伝統のバンカラスタイルでエールを送る済々黌高校応援団。
その団長を父と息子２代にわたって務める親子がいます。
時代を超えて２人が紡ぐ青春の物語。
３６年前に取材したＴＫＵの映像とともに、親子の思いに迫ります。
熊本県立済々黌高校。
この日は、県高校総体、総文祭を前に各部活が決意表明を行う推戴式が行われていました。
【選手代表】
「宣誓、私たち生徒一同は、支えてくれる方々に感謝し、日々の努力を最大限に発揮して正々堂々、戦うことを誓います」
そこでエールを切るのは応援団の第６９代団長、上西川原 響さんです。
【エール】
さかのぼること３６年前…。
当時ＴＫＵが取材した済々黌の推戴式の映像です。
バンカラそのものの風貌と、キレキレのエールを切るのは第３６代、当時の団長の上西川原 淳さん。
現在の団長・響さんの父、淳さんです。
【淳さん 当時のインタビュー】
「頑張っている人を応援することが好きなんです。だから一生懸命やっている人を応援するのが、そのまま自分に返ってくるようで、実は自分を応援しているような思いでした」
実は響さんの二つ上の兄、想さんも第６７代の副団長。
上西川原さん一家は、親子２代で伝統の済々黌の応援団を紡いでいます。
【響さん】
「父と母が済々黌出身で、身近に済々黌と応援団があってそこに憧れていたので、もちろんプレッシャーはありますが、（父に）近づけるように頑張っていけたらと思っています」
【淳さん】
「『こいつ』と思いました。正直、想定外で『大丈夫かな』とまず思いました。
団長の責任は重いので、（息子は）兼部だったので、バドミントンをやりながら済々黌の顔としてその重圧に耐えられるのか、もしかしたら批判されたりしないか、ちょっと不安はありましたが。とはいえ、うれしかったです。私が最後にかぶった破れ帽、破帽をかぶって応援している姿を見たら、ちょっと感慨深いものがありました」
様々な学校行事で大役を任される応援団ですが、現在の部員は上西川原さんを含め１１人。
上西川原さん以外は女子部員です。
実はここ２代は、女性が団長を務めてきました。
【淳さん】
「（コロナの）時に団員が途切れそうになって、ろうそくの火が消えかかって『応援団の歴史はこれで終わりだ』と思ったんですが、中山愛那さんたちが入ってくれて
一人入って、二人入って。何とかつないでもらって」
現在の１年生部員は女子マネージャーの２人のみ。
部員数の減少とともに現在は、ほかの部との掛け持ちもＯＫで部員を獲得してきた応援団ですが、厳しい状況が続いています。
【響さん】
「今、女子がたくさん入ってくれているのはうれしいんですが。男が僕一人だと寂しいところもあるので、もっと１年生を加えてにぎやかにしていきたい」
今月５日、この日は済々黌の伝統行事、福岡の修猷館高校野球部との定期戦を控え、エールの練習を行っていました。
直前に高校総体があり、団長の上西川原さんもバドミントン部で出場していたため、期間中は練習ができませんでした。
【響さん】
「毎年、自分がもう一つの部活で（定期戦に）行けてなくて、今年がようやく参加できるので。しっかり野球部の応援ができるように、修猷館さんに勝てるように、しっかり選手の後押しができるように頑張る」
今月８日、福岡市早良区。
済々黌 対 修猷館、第３４回野球の定期戦です。
今年の修猷館は秋の福岡県大会ベスト４の強豪です。
伝統の両校の定期戦では、応援団によるエールの交換が一つの目玉となっています。
まずは地元・修猷館応援団のエールです。
続いて済々黌応援団、上西川原さんのエールです。
【淳さん】
「向こうもかなり歴史のある応援団なので、ああいうのを見ると切磋琢磨というか、同じような思いで伝統が残っているのを見ると身が引き締まります。現役を見ているとつい口出ししたくなるんですが、できる限り我慢して」
定期戦は初回、済々黌が先制。
応援にも力が入ります。
試合はその後、修猷館が逆転し、迎えた終盤。
小雨が降る中、団員たちは「力水」を得て応援に臨みます。
【住 夏綺 統制長】
「選手のためなので、頑張ります」
試合は八回表に済々黌が７対６と逆転。そして…。
【試合終了】
大役を終えて。
【響さん】
「応援団のいる高校同士でやることがなかなかないので、団員にとってもいい経験になったのと、選手が健闘してくれたおかげで見事勝つことができたので。応援が少しでも力になれたら良かったと思います」
【淳さん】
「令和の時代に、昭和のバンカラがまだ生き残っている。そういうのを見られるだけでも幸せなのかなという気がします。まだ１年生が入っていないので、入部してもらって、７０、７１、７２、７３代と、どんどんつながっていってくれないかなと思います」
親子２代で紡ぐ伝統の済々黌応援団団長。
時代は変わってもその魂のエールは引き継がれていきます。
