温泉王国として知られる大分県。
県内には「5086」もの温泉の源泉があり、温泉が湧き出る量はなんと1分間にあわせて291トン。大分県は源泉数、湧出量ともに日本一、それぞれ2位以下と大きな差があるんです。
温泉は大分にとって大事な観光資源でもありますが、いま「温度の低下」や「湯量の減少」といった問題に直面しています。取材しました。
◆愛知県から別府に訪れた人
「大分といえば別府温泉街。午前中だけで4つ入ってきた」
◆ドイツから別府に訪れた人
「温泉は最高。本当に最高。」
国内有数の温泉地である大分県。
中でも、多くの源泉がある別府市には年間およそ680万人の観光客が国の内外から訪れます。
しかし近年、温泉の「温度の低下」や「湯量の減少」といった問題に直面しています。
高度経済成長期に大量に源泉を掘削 「温泉の量」が減少傾向
大分県と京都大学などは別府市中心部にある19の源泉の温度を調べました。その結果、1870年には100℃近くあった温度は1990年ごろには40℃近くに。
その後少し上昇しましたが現在も50℃前後に留まっています。そしておよそ100年後には再び40度近くにまで下がると予想されています。
また、高度経済成長期に観光業が栄え、大量に源泉を掘削したために温泉の量も減少傾向にあるということです。
◆県生活環境部自然保護推進室 羽田野康仁室長
「需要と供給の問題で(湯が)使われれば当然減る。使う量を抑えれば確保出来るということになるので、実際の状況を見てみても使える量が若干増えていたのかなという感じはある」
「温泉が無くなったら死の町」旅館からも不安の声
別府市内の旅館でも異変を感じていました。鉄輪で90年近く営業する旅館みゆき屋です。
露天風呂と内風呂合わせて3つの温泉がありますが、2年ほど前に一時湯量が減り温泉を利用出来ない時期も。いまは正常なお湯の量に戻っていますが今後に不安を感じていました。
◆旅館みゆき屋 女将伊東一美さん
「温泉が無くなったら本当に鉄輪も温泉地は死の町。おんせん県おおいたなので、温泉を大事にして客に喜んでもらえるいつまでも温泉であり続けてほしい」
100年後の別府市内の温泉の温度は30℃台に?
どうして温泉の量が減り、温度も下がっているのか。
温泉の仕組みは様々ですが、別府市の場合は雨水がマグマ溜まりで温められ、いわゆる温泉となります。
この温泉をとり過ぎると当然、枯渇してしまいます。
雨が降れば良いだろうと思うかもしれませんが、雨水を温める十分な時間が無いと温度が低くなってしまうんです。
いままさにこうしたリスクが高まっています。
また湧出量が増えていることについて、京都大学の大沢教授は地熱発電に温泉が活用されていることも要因の1つと指摘しています。
県などが100年後の別府市内の温泉はどうなっているのかシミュレーションしたデータによりますと、いまと同じ温泉の量を使い続ければふもとの源泉の温度は下がり続け、80℃近くあった場所がなんと30℃台になる場所もあったということです。
対策として県は昭和の時代に、別府市内で新規掘削を認めない特別保護地域3か所を指定しました。
しかし問題が解決しないことから2023年、より温度が高い温泉が流れる「西部」と「南立石」2つの地域での掘削を新たに規制しています。
また、地熱発電を行う業者には環境に影響を与えないか確認するため温泉の使用状況をモニタリングすることを条件としています。
温泉は無限にあるものでは無いということを改めて認識するだけでも温泉を守る一歩になるかもしれません。