風をつかむ青春 〜愛媛で唯一の新居浜東高校ヨット部〜
愛媛県の穏やかな瀬戸内海を舞台に、ヨットを操る高校生たちがいる。
新居浜東高校ヨット部は県内唯一の高校ヨット部として活動し、創部12年目を迎えた今年、6年ぶりのインターハイ出場を果たした。
地元では「日本一風が吹かない海」とも言われる厳しい練習環境の中で、彼らはどのように風をつかみ、全国の舞台へと漕ぎ出したのか。その秘密に迫る!

地元の海でヨットを操るヨット部
捉えた風を推進力に速さを競うセーリング。地元の海でヨットを操る新居浜東高校の選手たちだ。県内唯一のヨット部に所属している。
創部12年目の新居浜東ヨット部は、6月に行われた四国総体で3位に入り、6年ぶりのインターハイ出場を決めた。

全国に挑戦する2人、最大の強みは
全国の舞台に挑戦するのは3年生コンビの田阪選手と原選手ペア。
クルー・田阪一護選手:
「(Qクルーの仕事は?)風が強いときはセール(帆)に風がはらんでヨットが傾くんですよ。それを防ぐために、身体を外に出す仕事」
スキッパー・原健悟選手:
「(Qスキッパーの仕事は?)一番大きなセールを調節して、あと舵を持って船長みたいな、舵取り役というイメージです」
ヨットを操る技術が巧みなクルー・田坂選手の「判断力」、風や潮の流れなどを瞬時に読み取るスキッパー・原選手の「観察力」、これが2人の最大の強みだ。

瀬戸内海は「日本一風が吹かない海」
ヨット部顧問・望月航先生:
「自分たちの動きが船の動きとリンクしているというか、シンクロしているというか、すごい印象的なペアです」
普段の練習場所は、風が穏やかな新居浜の瀬戸内海。地元では、「日本一風が吹かない海」とも言われているそうだ。
望月航先生:
「風弱すぎるんで(大会なら)待ちますね、風が吹いてくるのを。全国的には陸で待つレベルの弱さ」
田阪一護さん:
「これくらい風がなかったら、平行に走っていたらセールがバサバサしてしまうので、風が入るように船を傾けて、セールを傾けたら、重力とかで自然とセールがはらむようになるので、体重を外にかけて、セールを傾けて走ったら風がなくても走れます。」
「僕らの強みは一年生の頃からペアを組む機会が多くて、一緒に乗っている時間が多い分話す内容、ここだからこうよねみたいなのが息合うというか」
日々の練習では風が弱いことが多い中、息を合わせヨットを前進させる。

課題は海上での「スタート」
二人の今の課題は「スタート」。
望月先生:
「(スタートライン)出てるな。これはダメです」
田阪選手:
「3秒前くらいには完全に(ライン)出てましたよね」
望月先生:
「自覚があるならなんとかしなさいよ。そうならないように。上の船に連られ過ぎなんだよ、他の船のマネをしたって前にはいけない」
田阪選手:
「スタートラインが陸上と違って見えないので、その中で船を止めたりとか動かしたりとかという小さな技術が必要になってきて」
スタートの合図の際にラインからはみ出ていると失格となるセーリング。
自然を相手に揺れる海上でスタートする難しさ。対戦相手のヨットの位置を頼りにせず、自分たちで風や波、潮の流れにうまく対応しながらトライしていく。

ヨットのことを考える時間も楽しくて
練習では細かい調整などが功を奏し、いいスタートを切ることができた。
原健悟選手:
「楽しいし本気でやれる一個だったので、ヨットのことを考える時間も楽しくて。高校生活を楽しくしてくれた一つの原因だと思ってて」
田阪一護選手:
「高校生活ほぼ部活に捧げてきて、日常というか生活の中でヨットのことを考えることばかりなので日常の一つなのかなって思います」
海にささげる青春。県内唯一のヨット部が全国の夢舞台で活躍を誓った。
