ここ数日、北海道福島町でクマの目撃が相次いでいる。
7月12日午前3時には、新聞配達員の男性が襲われ死亡した。
そこで今回は、札幌市のヒグマ防除隊隊長の玉木康雄さんに話を伺う。

駆除の難しさ
―箱わなも仕掛けたということだが、猟銃を使った駆除は難しいのだろうか。
「ニュースの映像でしか地域の地形がわかりませんが、非常に平らな場所である場合、銃を撃ったときに銃弾が止まるような場所がないというのは、引き金を引くときにためらわれる要因の一つと思われます」
「そういった場合に我々がよくやるのは角度をつけて打つ、要するに上の方から、例えば建物の2階ですとか、そういった角度をつけて射撃することはできないわけではないと思います。 ただ、今の法律の中でそれを行う場合は、警察官職務執行法などの特殊な法律を使い、地元のハンターや行政、警察との連携をとらないと、そこまでの手段というのはなかなか難しいと思います」

「クマは非常にタフな動物」
―一発で仕留めなければならない難しさもあると聞いたが。
「クマは非常にタフな動物。心臓や肺、 いわゆるバイタルパートという部分を打ち抜いても、反撃する能力を身に宿したまま藪の中に潜んでしまう」
「最終的に絶命したとしても、しばらくの間その近辺に近寄ることができない。場合によっては致命傷と思われた傷さえも克服して、逃げ延びることもあり得る」
「例えば札幌市内でどうしても任務として捕獲しなくてはならない案件の場合、確実に仕留められる、バイタルパートと脊椎を同時に貫通できるような非常に難易度の高い射撃が求められる。住宅街が周りにあるという地形では、当然地元のハンターの方も相当神経を使って発砲しなくてはならない。難易度は高いかなと思います」

―6人のハンターがいま現地に入っているという話だが、クマを狙うにあたって発砲ができる条件には、どういう組み合わせが考えられるか。
「まずはハンターの連携ですね。例えば非常に命中精度の高い技量を持ったハンターでも、100%というのは難しい。そして2番目の射手の方との連携がちゃんと取れているかなど、たくさんの条件をクリアしなくてはならない。地元の方々や猟友会の方々は一生懸命頑張ってらっしゃると思いますが、条件をそろえるのは難しい。周りの方々のご協力もきっと必要かと思いますので、お願いしたいと思います」

猟銃を使わない方法とは
―猟銃を使わず、箱わなで捕まえるのが現段階でベターな方策だと考えられるか。
「そう思います。難易度の高い射撃よりも、今回の場合は箱わなに入ってくれることをまずは祈りたい。 そのためには、とにかく誘因物を他に出さないこと。また、襲われないようになるべく出歩かない」
「そうはいっても、日常生活は営まなければならない。地域で協力しながら、車で移動したり出歩く時間を考えたりしていただければと思います」

―福島町は山に近い場所だが、ハンターの方は山に行って探すことはあるか。
「もちろんです。山に行って捜索することもあります。ただ、今回は複数の目撃がある。いまは繁殖期で雄が行動範囲を広げているので、複数目撃されたうちの一頭が、全く別の個体の可能性もある。それらの特定もできない中で、地元の方々は非常に難しい判断をしている」