フジテレビ系列の石川テレビ放送が製作したドキュメンタリー映画『能登デモクラシー』が6月27日(金)から熊本市で上映されます。監督を務めた五百旗頭 幸男 さんに作品に込めた思いを聞きました。
【五百旗頭 幸男 監督】
「今回、映画化するに当たって、番組によって町が変わっていくというところが実は大きな肝になっていて、番組版から比べると過疎と民主主義の崩壊、さらにそこに民主主義再生っていうところまでを捉えたのが今回の映画」
石川県の能登半島の中央に位置する穴水町。この町で元中学校教師の滝井 元之 さんは手書きの新聞を発行しています。滝井さんは、町の政治が利益誘導型となっている現状に警鐘を鳴らします。
【滝井 元之 さん】
「私はこれまで行政や議員に対して、厳しい記事を書いてきましたが、それは町のために頑張ってほしいという思いの裏返しであるわけで、単に批判するために批判してきたわけではないので」
【五百旗頭 幸男 監督】
「地元局としてマンパワーの問題があったりして、なかなか報道では奥能登の小さな自治体には常に記者を置いておくことはできないし、そういったことが常態化したことによって震災前の穴水町の状態が生まれていたのは事実なので、そこに対するテレビ局としての反省は当然あってしかるべきだし、そういう視点で取材に入ったというのもあるんです」
取材を通し、役場と議会のいびつな関係が浮き彫りとなる中、去年1月に能登半島地震が発生。被災地となった穴水町で取材を重ね、五百旗頭 監督は去年5月、『能登デモクラシー』と題してドキュメンタリー番組を放送しました。
すると、町に変化が現れ、民主主義の再生が始まります。
【五百旗頭 幸男 監督】
「(町長や議員は)自分がどういうふうに描かれるかを理解した上で、その後、僕の取材にちゃんと応じてくれているんです。お互いの立場を尊重する、民主主義の根幹をなす土台となる部分は穴水町にすごく備わっていると、僕はこの2年間、取材をしていて感じているので、そのあたりにもちゃんと目を向けていただきたい」
富山市議会の不正を暴いた『はりぼて』や石川県政などを軸にムラ社会の実像に迫る『裸のムラ』を手がけた五百旗頭 監督。今回の映画にはこれまでの作品とは違った思いが込められているといいます。
【五百旗頭 幸男 監督】
「作品を見た人の行動変容につながったり、題材が変化していくことが起こったら、それはそれでうれしいんですけど、〈それを目的化してしまうと僕たちのおごりになるからすごく危険だ〉と自制的だったんですけど、震災前後の穴水町、滝井夫妻のこともずっと取材していく中で、素直に一人の人間として自分の作る作品によって、穴水町が今よりも本当にいい町になってほしいと切に思うようになったんです」
石川テレビ放送・製作映画『能登デモクラシー』は6月27日(金)から熊本市のDenkikanで上映されます。