天皇陛下の広島ご訪問は皇太子時代も含めて今回で11回目となります。
かつての映像や関係者の証言をもとに、その歴史を振り返ります。
尾道市でおよそ1400年の歴史を持つ浄土寺に飾られている写真。
やわらかい表情でうつられているのは今から40年以上前、当時21歳で浩宮様時代の天皇陛下です。
【浄土寺 小林暢善 住職】
「ご卒論のテーマが海運だったと思うんですけども、そういう関係で、尾道は港町で栄えまして、古文書がたくさんありますので、それで来られた」
尾道に船を寄せた足利尊氏にまつわる古文書をご覧になり、休息にはお茶を楽しまれたといいます。
【浄土寺 小林暢善 住職】
「声を出してのご挨拶はないんですけど、にこやかにされているのが印象深いですね」
陛下が初めて広島を訪問されたのは1981年。
大学で専門だった「中世の交通史」に関する卒業論文のため、福山市の草戸千軒町遺跡など県内の遺跡や資料を見学されました。
陛下が立ち寄られたゆかりの場所は他にも…
【Ryokan尾道西山 西山光夫さん】
「専門家の先生が来て、浩宮様の論文に関するお勉強を、奥の部屋でやられたと聞いている」
尾道市で歴史深い建物を今に残す
「Ryokan尾道西山」
元々は1943年に「西山別館」として創業した老舗旅館で、天皇陛下はこちらの部屋で大学の研究に励まれました。
家族で陛下を出迎えた当時の支配人の息子は…
【Ryokan尾道西山 西山光夫さん】
「一緒に来られる方の人数には驚いた。こんなにたくさんの方が動いているんだというのは記憶に残っている。尾道という場所にきていただいた。そこの歴史を勉強していただいているのは嬉しかったです」
初めての広島訪問は県東部を中心に滞在されましたが、この時には、平和公園も訪問し原爆慰霊碑を参拝されていました。
父・上皇さまが、かつてから抱かれていた慰霊への思いを、すでにこの時から受け継がれようとされていました。
それから11年後、皇太子として初めて広島を訪問した陛下は広島赤十字原爆病院を慰問されました。
患者1人ひとりに声をかけられ、予定されていた時間をオーバーするほどだったといいます。
そして、陛下にとって3度目の訪問となった1994年は「ご成婚」の翌年。
皇后陛下・雅子さまとお2人揃った姿を一目見ようと各地で歓迎の波ができました。
広島アジア大会の開・閉会式への出席が主な目的でしたが、初日に向かわれたのは平和公園や原爆養護ホームで、被爆地に寄り添おうという両陛下の思いがうかがえます。
「雅子さ~ん」
一方、両陛下の行かれる先々で沸き続けた大歓声。
当時は雅子さまの広島訪問が初めてだっただけに、そのロイヤルファッションも多くの注目を浴びました。
【見に来た人は】
「とてもおきれいでした、感動しました」
<1999年 瀬戸内しまなみ海道 開通式典>
「安定した交通網を提供することにより人・もの・文化の交流が大きく進展することが期待されます」
瀬戸内しまなみ海道の開通式典など広島ゆかりの行事に出席されてきた両陛下。
お2人揃っての広島訪問は愛子さまが生まれる前年の2000年が最後となっていました。
広島訪問の際、両陛下が度々昼食で立ち寄られたこちらのホテル。
【広島エアポートホテル 新田真吾 宿泊支配人】
「3回ほどお越しになられている」
休憩場所にあがられるまでを見守った新田さんは両陛下の印象をこう振り返ります。
【広島エアポートホテル 新田真吾 宿泊支配人】
「皇太子殿下ということで、来られた際、本当に恐縮したが、接される皆様それぞれに真摯にご対応されていらっしゃったので、分け隔てなく対応されている姿はとても感銘を受けるところがあった」
両陛下は当時スイートルームだったこちらの部屋で昼食を召し上がられたといいます。
【広島エアポートホテル 新田真吾 宿泊支配人】
「古いメニューにはなりますけど、このようなメニューをご用意しました。選んでいただけるということは私どもとしても、誇りを持っている。サービスに当たる者、料理を作る者、その者たちが日ごろの成果を発する場所として、そういう機会をいただくということはとても素晴らしいことだなと感じている」
天皇陛下が最後に広島を訪問されたのは、2006年。
この時、陛下は、初めて宮島を訪問されました。
1854年、創業の老舗旅館「岩惣」
【岩惣 女将 岩村玉希さん】
「こちらが貴賓室です。皇室の方専用のお泊りのお部屋になります」
大正時代に建てられた皇室専用の貴賓室。
この旅館は、皇太子時代の大正天皇や昭和天皇。
上皇さまも皇太子時代に、ご夫妻で宿泊された皇室に縁の深い場所です。
【岩惣 女将 岩村玉希さん】
「錦楓亭というお部屋ですが、ここでご昼食をとっていただきました」
陛下はここで、県の関係者など数人と昼食を共にされたといいます。
【岩惣 女将 岩村玉希さん】
「お一人掛け用のイステーブルで、向かい合わせで、ちょうどこの辺りに陛下がお座りになられて、すごく和やかにお話をされながら」
この時の陛下の印象を岩村さんは、こう話します。
【岩惣 女将 岩村玉希さん】
「山登りがお好きなので、弥山の方にご興味を持たれていたようなご様子でした。すごく穏やかで和やかなお人柄でした」