「セリフが詰まったら、アドリブで助け合う」劇団員たちの絆が観客を魅了
大きな拍手、大声援。富山市水橋地区の女性たちで結成されたアマチュア劇団「越中みゆき座」の公演は、いつも熱気に包まれている。団員のほとんどが80代という高齢にもかかわらず、その活力あふれる姿に多くの人が元気をもらっている。劇団名の由来になった「みんな ゆかいに きときと」をモットーに活動する彼女たちの魅力に迫った。
■日本舞踊の先生が立ち上げた地域密着の劇団
「セリフは大きく向こうに向かって声を出してください」。越中みゆき座の座長、村上順子さん(83)は練習中も熱心に指導する。日本舞踊を教える村上さんが教室の生徒に声をかけ、13年前に劇団を立ち上げた。
現在の団員は60代から80代の女性14人。音楽や小道具、衣装、幕引きまですべて団員自らが担当し、富山市内の福祉施設などで寸劇を披露している。
■世相を反映したオリジナル脚本
披露する寸劇はすべて村上さんが脚本を手がけるオリジナル作品だ。環境問題やコロナなど、時代を反映したテーマでこれまでに10本の作品を創作してきた。最新作は『闇バイト』をテーマにした作品で、「このスマホの通話記録が何よりの証拠」といった現代的な台詞も登場する。
村上さんは自分の人生を振り返りながら、誰もが共感できる話題を脚本に盛り込む。「自分も楽しく人も楽しく、地域全体の人がみんな笑って暮らせる、そういうことを目指して」と創作の原動力を語る。
■最高齢87歳も堂々たる演技
団員の中で最高齢は高田節子さん(87)。「おもしろい。ぱっと言葉が出てこん時あるんだけど、それを乗り越えてお客さんが笑ってくれるから続けてこれたんだわ」と話す高田さん。公演では堂々とした演技を披露し、観客を魅了している。
練習中には「この悪代官ね言われんな言うとっけど言うちゃ、87歳。あっぱれあっぱれ~」と団員同士で励まし合う場面も見られる。村上座長は「セリフが詰まったら、お互いにアドリブでその人の忘れたところを人にわからないように上手に助け合う」と団員たちの絆の強さを語る。
■地域密着の演目で観客を沸かせる
8月23日、富山市の介護施設「なかまちケアタウン」の納涼祭。この日、越中みゆき座は『まいどはや』という越中富山の売薬さんの物語を披露した。土地柄、売薬さんにゆかりのある人が多く、観客の反応は上々だった。
公演の冒頭では誰もが知っている歌謡曲で大合唱し、会場の雰囲気を盛り上げる。その後の寸劇では「何とキラキラ光ったおいしそうなまんじゅうだのぉ」といった台詞に観客から笑いと拍手が起こった。
観客からは「最高」「元気いっぱいもらった」「誰でも若くなれる」といった感想が寄せられた。
■笑顔を届け続ける情熱
「はじける笑顔になるのが私たちの一番の喜び。やめられませんね」と村上さん。すでに福井の民話をもとに嫁姑問題をテーマにした最新作を書き上げており、来年お披露目する予定だという。
越中みゆき座は今日もどこかで笑顔と元気を届けている。