1議席をめぐる激戦が繰り広げられた参院選・新潟選挙区。野党がその議席を死守し、自民党は接戦の末、議席奪還を逃しました。何が勝敗を分けたのか…選挙戦を振り返ります。
■立憲・打越さく良氏 去年“全勝”の衆院議員が強力にバックアップ
7月20日夜、支援者が集まる会場で拍手で迎えられたのは立憲民主党の打越さく良さん。表情には安堵の色が浮かんでいました。
20日、投開票された参院選。打越さんが43万8000票を獲得し、自民党の新人・中村真衣さんを約1万票差で抑えるなどし、2度目の当選を決めました。
〈参院選 新潟選挙区〉
当選 打越さく良 氏(立憲・現) 43万8592票
中村真衣 氏(自民・新) 42万8167票
平井恵里子 氏(参政・新) 20万7786票
原田公成 氏(N党・新) 1万6604票
【立憲 打越さく良 氏】
「新潟から政治の風景を変えていきたい。その県民の勝利でございます。本当にありがとうございます」
【立憲 打越さく良 氏】
「様々な思い願いが詰まった1人区。どうか引き続き、私に働かせてください」
現職としての実績をアピールし、減税による物価高対策などを訴え選挙戦を戦った打越さん。
全県的な知名度に課題を抱える中、強力にバックアップしたのが去年の衆院選、県内の全選挙区で勝利した立憲の衆院議員です。
【立憲 黒岩宇洋 衆院議員】
「打越さく良で何としても勝とうではないか」
衆院選の全選挙区ごとに選対支部を立ち上げ、各地域の活動をリード。さらに…
【立憲 野田佳彦 代表】
「野党議席を最大化できたときは、本当に自公政権の過半数、我々が実現できるんです」
新潟を“最重点選挙区”に位置づける党本部からは野田代表が期間中3度も訪れるなど、幹部が続々と県内入りし、打越さんを支えました。
一方、当初、戦いのカギを握るとされた野党の連携をめぐっては課題もありました。
前回6年前の選挙では無所属で出馬し、各野党が推薦するオール野党体制を築いた打越さん。
しかし、今回は立憲の公認候補として出馬したことで国民民主党のほか、最大の支持母体・連合と距離を置く共産党が推薦を見送り、共闘体制が揺らぐ中での戦いとなっていました。
■知名度武器に支持広げた自民・中村真衣氏 大物議員も続々と応援に
そんな打越さんに挑んだのが…
【自民 中村真衣 氏】
「やはり、スポーツの力では限界があるのではないか。ふるさとを守る、地域を守るにはやはり行政の力、国の力、そして政治の力が必要なのではないか」
自民党の新人・中村真衣さん。政治経験はないながらも、競泳のオリンピックメダリストとしての高い知名度を武器に支持を広げました。
政策の知識などが不安視される中、各地域の自民党議員が全面的にフォローしたほか…
【石破首相】
「どの党がその地域の事を知り、地域から日本を変えるということを訴えたか、中村真衣は全身全霊で最後まで訴えます」
こちらも党本部から石破首相をはじめ、連日政界の大物が応援に駆けつけました。
■互角の争いの中…“打倒・自民党”へ野党間の連携強まる
大激戦となった選挙戦、FNNの序盤の情勢調査では中村さんと打越さんが横一線の互角の争いに…。こうした状況を受け動いたのは野党です。
選挙戦中盤、新潟入りした共産党の田村委員長。
【共産 田村智子 委員長】
「新潟選挙区・打越さく良さん、その勝利で自民・公明党、確実に少数へと追い込んでいこうではないか」
“打倒・自民党”の思いのもと、野党共闘の姿勢を強調すれば、終盤には国民民主党の上杉知之県連代表も応援に駆けつけマイクを握り、野党間の連携を強めました。
【立憲 打越さく良 氏】
「立憲民主党、いや、ほかの党派の皆様も一緒になって力を結集していただき、打越さく良、この熱い選挙を戦い抜くことができました」
【立憲 菊田真紀子 衆院議員】
「立憲民主党だけでなく、各野党の皆様からも本当に真心あるご協力とご支援をいただき、感謝申し上げる」
打越さんの勝利に陣営は…
【立憲 米山隆一 衆院議員】
「それぞれ飲み込みづらいことを飲み込んでいただいたというのは非常にある」
【立憲 西村智奈美 衆院議員】
「6年前の選挙と少し違うところもあるかもしれないが、打越候補を当選させようという思いで皆さんのご支援をいただいているということは、まったく6年前と変わりはないと思っている。そのことについては本当にありがたい」
■台風の目となった“参政党” 得票は20万票超に
一方の中村さん。序盤、勢いを保っていたものの、自民党議員の能登半島地震をめぐる不適切な発言が明るみになると、自民党への逆風が一層強まる事態に…陣営幹部からは「自民党の名前を隠した方がいい」との声も聞かれました。
それでも終盤劣勢の情勢が伝わる中、議席の奪還に向け、組織の結束を強め追い上げを図ります。
【自民 中村真衣 氏】
「本当にあと一歩、あともう少しまで来ています。新潟県民の声は枯らさないよう、精いっぱい頑張らせてください」
しかし、そんな中村さんにとって想定外だったのが…
【参政 平井恵里子 氏】
「本当に日本このままじゃいけないと本当に思っていたんですよ、ずっと思っていたんです」
今回、台風の目となった参政党の存在です。直前の都議選で議席を獲得した勢いそのままに、新潟でも20万票を超える得票に。保守色の強い訴えを展開し、保守層や無党派層の支持を取り込みました。
【参政 平井恵里子 氏】
「回っていると『どうにかしてくれ』という声が本当に大きかった。参政党が訴えてきたことが国民・県民にそうだよなと心に響いた結果だと思う」
自民党関係者もその影響を認めます。
【自民党県連 岩村良一 幹事長】
「保守の分散は全国的にあったかもしれない」
【自民 小野峯生 県議】
「(Q.参政党の影響は?)伸びるのではないかということは言われていたが、これほどまでに…。私どもの自民党系の票を奪っていることだけは確か」
【自民 中村真衣 氏】
「自分の力を出し切っての結果なので、そういう意味ではやり切った気持ち。今まで通り、水泳教室スポーツを通して地域振興、地域活性化、子どもたちの教育に力を入れていければ」
様々な要素が絡み合った新潟選挙区の激戦を制した打越さん。衆参で与党が過半数割れする中、野党として国政での責任はこれまで以上に重くなります。
【立憲 打越さく良 氏】
「物価高対策もそうだし、この地域でいえば原子力発電所の問題もそうだし、地域医療・介護の問題など待ったなしの課題がたくさんあるので、コツコツ取り組んでいきたい」