止まらない物価の高騰、影響は子供たちの大好きな駄菓子にも広がっています。昔懐かしの「ポン菓子」もコメ高騰の影響を受ける中、病に倒れた夫の後を継いだ、女性社長が奮闘しています。

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■コメ高騰も…懐かしの“ポン菓子”守る女性社長

愛知県南知多町の『家田製菓』、は創業44年のポン菓子専門のメーカーです。

社長の家田馨子さん(62)は10年前に会社を継ぎ、従業員およそ30人の会社を切り盛りしています。

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家田馨子社長:
「この窯はもうすでに30年以上使っていて、私たちと共に歩んでくれたなあと思って、感慨深いものがあります」

ポン菓子は原料の米に圧力をかけた後、釜を開けて圧力を急激に下げて、米が一気に膨らませて作ります。

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これに醤油や砂糖などを煮詰めたタレを絡めて固めることで、“おこし”ができ上がります。

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工場を取り仕切るのは、家田社長の息子・翔悟さんです。

翔悟専務:
「その日の気温だったり、湿度によって1つずつ丁寧に製造している。やはりおいしいものを作りたいというものが強いので、自分が生まれた時からの味ですし、この味は今後も守り続けていきたいと思っています」

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昔ながらの優しい味に、職人の思いが込められています。

しかし、今、コメの高騰が頭を悩ませています。

家田社長:
「うちで使っているお米のほとんど、95%以上が山形の庄内平野で取れるはえぬきを使っています。お米の値段が2倍になるけど、高いコメを買わざるを得ない」

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まだまだ終わらない、コメの価格高騰。素朴な味だからこそ、原料のコメが、味を大きく左右します。

さらに砂糖や水飴、ダンボールなども高騰し、10月から、値上げを検討しているといいます。

■夫が脳梗塞に…“5人の母”が後継者に

こだわりの味を守るべく奮闘する家田社長。きっかけは、夫・保さんとの出会いでした。

高校卒業後、アルバイト先で保さんが作るポン菓子の、シンプルで優しい美味しさに衝撃を受けました。

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その後2人は結婚し、1981年に保さんが立ち上げた家田製菓を二人三脚で守ってきました。

さらに、5人の子供にも恵まれました。

家田社長:
「前に抱っこして後ろにおんぶして。昔ですから今とちょっと違って、工場の中にベビーベッドがあって、子供をそこで寝かせて、育てながらポン菓子を作ってた」

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仕事と子育てに奔走する多忙な日々。しかし10年前、保さんが脳梗塞で倒れ、馨子さんが会社を継ぐことになりました。

家田馨子社長:
「何回会社をたたもうかなって思ったか分からないですね。給料をどうする、ボーナスをどうする、得意先の営業はどうする、何もかも自分で考えないといけないんですよね。大変すぎて、もう夢の中でも会社をやってるんですよ」

創業以来、最大の危機を迎えましたが、ポン菓子を広めたい。お客さんに喜んでほしい。その一心でがむしゃらに働いてきました。

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夫・保さん:
「もう自分ができなくなったことがちょっと悔しい面と、でも長年一緒にやってきてる分を全部分かっているので。安心して任せられるなと」

家田社長:
「(夫とは)本当にバチバチと戦って、口論して、喧嘩もして。でも結果的に会社をいい方向に持っていける。戦友みたいな」

■消えゆく“昭和の駄菓子”…ポン菓子の魅力を発信

昭和の時代、駄菓子屋さんは小銭を握りしめた子供たちでにぎわっていました。

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しかし、令和のいま、駄菓子メーカーは苦境に立たされています。

2024年は名古屋のメーカーが製造していた「花串カステラ」の生産が終了。

2025年5月には、愛知県豊橋市のメーカーが日本で唯一作っていた「糸引き飴」も、廃業で姿を消しました。

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家田製菓ではポン菓子の魅力を発信しようと、2014年に「ぽんかふぇ」をオープンしました。

店内にはおなじみのポン菓子だけでなく、イチゴや抹茶などの味が楽しめるカラフルな商品も並びます。

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トッピングされたポン菓子の香ばしさが絶妙な抹茶ソフトクリームや、イチゴの甘味をポン菓子が引き立てる夏限定のかき氷などが、若い女性にも人気です。

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訪れた客ら:
「食感がプラスになって、ポン強めかも。懐かしさはある気がします」
「昔は砂糖だけだった。色々な種類があるからすごいなと」

家田社長も自ら店頭に立ち、お客さんにアピールします。

ぽんかふぇの従業員:
「マスコットはダメですかね、看板娘。いつまでも女性だけど少年のような、少年心を忘れてない」

さらに、ポン菓子を世界に広める活動もしています。2016年から農水省のプロジェクトに参加し、アフリカのケニアで技術指導を行ったほか、2023年には南山大学の学生とエチオピアにポン菓子の機械を贈りました。

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ポン菓子は、米だけでなく、麦などさまざまな穀物で作ることができます。

子供たちに栄養のある菓子を食べてほしいという思いだけでなく、付加価値をつけることで、収入増加にもつながると期待されていて、ケニアでは実際に起業した女性もいるといいます。

■家族に支えられ…第二の人生の“夢”

家田社長は、娘の弥生さんとともに、来年のバレンタインに向けた新メニューの試作を進めています。

ポン菓子にチョコレートをかけ、慎重に伸ばしていきます。

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家田社長:
「チョコレート感はすごいするよね。雑穀はもっと多くてもいい。どうやったらたくさん入った感じになるのか」

チョコレートを使った商品の開発は初めてで、試行錯誤が続きます。

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娘の小野内弥生さん:
「すごくパワフルで、人を引っ張っていく力がすごくあると思います」

家田社長:
「一番厳しいことを言ってくれるのは彼女で。だからこそ寄り添って、自分の気持ちにもなってくれる」

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家田社長を支えてくれる子供たち、幼い頃は保育園のお迎えや授業参観も満足に行けず、寂しい思いをさせてきたといいます。

工場を任されている息子の翔悟さんは、後継者として期待されています。

息子の翔悟専務:
「やっぱり小さい頃は『寂しいなあ』っていう思いもありましたけど、休みの日には遊びに連れて行ってくれたり、仕事も家庭も一生懸命だったのかなと。尊敬というか、見習いたいというか」

我が子に、ポン菓子に、全力で向き合ってきた家田社長。社長のバトンを渡したら、やりたいことがあります。

それは「オートバイで日本中を、世界中を駆け巡ること」。

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実は大のバイク好きで、過去に日本を縦断したほか、今も全国各地のレースなどに参加しています。もっとバイクで色々なところを旅するのが、夢なんです。

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家田社長:
「いろんな可能性がポン菓子にあるんだなって思います。次世代につなげたいっていう思いがとてもあるので。若い息子や娘に、今の想いを承継してもらいながら、女性ならではのしなやかで逞しく、多少貪欲に頑張れるといいなと思います」

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