業データベースのうち2024年11月-25年11月までに決算を迎えた企業財務データを対象に、企業の借入金利引き上げに対する影響度について調査・分析を行った。各平均値は、上下各5%、計10%のトリム平均値を使用した。同様の調査は、2025年1月に続いて3回目。


SUMMARY
日本銀行は12月19日、政策金利を0.50%から0.75%に引き上げると発表した。企業の借入金利が現行から0.25%上昇すると、1社当たり年間64万円の支払利息負担が増加し、経常利益を平均2.0%押し下げる試算となった。この結果、新たに1.6%の企業が経常赤字に転落する可能性がある。

【分析企業】
長短借入金を含む「有利子負債」と、それに伴う「支払利息」が発生している企業。対象は全国約10万社(全国・全業種)
決算期末のデータに基づくため、借入金の返済・借り換え、追加での借り入れによる有利子負債の増減については考慮していない
【用語定義】
借入金利:有利子負債(銀行等、保険、ノンバンク、個人借入等を含む借入金、社債、CP等を含む総額)に対する利息の割合

借入金利「0.25%上昇」、企業負担は年64万円増加 経常利益約2%分の減益に相当
日本銀行は12月18・19日に開かれた金融政策決定会合において、政策金利を現行の0.50%から0.25ポイント引き上げ、0.75%程度で推移するよう促すことを決定した。政策金利の引き上げは2025年1月以来11カ月ぶり、1995年以来30年ぶりの高い水準となる。日銀の利上げに応じて市場連動型の貸出金利や、メガバンクなどが貸出金利の参考とする短期プライムレート(短プラ)、民間消費では住宅ローン金利等が上昇するなど「金利ある世界」への移行が加速し、企業の資金調達面で影響が拡大する公算が大きい。

帝国データバンクでは、過去1年間に決算を迎えた企業で長短借入金を含む有利子負債を有する約10万社を対象に、借入金利の上昇に伴う支払利息への負担や、経常利益に与える影響について、2025年1月調査以来、3度目の分析を行った。借入金利の上昇幅は、現行の借入金利から+0.25%~最大+2.00%のシナリオを想定してそれぞれ試算した。なお、決算期末のデータに基づくため、決算期末以降の借入金の返済・借り換え、追加での借り入れによる有利子負債の増減については考慮しないものとした。

この結果、企業の借入金利が現状から0.25%上昇した場合、企業では1社当たり平均で年間64万円の支払利息負担が新たに発生し、経常利益を平均2.0%押し下げることが分かった。また、経常損益が黒字から赤字へと転落する企業は対象10万社のうち約1700社・1.6%発生する試算となった。今後、さらに追加で1.00%まで引き上げられた場合、利息負担は年128万円の増加、赤字へと転落する企業は約3500社・3.3%の規模まで膨らむ可能性がある。ただ、2025年1月時点の調査結果に比べると、いずれのシナリオでも赤字への転落企業、経常利益の下押し効果ともに減少するなど、利上げによる影響度は低下傾向にある。従前まで続いたデフレ環境と異なり、各種コスト高を背景に価格転嫁がしやすいインフレ局面への転換で、企業が収益性を改善しやすくなったことを背景に、徐々に利上げへの耐性を獲得しつつある様子がみられた。



業種別では、「不動産業」の受ける影響が最も大きく、借入金利が0.25%上昇した場合、利息負担は1社当たり平均で年間276万円の増加、経常利益ベースで平均5.1%押し下げられる試算となった。金利引き上げによって経常利益から赤字に転落する企業も3.3%を占めた。最も負担が小さいのは「建設業」で、利息負担は1社当たり平均で年間19万円の増加、経常利益では1.3%減の影響にとどまった。
収益力の改善で、利上げへの耐性獲得が進む
帝国データバンクが調査した2024年度の企業の平均借入金利(調達金利)は1.20%となり、4年ぶりに1%台へ到達した。前年度からの上昇幅は2006年度の調査開始以降で最大となるなど、企業経営でも金利上昇による影響が反映されてきた。低金利であるコロナ融資の借り換えや返済が進んだこと、長期金利の上昇が背景として挙げられ、これまで極めて低く抑えられてきた「超低金利の世界」から「金利のある世界」への転換が着実に進んでいる。


今回の利上げに伴う影響度調査で、借入金利が0.25%上昇した場合、1社平均では年間で64万円分の経常利益が減少する試算となった。経常利益で赤字に転落する企業は1.6%となり、2025年1月調査に比べて割合は0.20ポイント低下した。コストの増加分を価格へ転嫁するといった動きが進んだことで収益力の改善が進んだ企業も多く、結果として一定の金利上昇に対する耐性を獲得しつつある。他方で、業況の悪化を借入金等の補充で凌いできた中小企業にとっては、急激な金利環境の変動による支払利息の増加で資金繰りが一層厳しい局面に直面する可能性もあり、その動向を引き続き注視していく必要がある。




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