鳥取県大山町で開かれているチョウの標本などを紹介するこちらの展覧会。
開いたのは米子市の71歳の男性です。いわゆる専門家ではありませんが、チョウを愛し、50年以上、どっぷりと“沼”にはまってきました。そんな男性のこだわりの“沼”に迫ってみました。

黒地に鮮やかな緑や青が映える美しい羽根をもつチョウに…。
こちらは大山周辺で見られるチョウ色も模様も様々です。

大山町の大山自然歴史館で開かれている展覧会。
「大山周辺の蝶・日本の蝶こだわりのマイコレクション」約130種のチョウの標本やチョウの姿をとらえた写真など約100点が並びます。

標本を製作したのは、米子市の中井博喜さん。
来場者に解説する姿は一見、専門家のようですが、実は…。

手際よく、そばを炒め…お好み焼き無駄のないこてさばきでお好み焼きを返すのは、先ほどの中井さん!米子市にある「いなばや」。中井さんが営むお好み焼き店です。

中井博喜さん:
25の時から商売やってますんで、47年、8年ほどになりますかね。

おすすめは「モダン焼き」。こだわりのソースをたっぷり、ふわふわでボリューム感があります。

中井博喜さん:
皆さんがおいしいって言ってくれることが、一番うれしいですね。

営業は週6日、店の切り盛りに忙しい日々を送るなかで中井さんをとりこにしたのがチョウでした。

「とりあえず、ナラの木をたたき出しで出るか出ないかたたく。ゼフィルスの仲間の生き残りがおれば、それを確保する。」

網を手に準備万端!この日、中井さんが訪れたのは大山の豪円山エリア。
狙うのはゼフィルス、シジミチョウの仲間です。

「おれば、この辺に縄張りはるんですけどね。おらんかもしれん。」

網を構え、山を歩きますが、お目当てのゼフィルスには出合えません。場所を変えながら探し続けます。

「中学の時からですから、ちょうど今年で丸60周年です。遠いとこ行く時は、こんな眠たいのになんて思うあるけど、やっぱり楽しみだね、虫にあうのはね。」

山に入って約1時間、きょうは出合えない…と諦めかけた、その時!

「出た!出ました!ゼフィです。ゼフィいました!」

見つけるや否や、網を伸ばして一発ゲット!お目当てのゼフィルスを仕留めました。
大きさは3.4センチほど、羽根がキラキラ輝きます。

中学生だった中井さんがチョウの“沼”にはまるきっかけになったのも、このゼフィルスでした。

そんな中井さん、部屋の中もチョウの“沼”です。
壁一面にぎっしり並ぶのはチョウの標本。その数、約300箱。

「触角なんかは、ちゃんときちんと伸ばさないといけないし。結構、触角ってゆがむんですよね。」

中井さんが取りかかったのは、標本の修繕。標本づくりの中でも一番神経を使う作業なのだそうです。折れてしまったチョウの触角をのりで貼り、直していきます。

「(時間が)すごくかかります。人それぞれですけどね、こだわりがどこまであるか。」

Q.中井さんはどっち派ですか
「もーこだわり派です。納得しないと気が済まない。」

「これで、ほぼくっつきましたね。これで乾燥させたらいい。」

触角は見事再生、中井さんが心血を注いだ標本。その一つ一つにこだわりが詰まっています。しかし…。

「この標本箱どうしようかなって。捨てるわけにいかないし。」

標本を捨てる?
71歳になった中井さんの頭をよぎるのは「終活」という言葉。そんな時に舞い込んだのが、この展覧会の誘いでした。

「自分の人生の節目に、こんなことができたって本当に自分で幸せです。埋もれてしまうんだったら悲しいけど、見ていただいて非常にうれしいです。ちょっと心ドキドキしてますけどね。」

7月17日、初日を迎えた会場。チョウに興味があると声をかけられ、中井さんもどこかうれしそうです。

見に来た人:
こんな模様がいろいろ違うとか、飛んでると分からないので。もうすぐ夏休みに入って孫が大阪から来るのでぜひ連れてきたいです。

中井博喜さん:
一般の個人が、こんな展覧会を開けると思わなかったのでめちゃくちゃ感無量です。
両立は大変だけど、一種の趣味が張り合いになって、仕事に対して熱意が持てたことも確かに本当だと思いますね。

チョウとの出合い。好きなことがあったからこそ、人生は一層充実したと中井さんは振り返ります。

中井博喜さん:
こういう昆虫とかちょうちょに興味を持ってくれたら、また自然に対する考え方が変わってきますし、そんなふうに役に立てたらと思いますね。

チョウの“沼”にはまって60年、中井さんの「好き」と「こだわり」が詰まった展覧会は、8月17日まで大山町の大山自然歴史館で開かれています。

TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

鳥取・島根の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。