混迷するガザ情勢、イスラエル軍は100万人が避難している最大都市ガザ市への制圧作戦を始めた。
FNNは食料不足が深刻化するガザ地区に空中から支援物資を投下する軍用機に同行取材した。
ガザ上空に初めてカメラが入った。
ガザ地区への支援物資投下に密着
中東ヨルダンの首都・アンマン郊外にある、ガザ地区に支援物資を空から投下しているヨルダン軍の基地にFNNのカメラは向かった。

ヨルダン軍の軍用機で、ガザの上空に行き支援物資を空中投下する。

ガザ地区に投下される支援物資の上には、しっかりとパラシュートがつけられていて、輸送機に次々と物資が運び込まれていった。
ガザ地区は2025年3月、イスラエルが支援物資の搬入を制限して以来、食料不足が深刻な状況となっている。

クッションに横たわる子どもの目はうつろ、母親に抱かれた子どもは背骨がくっきりと浮き上がるほど、やせこけてしまっていた。
国連の機関によると、7月以降に子ども37人が栄養失調で死亡したという。
こうしたことを受けて、ヨルダンの空軍基地には、ドイツやオランダの輸送機も支援物資を空中投下するため駐機していた。

基地に集められた大量の支援物資の中には、どういったものが入っているのか。
サラダ油、そして豆やパスタ、お米など今回は食料を中心にガザ地区に投下するということで、米やパスタなど市民が求める食料のほか、紅茶などの嗜好(しこう)品も入っていた。
こうした支援物資が入った多くの箱がパラシュートをつけられた状態で準備されていた。

FNNは今回、ヨルダン軍による空中投下のための飛行に同行することが許された。
取材班が輸送機に乗り込みと、中には大量の支援物資があるために、ちょっと通路は狭くなっていた。
支援物資の手前側に待機して、ガザ地区まで移動することになる。
現地時間の21日午前10時20分ごろ、輸送機はアンマン郊外の空軍基地を出発した。
機内に積み込まれた支援物資は、あわせて10トンほどの食料品だった。

出発から約40分後、機内があわただしくなった。
ガザ地区に支援物資を投下する準備が始まり、パラシュートを開くために、黄色いひもを外側にくくりつけていた。
物資が外に滑り落ちる際、機体につけられた黄色のひもに引っ張られる形で、パラシュートが開く仕組みになっている。
ガザ地区は“色を失った街”に
その後、輸送機がガザ地区の沿岸付近に近づくと、後部のハッチが開いた。

ガザ地区上空に着いたと思われたが、建物もあるものの、人影のようなものはなく、すべて灰色、黒一色になっているような状況に見えた。

ガザ地区のイスラエルによる侵攻前の映像には、多くの建物が立ち並び、道路はきれいに舗装され、緑も見えていた。
しかし現在は、ほとんどの建物が破壊され、“色を失った街”のようで、イスラエルによる攻撃の激しさがわかる。
人が住んでいるような気配はなく、どこに人が避難しているのか、どのような状況にあるかまったくわからず、すべて町全体が破壊尽くされているような状況になっていた。

出発から約1時間後、ガザ地区中部に到着すると、支援物資が投下された。
パラシュートが開かれ、食料が不足している市民に物資が送られた。
その後、輸送機はすぐに引き返した。
輸送機がガザ地区上空にいたのは5分ほどで、支援物資を投下してすぐに現場を離れた。

別の日にガザで撮影された、支援物資が投下された地上での映像には、多くの人が物資に殺到し、奪い合いになる様子が映っていた。
ほとんどの人は物資を受け取ることができないのが現状。

ガザ市民は、「私たちは(普通の)人と同じように食べたいんです。援助があるというので来たんですが、何も届きません。朝9時からここで待ってます」と訴えた。
8月9日には、15歳の少年に物資が直撃し死亡する事故も起きているほか、2024年はパラシュートが開かずに、物資が市民に直撃するケースも相次いだ。
医療品の支援はイスラエルが許可せず
一方、別の問題も起こっていた。

