長引く令和の米騒動で消費者には頭の痛い毎日。こうした中、田んぼに水を張らない新しい形の稲作がいま注目されています。

静岡県御殿場市で米作りをしている勝亦健太さん。

ただ、その様子は稲作と聞いて通常イメージする姿とはまったく異なります。

米農家・勝亦健太さん:
田んぼに水を張って苗を作って植え替えるという稲作を(父が)若い時から50年以上続けてくれたが、まったくそのままの形で引き継ぐのは難しいだろうということで取り入れている

勝亦さんが取り組んでいるのは「乾田直播」と呼ばれる栽培方法。

乾いた田んぼに種をまき、芽が出たあとも水を張らずに稲を育てる乾田直播は、水田を使った栽培と比べ労働時間を大幅に削減できることが特徴です。

米農家・勝亦健太さん:
稲作農家が一番苦労して時間を投入していたのが苗づくり・苗運び・田植えですよね。田んぼの段取り、代掻きがまるごとなくなってしまうので、いろんな試算が全国でされていますけど、進んでいるエリアだと既存の田植えをするコメ作りに比べて時間で3分の1くらいまで圧縮できるのではないかと。実は5分の1にいっているプレーヤー(農家)もいる

とはいえ、県内でこの方法に挑んだのは勝亦さんが初めて。

数年前に引退するまで、半世紀にわたり水田を使った稲作に従事していた父も、最初は懐疑的な目を向けていたといいます。

米農家・勝亦健太さん:
初めてやる年は「できっこないよ」と言っていましたよ。ただ、実際できてしまったのを見ると「できるんだね」と自分の農業友達に「うちの息子がこうやっているんだけど、できるんだぞ!」と言っている側

勝亦さんは海藻などから抽出した液体を使って生育を促すことで農薬や肥料を使わずとも稲は順調に成長。

春に植えた苗は秋頃の収穫を予定しています。

一方、このように先進的で持続可能な農業が軌道に乗りつつあるだけに、昨今の令和の米騒動については思うこともあると話します。

米農家・勝亦健太さん:
大事なことは(田んぼに)水を張らないことではないし、稲を直接まくことでもなく、一番大事なのは生産コストを下げること。コストを下げるということは生産者の手取りが増えることでもあるし、消費者に届く金額を圧縮するということでもあるし、農業自体が社会全体から認められて大事なものだなと思われるためには、生産者側もコストを下げる努力をしないと(いけない)。この部分が政府からも今までの農業界でも語られなかった部分ではあるので、そこは声を大にして取り組むべき課題だともう1回確認しておきたい。

その上で、米作りは楽しく儲かる仕事だというビジネスモデルを作り、次の世代にバトンを渡したいと意気込んでいます。

テレビ静岡
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