梅雨が戻ってきた。この時期は『梅雨型熱中症』への注意が必要だが、今年はさらに警戒しなければいけないという。

真夏のような暑さから一転、じめじめした蒸し暑さが続いている。急激な気温の変化は自律神経の乱れにつながる。

なんとなく不調を感じている人も多いのではないだろうか。目に見えない「自律神経」のはたらきは、分かっているようで見過ごしがちだ。

しかし侮ってはいけない。自律神経が乱れることで、熱中症の危険が高まるというのだ。

「蒸し暑さ」+「気温差」でバランスが崩れている今、どのような対策をとればよいのか。

熱中症患者の救急医療に携わっている埼玉慈恵病院副院長・藤永剛医師に話を聞いた。

■「梅雨型熱中症」とは

【埼玉慈恵病院 藤永剛副院長】
今の時期に心配な『梅雨型熱中症』は、この時期特有の「高い湿度」のために起こる熱中症です。

湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体に熱がこもって体温が上昇します。すると熱を下げようとさらに汗が出て、脱水傾向になります。

また、湿度が高いと喉の渇きを感じにくく、水分をとる量が減り、これも脱水につながります。

脱水が進むと「体温調節機能」が低下し、体温が上昇。すると熱を下げるために発汗し、さらに脱水が進行する…この悪循環が繰り返されることで『熱中症』が起こるのです。

真夏の炎天下での熱中症と違い、『梅雨型熱中症』は静かに発症して、じわじわ進行するので、気付くのが遅くなり、結果、重症化するといった特徴もあります。

■いま何が起きているのか?

梅雨入り後、しばらく雨が続いた後、急に暑くなりました。各地で真夏日、猛暑日と気温の高い日が続き、その後再び梅雨空に。気温は下がったものの湿度が高い毎日です。

このような急激な天候の変化は、気温差や気圧の変化による自律神経の乱れを引き起こします。

自律神経は「体温調節機能」をコントロールしています。交感神経と副交感神経がバランスを取りながら体温を一定に調節しているのです。

ですから、自律神経が乱れると、体温調節機能が低下し、ほてりや冷え、発汗異常などの症状を引き起こします。

そもそも『熱中症』とは、体温調節機能が正常に働かなくなり、体内に熱がこもって体温が異常に上昇する状態です。

つまり、高温多湿な梅雨の時期に「脱水」が進んで「体温調整機能」が低下するのに加えて、自律神経の乱れによる「体温調節機能」の低下が重なり、通常より『熱中症』にかかりやすくなる…今、まさにこうした状況にあるのです。

■「かくれ脱水」を防ぐには

「体温調整機能」を正常に働かせるためにどうすればよいのか。

一つは、脱水の前段階である「かくれ脱水」に注意することです。

真夏に起こりやすい「脱水症状(めまい、ふらつきなど)」が出る前の段階で、水分不足がじわじわ進行している状態が「かくれ脱水」です。

身体の1~2パーセントの体液が失われている状態をいい、この段階で気付いて適切な水分補給をすることが重要です。

<かくれ脱水の主な症状>
*口の中がねばつく(唾液が減少しているため)
*皮膚や唇が乾燥する(特に唇の乾燥やひび割れに注意)
*尿の色が濃く、回数や量が減る(正常なら1日5~8回の排尿が目安)
*脈がいつもより速い、立ちくらみがある(体が水分不足を補おうと心拍数を上げて血圧を維持しようとする、また起立性低血圧〈立ちくらみ〉も早期サインのひとつ)
*なんとなく体がだるい(血液の水分が減って循環や代謝が落ちる)

<かくれ脱水のチェック方法>
*爪を押した後、色が白からピンクに戻るまで3秒以上かかる
*手の甲の皮膚を引っ張って、戻るまで3秒以上かかる

<かくれ脱水の対策>
*こまめな水分補給
のどが渇かなくても水分をとる。特に起床時と就寝前は必須です。コップ1杯が目安ですが、半分でも構いませんので、必ず水分を必ず摂って下さい。

また、「食べる水分補給」を上手く活用するのもひとつです。
きゅうりやトマト、ナスといった夏野菜や、スイカやメロン、桃など夏が旬の果物は、水分を多く含み、ビタミンやミネラルも豊富に含まれています。

みそ汁も、塩分と水分を同時に補給でき、熱中症対策に効果的です。夏こそ積極的に食べて下さい。

■「栄養」「睡眠」「規則正しい生活」も大事

もう一つは「栄養」「睡眠」「規則正しい生活」。

とても基本的なことですが、自律神経を整え「体温調節機能」を改善するには、日頃からの体調管理が非常に大切です。

*1日3食、バランスよく食べる。特に朝食をしっかり摂ることで、体温が上昇し、自律神経が整いやすくなります。

*ピンポイントシャワーも体温調節機能の向上に効果的です。首筋(うなじ)、肩甲骨まわり、腰の真ん中(仙骨付近)を、38~40度のシャワーで1~2分、重点的に温めて下さい。
この3つの部位は自律神経の通り道に近く、しっかり温めることで高い効果が期待できます。
1カ所でも2カ所でも構いません。できる範囲で毎日続けることが大切です。
また、夏でも湯ぶねに浸り体を温めることも大事です。

*ウォーキングや軽い筋トレなど適度な運動は、基礎代謝を高め、体温調整機能を向上させます。

梅雨の時期は湿度が高く気候も変化しやすいので、ただでさえ体調を崩しやすい時期です。

今年は6月としては異例の暑さも続きました。

しかしその先にはもっと暑い夏が待ち構えています。

水分補給と規則正しい生活を今から実践して、夏を元気に乗り切っていただきたいと思います。

(埼玉慈恵病院 藤永剛副院長)

関西テレビ
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