宮城県内に大きな被害をもたらした、2019年10月の東日本台風から1年。大雨による洪水などで農業の被害額は630億円を超えた。トマトの栽培が盛んな大崎市鹿島台は、吉田川の決壊により農地が水没したが、この一年で復旧が進み、特産のトマトの出荷が始まっている。

大崎市にあるスーパーマーケット。地元で収穫された野菜が並ぶ産直コーナーでは、特産品のトマトが人気を集めている。

Aコープかしまだい店 高橋慎太郎 店長:
夕方にはほぼ完売です。糖度も高いので非常に人気。鹿島台の特産物でもあるので人気の商品

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大崎市鹿島台でトマトの栽培に取り組む、千葉卓也さん。
千葉さんの農場では、現在も栽培用ハウスの建て替えが続いている。

マルセンファーム 千葉卓也 社長:
この辺りは2.8メートルくらいの水が来ています。水の勢いが強いところがえぐられて、ハウスの基礎がダメになり建て替えをしている

千葉さんが代表を務めるマルセンファームは、鹿島台で生産されるトマトの3分の1を出荷している。父から受け継いだ土づくりを活かし、一般のトマトよりも2倍の糖度を誇るデリシャストマトが人気を集めた。しかし…。

マルセンファーム 千葉卓也 社長:
収穫が始まって半月くらいで水害にあった

被害額は農作物だけで1億5000万円

2019年10月の東日本台風で吉田川の堤防が決壊。下流にあった千葉さんの農場には、大量の泥水が押し寄せた。

マルセンファーム 千葉卓也 社長:
今年はせっかくいいトマトができたのに、ここに来て心を折られるというか、そういう思いでいる

収穫目前だった自慢のトマトはすべて泥水に浸かり、枯れてしまった。被害額は農作物だけで1億5000万円。暖房器具の交換や農業用ハウスの建て替えなど、復旧には5億円以上かかった。

あれから1年…。千葉さんは国の補助金などを使い、被災した農機具を全て買い換えて、2020年1月に生育を再開。生産量も8割まで回復した。

大崎市鹿島台は、1986年の8.5豪雨でも吉田川の決壊により大きな被害を受けた。
千葉さんの背中を押したのは、水害を経験した父の存在だった。

マルセンファーム 千葉卓也 社長:
地域で農業を支えていく、この会社を続けていく。父の代でも水害を経験しているので、その経験を父が乗り越えているので、私も乗り越えていこうと

感謝を込めて、トマトの栽培を続ける

水や温度の管理を徹底し、手塩にかけて育てた大切なトマト。1つ1つ丁寧に収穫していく。

マルセンファーム 千葉卓也 社長:
被害にあったことでいろんなお客さんから『早く復興して頑張ってくれ』と声があったので、その声が励みになって頑張れた

復興を待ってくれた人たちのもとへ、「おいしいトマトを届けたい」。感謝を込めて、千葉さんはトマトの栽培を続けている。

マルセンファーム 千葉卓也 社長:
私たちはおいしい農産物を作るというのが理念でもある。いい農産物を作って、「もう復興したよ」とできればいいなと思う

(仙台放送)

仙台放送
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