米中貿易協議の2日目が開催された。アメリカは中国のレアアース輸出規制緩和を、中国はアメリカの制裁緩和を求めている。中国はレアアースを戦略的カードとして活用しており、日本にも影響が及んでいる。
レアアースを交渉の切り札にする中国
アメリカと中国の閣僚級による2日目の貿易協議が、イギリス・ロンドンで始まった。中国によるレアアースの輸出規制などを巡り、両国がどこまで歩み寄れるかが焦点だ。

アメリカ ラトニック商務長官:
協議は9日、一日中やり、10日もその予定だ。順調に進んでいて、多くの時間を共に過ごしている。

2日目となる米中貿易協議が行われるロンドンの会場には、10日午前、アメリカのラトニック商務長官が笑顔で入っていった。

また、中国側からは王文濤商務相が無言で会場入りした。

アメリカ側は、中国によるレアアースの輸出規制をやめるよう求める一方で、中国側は、アメリカの高い関税措置や半導体の輸出規制の撤廃などを求めるものとみられ、両国の対立緩和に繋がるか、注目される。
日本でも採れる?レアアースの国内生産が難しい理由
「Live News α」では、大阪公立大学客員准教授の馬渕磨理子さんに話を聞いた。
堤 礼実 キャスター:
貿易を巡る米中協議、馬渕さんはどうご覧になりますか?

大阪公立大学客員准教授 馬渕磨理子さん:
はい、トランプ政権のアキレス腱は、金融で言えば米国債、軍事と貿易で言えばレアアースなんです。世界のレアアース生産の約90%を中国が占めています。
レアアースがないと、自動車や電子機器はもちろん、戦闘機やミサイルも作れませんので、安全保障に関わります。トランプ政権としては、中国の輸出規制を早く緩和して欲しい。ここに焦りがあります。
堤 礼実 キャスター:
レアアースを戦略カードとして使っている訳ですね?
大阪公立大学客員准教授 馬渕磨理子さん:
そうですね。中国は過去にも、外交や経済交渉の場面でレアアースの輸出規制や緩和をして、交渉材料、圧力手段として活用してきました。
これからも、中国がレアアース規制を完全に解除することはないと思われます。問題は、アメリカだけでなく、日本も標的になっているということです。
堤 礼実 キャスター:
日本への影響というのは具体的に何かあるのでしょうか?
大阪公立大学客員准教授 馬渕磨理子さん:
実際にスズキは、レアアースの不足によって、一部で自動車が生産できなくなっています。中国に弱みを握られている、サプライチェーンの問題を意識せざるを得ません。
2020年に日本政府は、レアアースを含むレアメタルの備蓄日数を一律60日分から、種類ごとに最大180日分程度へ拡大する方針を決定しています。
こうした備蓄強化に加えて、中国依存からの脱却など、レアアースの安定供給に向けた対策を急ぐべきです。

堤 礼実 キャスター:
中国依存からの脱却には、どういったアプローチが考えられるのでしょうか?
大阪公立大学客員准教授 馬渕磨理子さん:
実はレアアース自体は、アメリカや日本でも採れると言われています。ただ、採掘や精錬の段階で公害物質が出ます。公害が出るものを中国に任せて、自動車や戦闘機を作る現状のままで良いのか、という考え方もあります。
そこで、日本企業に期待されているのは、公害を出さない形でレアアースを製造する技術の開発です。
もう一つは、都市鉱山と呼ばれる、使い終わった自動車や電子機器などから、希少な資源を取り出すリサイクルの向上に、さらに力を入れる必要がありそうです。
(「Live News α」6月10日放送分より)