特集は『食品廃棄物』を活用した新たな事業の話題です。
取材した西村アナウンサーです。
いま食品の製造・調理過程で出る『食品廃棄物』や売れ残った商品などの『食品ロス』が、問題となっています。
消費者庁のデータでは、2023年度の食品ロス量は464万トン。
経済損失は・・・4兆円。
温室効果ガス排出量は1050万トンと推計されています。
そんな中、資源ごみの回収とリサイクルを行う熊本市の企業、永野商店が新たなビジネスに乗り出しました。
キーワードは『メタンガス』。
食品廃棄物を活用した発電所と社会貢献への思いを取材しました。
【永野商店 永野順也社長】
「廃棄物処理業者の仕事の中でもっと地域に根差した活動ですとか社会貢献的なことができないかと」
今回新たな挑戦に乗り出したのは1963(昭和38)年創業の永野商店です。
家庭や事業所から出る資源ゴミ・廃棄物の回収とリサイクルを手がけ、熊本の都市環境維持を支えてきました。
創業から60年を迎える中、3代目社長の永野順也さんは日々の回収業務の中からいわゆる「生ごみ」に着目。
「食品ロス」や温室効果ガスが問題となる中、「生ごみ」を新時代のエネルギーとして生かせないかと思いを巡らせました。
【永野商店 永野順也社長】
「焼却されてる食品廃棄物を何か有効活用できないかなと。それを原料にした発電もできる、そういう技術がどんどん広まってきたのが一つのきっかけ」
構想から6年、行きついた結論は「バイオガス発電」でした。
工場やスーパーから出た食品廃棄物を発酵させメタンガスを生成。
そのガスを燃焼させた力で発電所のタービンを回し、電気を作ります。
【エヌエナジー 11月3日・熊本市西区】
【永野社長・西村やり取り】
(立派な建物ができましたね)
「やっと完成しまして、ことしの7月1日から試験運転も始めまして。いま少しずつ
食品廃棄物の投入量を上げていっているところです。」
【西松建設と共同運営】
発電事業を始めるにあたっては、「エヌエナジー」という会社を新たに設立しました。
【約1万1000平方メートル 作った電気は九電に売電】
約39億円かけて建設した発電所は、1時間当たり最大644キロワットの電力を生み出します。
【永野社長・西村やり取り】
(丸い球体が見えてきましたね。)
「お子さんの遊具に似た形なんですけど、こちらの方に(メタン)ガスがどんどん供給されていっております」
「(毎時644キロワットは)4人家族で400~500世帯分の電気はまかなえる計算になります」
(ひとつの町がまかなえる?)
「そうですね、近隣の住民の方の電力はまかなえる。」
発電に必要なメタンガスの原料となる食品廃棄物の回収は取引先の食品スーパーなどと連携して行います。
この日永野商店の回収スタッフが訪れたのは、ゆめマート大江店。
【ゆめタウンは除く】
九州エリアでトップクラスの売上を誇る店舗です。
なるべく食品ロスを減らすよう努力していますが、野菜や果物をカットする過程で、 食べられない皮や切れ端のゴミが出るのは避けられません。
店によると、「青果」や「総菜」の部門で1日10キロから20キロ程の食品廃棄物が出るといいます。
【株式会社 イズミ管理本部 総務部 小松原 慎一課長】
「(食品廃棄物を)リサイクルできる工場がなかったということで非常に困ってまして、それが何とか資源に変わるならばぜひ取り組みたいと考えた。永野商店さんのバイオガス発電は再生化エネルギーの一種なので特に化石燃料への依存を減らすことに
つながりますので、そこは CO2削減になるので非常に期待してます。当然イズミだけの問題ではない(社会の課題)と思ってますので。イズミグループ全体でうまくいけば広がりをグループに波及させたい。」
食品廃棄物は回収したトラックで発電所に直接運び込み、発酵のためのシステムに投入します。
また、投入された食品のトレーなどプラスチックは機械できちんと分別され、発電所の隣に運び込まれます。
きれいに洗浄されたあと、熱を加えて成型した固形燃料として生まれ変わるのです。
【永野商店 永野順也社長】
「触ってもらって」
(まだ温かいですね)
(固形燃料と考えていいですか)
「燃料ですね。要は化石燃料、石炭とかそういったものの代わりにこれを燃料として使って、ボイラーを稼働させたり、そういった燃料に使われてます」
エヌエナジーが手がけるバイオガス発電所。
描く夢は「熊本の資源100%リサイクル」です。
【永野商店 永野順也社長】
「(6年かけて)やっとスタート地点に立てるところまで来ましたので、こういった施設があるんだということをもっともっと広めていきたい。そして脱炭素社会に向けて我々が少しでも貢献できるように事業活動を進めていきたいと考えています。」
永野商店とエヌエナジーによりますと、今後は県内外の農業法人と連携。
発電に使った後のいわゆる「食品残さ」を活用した有機肥料の研究も進めます。
将来的にはその肥料で育てた野菜や果物をスーパーなどで販売し、一連のビジネスを 循環させる構想も描きます。
発電所は設備の試験も良好で今年中の安定稼働を目指します。