「SNS誹謗中傷が選挙をゆがめる」宮城県連が対策要請
10月26日に投開票が行われた宮城県知事選挙で、インターネット上の誹謗中傷や虚偽情報の拡散が相次いだとして、自民党宮城県連が党本部に対して異例の要請を行った。
要請に訪れたのは、小野寺五典県連会長(党税調会長)と佐々木幸士幹事長。10月31日、自民党本部で古屋圭司選挙対策委員長と面会し、SNS上のデマ対策を強化するよう求めた。面会は非公開で行われた。
SNS上の「誤情報」「脅迫」選挙現場を直撃
SNS上で誤情報や中傷が拡散し、候補者や家族が脅迫を受ける。
ネット選挙が常態化する中、現場が感じた「恐怖」と「無力感」が浮き彫りになった。
宮城県知事選では、現職で6選を果たした村井嘉浩知事をめぐり、県の水道事業や白紙撤回した土葬墓地整備、さらには「メガソーラー大歓迎」など公約にない主張をしているかのような投稿がSNS上で拡散された。
村井知事は「事実と異なる情報が広がった」として法的措置を検討しており、選挙後には県庁幹部に対し「ファクトチェック体制の検討」を指示した。
一方、自民党宮城県連にも深刻な被害が報告された。
村井知事を応援した県議の中には、本人への中傷に加え「家族への危害」をほのめかすメッセージが寄せられるケースもあったという。
村上智行県議は岩沼警察署に被害を相談し、脅迫の疑いがあるとして対応を求めた。
「スタッフに恐喝まがいのコメント」陣営が感じた“無力感”
要請後の取材で、小野寺会長は次のように語った。
「選挙期間中に誤情報、そのようなことが相当数SNS上で散見をされ、非常に攻撃を受けた県議の中には被害届を出すような状況が起きております。このようなことに対して党本部としてもしっかり認識をしていただきたい。そしてまた対応についてご検討いただきたいということで要請をさせていただきました」
佐々木幹事長も「スタッフに恐喝とも言えるコメントが寄せられた」と明かし、こう続けた。
「家族や事務所スタッフを守るために地元の警察署に被害届を提出している所もございます。現行法の中では対応が難しい面もありますが、まずは対策の強化をお願いしたい」
「一党の問題ではない」 公正な選挙の根幹に関わる課題
今回の被害について、記者から「誹謗中傷が投票行動に影響を与えたと考えるか」と問われると、小野寺会長はこう答えた。
「選挙結果は民意の反映と受け止めておりますが、その前提となる情報についてはかなりの誤情報が流布されたという印象を持っております」
また、SNS上で広がった「メガソーラー建設推進」などの誤情報が知事本人にも及んだ点についても言及した。
「知事に対しても誤情報がかなり多く流された。これは選挙の公平な運用に対して大きな懸念になる」
小野寺会長はさらに、今回の要請が自民党だけの問題ではないと強調した。
「公職の候補者となり得る方は誰もが同じ立場で心配があります。政策について誤情報を流されることは、公正な選挙の理念からすればあってはならない。決して一党一派の話ではなく、民主主義の根幹に関わる問題です」
面会を終えた小野寺会長は、古屋委員長について「状況を認識していると受け止めた」と語った。
「ネット選挙」時代の課題 政治とメディアに求められる責任
小野寺会長は、今後の対応について次のように述べた。
「正確な情報を出すこと、誤情報があった場合にはファクトチェックができるような仕組みが必要です。これは政治の場だけでなく、メディアの皆様にも適切なファクトチェックを進めていただきたい」
現時点で党本部から具体的な対策は示されていないが、古屋選対委員長らが今後の検討課題として受け止めたという。
情報が瞬時に広がる時代だからこそ、正確さと冷静さをどう守るか。
その答えを探る責任は、政治にも、私たち一人ひとりにもある。
