人が新年の準備を進める一方で、なかなか冬を越す準備に入らないのがクマです。例年であれば冬眠に入る時期ですが、新潟県内ではクマの出没が相次いでいます。その背景には親グマとはぐれた子グマの存在があると言います。
■親グマとはぐれてしまった“子グマ” 出没相次ぐ
12月13日、舞子スノーリゾート近くにある食堂の敷地内で雪が積もる木に登り、柿を食べていたのは体長50cmほどの子グマ。
【近隣住民】
「珍しいと思う。大概、冬眠するのかなと思う」
通報を受け市の職員や警察などが駆けつけますが、クマが木の上に居座り続けたため、市が危険と判断し麻酔銃による緊急銃猟が行われました。
実はこの子グマ、数日前からこの周辺に出没していたと言います。
【南魚沼市の職員】
「毎日のように出没していた。恐らく親グマとはぐれて、一頭だけで行動していた」
こうした親グマとはぐれてしまった子グマは他にも。
【棚橋リポート】
「加茂市下高柳の住宅街。こちらの一角でクマが目撃されたということです」
12月8日、加茂市の住宅の玄関先で動く黒い影。体長50cmほどの子グマです。
クマの生態に詳しい石川県立大学の大井徹特任教授は…
【石川県立大学 大井徹 特任教授】
「親子だったら近くに母グマがいると思うが、めったなことで母親がいる状態で子グマが単独で出てくるというのはない」
確かに11月、北海道では車に突進してきた体長2mほどのクマの背後には2頭の子グマが。このように、通常、親グマは側にいるもので、子グマが単独でいることはないと言います。
■お腹を空かせた子グマに注意「襲われてケガをする場合も」
では、なぜ子グマのみで現れたのか…
【住民】
「ここにザクロがあった」
あのとき子グマが食べていたのはザクロの実。
【石川県立大学 大井徹 特任教授】
「ザクロというのは、もともと日本にはなかった木。野生のクマの食べ物のリストにはない」
ただ、今年はクマのエサとなるブナの実などが凶作で、エサを求めてクマが人里に降りてくるケースが多発。
【石川県立大学 大井徹 特任教授】
「たくさんクマが出没したので、駆除も多く行われている。母グマが駆除されて親から離れざるを得なくなった子グマもいると思う」
エサ不足の中、人里に降りてきて親グマとはぐれてしまった子グマ。他に食べるものもなく、ザクロを食べていたのではないかと大井特任教授は話します。
実際、現場に駆けつけた猟友会のメンバーは。
【猟友会】
「普通だと、子グマでも人間を見ると逃げるが、2mくらいの距離に行っても知らん顔してザクロを食べている。もう、痩せていて」
お腹を空かせた子グマ。それは人にとって危険な存在だと言います。
【石川県立大学 大井徹 特任教授】
「小さいクマだが、鋭い爪・牙を持っている。エサがなくてお腹がすいている状態で、エサへの執着が強くなっていると思う。襲われてケガをする場合もあるので注意が必要」
■“はぐれ子グマ”冬眠を知らない可能性も
しかも、親グマといないことである大きなリスクが。
【石川県立大学 大井徹 特任教授】
「どういったところが安全に冬眠できるかわからなくて、とんでもないところ、人家の床下や使っていない倉庫などに潜り込んで冬眠することもあるかと思う」
親から冬眠の仕方を学べていない離れ子グマ。人里での冬眠が成功してしまうと、人との距離がさらに近づく恐れも。
親グマだけを駆除しても新たな脅威が生まれる…個体管理の難しさが浮き彫りとなっています。