ヨルダンにあるNGO(非政府組織)団体の倉庫には、ガザ市民に届けられるはずの大量の支援物資が並んでいた。
こちらにある大量の支援物資は陸路輸送のもので、イスラエルが許可しないため、2025年の3月から留め置かれているという。

さらに、イスラエルが搬入の許可を出さないのが医療品。
攻撃により負傷したハマスの戦闘員の治療をさせないことが狙いとみられている。
NGO職員は、「ガザの人を助けられるのに、制約があるためできないのはつらい」と話した。
ガザ市民の生活が元に戻るための早期の停戦は実現するのだろうか。

青井実キャスター:
野村さん、あらためてですけど、ガザの上空ということで、「色がない」というリポートがありました。
中央大学法科大学院教授・野村修也さん:
あまりこういう映像を見たことはなかったんですけども、やっぱり人が住んでいるとは思えない砂漠のような状況になっているというところで、戦争の悲惨さがよくわかりますよね。
青井実キャスター:
本当に緑もないですし、動きがまったくここからは感じられないという状況ですよね。

遠藤玲子キャスター:
今回取材したのは、空中からの食料支援だったわけですが、実際には陸路による物資の支援も行われています。ただその数がまったく足りていないのが現状です。
国連によりますと、ガザ地区には少なくとも1日500台の支援物資を積んだトラックが入る必要があるのですが、この3カ月、5月19日以降に入ったのは、トラックの数でいうと3553台、1日あたり約40台という計算になります。
FNNイスタンブール支局の加藤崇支局長によりますと、目的地にたどり着けず、9割近くのトラックが略奪されていて、人道支援が事実上崩壊しているということです。

遠藤玲子キャスター:
さらに十分ではない量の食料を求めて市民が殺到して、犠牲者も増えています。
空中投下された支援物資を取ろうとして、2024年から23人が死亡したほか、食料の配給所に市民が集まって、 その市民に対してイスラエル軍が発砲するなどして、1000人以上の死者が出ているということです。
青井実キャスター:
空でも、そして陸路でもということで、それでも足りていないんですね。
中央大学法科大学院教授・野村修也さん:
この地域というのは、戦闘しているのは実はハマスというテロ組織なわけですけども、それが地下にこもっていて、実は人間を盾にしている、一般の人を盾にしているわけですね。
したがって悲惨な状況が続いてくるわけですが、人道的な観点から見れば、やはり休戦をしっかり行って、食料を運ぶということを実現できるようにしないといけないですよね。

青井実キャスター:
市民に影響が出ている中ですけれども 最新の戦闘状況を見ていきますと、イスラエルのネタニアフ首相は戦闘終結に向けた交渉を即時開始すると発表しています。

遠藤玲子キャスター:
初めて、「戦闘終結」という言葉を使ったため、和平が訪れるのかと思いきや、実際そう簡単ではなさそうです。
イスラエル政府が戦闘終結の条件として決定したのは、ハマス側の武装解除、そしてガザ地区の非武装化ということで、ハマスに完全降伏を求めるような内容でした。
加藤支局長によりますと、イスラエルの要求をハマス側は拒否していて、結果、戦闘が激化し、市民の犠牲は増えることになるだろうということです。
青井実キャスター:
ハマス側は拒否するしかないわけですから、こうなってきますと。一方で、戦闘に関係がない市民の生活が悪化していくというのが、これが一番心配なわけですね。
中央大学法科大学院教授・野村修也さん:
とにかくここは平和をもたらさなければいけないわけですね。そのためにはとにかく、この和平交渉を進めなければいけないわけですけど、当事者では自分に有利な条件だけしか出し合いませんので、やっぱり仲介をしていくことが非常に重要だと思います。
一方で、例えばフランスとかイギリスとか、あるいはカナダなどは、パレスチナを国として承認するということを言うことによって、プレッシャーをかけてはいるわけですけども、逆にそれがイスラエルをちょっとかたくなな状況にさせていますので、エジプトあたりが仲介にきちっと入っていくことが必要なんじゃないかなと思います。
青井実キャスター:
まさにイスラエルの変わらずの強硬性、これが変わっていくのか引き続き注視していきたいと思います。
(「イット!」8月22日放送より)