7月19日から21日までの3連休、長野県内の山岳で遭難が14件相次ぎました。北アルプス槍ヶ岳では千葉県の医師の男性(71)が滑落して死亡しました。また、7人が重軽傷を負ったほか、体調不良が2人、疲労により行動不能が4人で警察や消防などに救助されました。長野県警は技術に見合った山選びをして、体力にゆとりを持った計画を立て、登山するよう呼びかけています。


■北アルプス槍ヶ岳で滑落 死亡

7月19日午後6時半頃、北アルプス槍ヶ岳の山頂付近(標高約3000メートル)で、通りがかりの登山者から「滑落した人がいる」と付近の山小屋に届け出がありました。

山小屋から警察に通報があり、20日早朝から長野県警のヘリコプターが捜索にあたり、午前7時頃、槍ヶ岳の山頂から南南東の地点の岩場の斜面で遭難者を発見、救助しましたが、死亡が確認されました。

現場の状況などから、滑落したとみられます。

死亡したのは千葉県鴨川市の医師の男性(71)と身元がわかりました。


■北アルプス燕岳で転倒 左腕骨折

北アルプス燕岳では7月19日、滋賀県守山市の41歳の女性が下山中に転倒し、重傷を負いました。

遭難したのは、滋賀県守山市の会社員の女性(41)です。

警察によりますと、女性は18日に2人パーティーで中房登山口から入山し、19日午前7時半過ぎ、下山中に北アルプス燕岳の合戦ノ頭付近(標高約2600メートル)で転倒して、けがをしました。

同行者から消防に救助要請があり、午前9時半ごろ、長野県消防防災ヘリで女性を救助し、松本市内の病院に搬送しました。

女性は左腕骨折などで重傷の模様です。

■北アルプス燕岳で疲労により行動不能

また、同じく北アルプス燕岳では19日、下山中に東京都八王子市の61歳女性が疲労により行動不能になり、ヘリコプターで救助されました。

女性は7月18日、3人パーティで中房登山口から入山し、19日、下山中に燕岳の第一ベンチ付近(標高約1700メートル)で疲労により行動不能になりました。

同行者から午後2時半頃、「女性が登山道で疲労により動けなくなった」と消防に救助要請があり、午後4時半頃、長野県消防防災ヘリが女性を救助し、松本市内の病院に搬送しました。

女性は疲労しているものの、けがはない模様です。

■守屋山で体調不良により行動不能

伊那山地守屋山の諏訪社付近では、19日、長野県朝日村の37歳の女性が体調不良により行動不能となり救助されました。

女性は19日、家族3人で守屋山に入山し、山頂から下山中に行動不能になりました。

同行していた家族から消防に救助要請があり、消防署員が出動して、午後6時45分頃、女性を救助し、茅野市内の病院に搬送しました。

女性にけがはないということです。

■北アルプス野口五郎岳で疲労により行動不能

北アルプス野口五郎岳の山頂付近(標高約2900メートル)では、7月20日朝、富山市の男性(56)が疲労のため行動不能になり、救助されました。

救助されたのは富山市の自営業の男性(56)です。

警察によりますと、20日朝6時頃、男性から長野県山岳遭難防止常駐隊に「疲労により行動不能」と救助要請がありました。県警ヘリが出動し、午前9時過ぎに男性を救助し、大町市内の救急隊に引き継ぎました。男性は疲労しているものの、けがはない模様です。

男性は18日に単独で七倉登山口から入山していたということです。

■北アルプス槍ヶ岳で落石 女性けが

北アルプス槍ヶ岳では7月20日、落石があり、広島市の女性(49)がけがをしました。

救助されたのは広島市の会社員の女性(49)です。

警察によりますと、北アルプス槍ヶ岳の北鎌尾根(標高約2800メートル)で落石があり7月20日午前9時過ぎに女性の同行者から「同行者が落石を受け負傷した」と110番通報がありました。

女性は午前11時過ぎに県警ヘリで救助され、松本市内の病院に搬送されました。右腕を負傷している模様だということです。

女性は20日から4人パーティで北アルプス槍ヶ岳に入山し、登っている途中だったということです。

■北アルプスの大黒岳で下山中に転倒

北アルプスの大黒岳(標高約2350メートル)では7月20日、下山中に浮き石により転倒した男性がヘリで救助されました。

救助されたのは神奈川県三浦郡の会社員の男性(44)です。

警察によりますと、男性は19日、北アルプス唐松岳に1人で入山し、20日、五竜岳から下山中、浮き石で転倒し、負傷しました。付近をパトロールしていた長野県山岳遭難防止常駐隊員に本人が救助を要請し、正午過ぎ、長野県消防防災ヘリで救助され、大町市内の病院に搬送されました。

男性は右足を負傷している模様です。

■北アルプス大天井岳で下山中に転倒

北アルプス大天井岳では7月20日、埼玉県の女性(54)が下山中に転倒し、重傷を負い、救助されました。

救助されたのは埼玉県久喜市の会社員の女性(54)です。

警察によりますと、20日、女性は常念岳から大天井岳の間を縦走中、大天荘付近(標高2900メートル)で転倒しました。

20日午後1時半頃、本人から「大天井岳から下る途中で転倒し、歩けない」と警察に救助要請があり、午後5時前、県警ヘリが救助し、松本市内の病院に搬送しました。女性は右足の骨折などで重傷を負いました。

女性は19日、2泊3日の日程で登山仲間の女性と2人で一ノ沢登山口から入山していました。

■中央アルプス空木岳で下山中に転倒

中央アルプス空木岳では7月20日、兵庫県の女性(47)が下山中に転倒し、21日、長野県警のヘリコプターで救助されました。

遭難したのは兵庫県加古川市の派遣社員の女性(47)です。

警察によりますと、女性は3人パーティで20日に日帰りの予定で空木岳に入山しましたが、山頂から木曽殿山荘方面に下山中に転倒し、足を負傷しました。

パーティーの1人から「同行者が転倒した」と110番通報があり、その後、近くの山小屋まで自力で移動したということです。

21日午前9時半頃、県警ヘリで女性を救助して、木曽町内の病院に搬送しました。女性は右足骨折で重傷の模様です。

■北アルプス白馬岳で体調不良で行動不能

北アルプス白馬岳では7月20日、登山をしていた東京都板橋区の28歳の男性が体調不良のため行動不能になり、救助されました。

男性は20日、2人パーティで猿倉から1泊2日の予定で白馬岳に入山し、登山中、大雪渓(標高約2600メートル)で体調不良のため行動不能となりました。

午後4時半頃、同行者から大町消防署に救助要請があり、県山岳遭難防止常駐隊が出動し、午後6時半頃、男性を救助し、付近の山小屋に収容しました。

警察によりますと、男性は脱水症状により歩行できなくなったとみられます。

■南アルプスで沢登り中に足を負傷

南アルプスの大横川(標高約1800メートル)では7月20日、神奈川県の60代の男性が沢登り中に足をけがして行動不能となり、ヘリコプターで救助されました。

遭難したのは、神奈川県相模原市の会社員の男性(63)です。

警察によりますと、男性は7月20日、知人と2人で沢登り中に、バランスを崩して、足をけがして行動不能となりました。

午後4時半頃、本人から伊那広域消防本部に救助要請があり、消防署員が出動し、午後6時過ぎ、長野県消防防災ヘリで救助されました。

男性のけがの程度は軽く、病院に搬送されませんでした。

■志賀高原で男性が一時、行方不明

長野県山ノ内町の志賀高原岩菅山では、55歳の男性が一時、行方不明となりましたが、警察などが発見、救助されました。

救助されたのは、長野市の公務員の55歳の男性です。

20日午後7時過ぎ、男性の妻から「渓流釣りに行ったまま、帰ってこない」などと警察に通報がありました。

警察によりますと、男性は19日、単独で志賀高原岩菅山に入山し、予定時間になっても帰宅せず、行方不明になっていました。

21日午前6時から警察や地元の遭対協の隊員が9人体制で捜索を開始。

午前11時過ぎ、男性から妻に「無事で、山道まで出ている」旨の連絡があり、妻から警察に通報がありました。

午後2時20分頃、捜索していた警察官が山中で男性を発見、救助しました。

男性は疲労しているものの、けがはない模様で、警察官らと同行下山しました。

■北アルプス鹿島槍ヶ岳付近の山小屋内ではしごから転落

北アルプス鹿島槍ヶ岳付近の山小屋内(標高約2500メートル)では21日、富山県魚津市の会社員の女性(54)がはしごから転落して、けがをして、ヘリコプターで救助されました。

女性は20日、2人パーティーで柏原新道登山口から入山し、鹿島槍ヶ岳付近の山小屋に宿泊中、21日朝、はしごから転落してけがをしました。

女性は自力で歩行できないことから、山小屋の支配人を通じて、21日午前6時頃、救助要請があり、午前9時半頃、長野県消防防災ヘリが女性を救助し、松本市内の病院に搬送しました。

女性は左足首をけがしている模様です。

■北アルプス北穂高岳で疲労のため行動不能

北アルプス北穂高岳では21日、登山をしていた東京都狛江市の会社員の男性(64)が疲労のため行動不能になり、救助されました。男性は疲れているもののけがはない模様です。

男性は7月18日、単独で上高地から入山し、21日、南岳から北穂高岳に向け登山中、の大キレット付近(標高約2800メートル)で疲労のため行動不能になりました。

男性は「疲労や手足のしびれ」の症状を訴え、21日午前10時半頃、パトロール中の長野県山岳遭難防止常駐隊員に救助要請しました。午後3時半頃、男性を救助し、付近の山小屋に収容しました。

翌日の22日午前6時半前、男性を長野県警ヘリで救助し、松本市内の病院に搬送しました。

男性は疲労しているものの、けがはない模様です。

■技術に見合った山選び ゆとりを持った計画を

7月19日から21日までの3連休、長野県内の山岳では遭難が相次ぎました。北アルプスなどで14件が発生し、1人が死亡、7人が重軽傷を負いました。このほか体調不良が2人、疲労により行動不能になった遭難者が4人います。

県警によりますと、遭難の多くは、疲労が溜まりやすい下山中に発生し、転倒・滑落の多くは、梯子や鎖が設置されている危険箇所よりも比較的危険性の少ない場所で発生しているということです。一見、危険性が見えない登山道では、つい油断をしてしまったり、厳しい暑さによる疲労や脱水により、注意力が散漫になっていることなどが間接的な遭難の要因として挙げられるとしています。

県警は無事に下山するまで、気持ちを引き締め、漫然と行動しない、また、技術に見合った山選びをして、体力にゆとりを持った計画を立て、登山をするよう呼びかけています。

長野放送
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