恋愛感情を悪用して、女性客に多額の借金を背負わせる「悪質ホスト」。
関西テレビはその巧妙な手口を説明した「マニュアル」を独自入手しました。
女性客の中には、家族の財産を使い込み、金のため風俗業で働いているという事態も。
【ホストクラブにのめり込んだ娘の母親(50代)】「(ホストに)4500万円くらいは使っていると思う。(娘は)風俗系でアルバイトしている。ショックですよね…何のために育ててきたのか」
その実態に迫りました。
■逮捕は『あ、ついにきたか』女性客から約160万円脅し取った元副店長が語る
先週、関西テレビの取材に応じたのは大阪・ミナミにあったホストクラブの元副店長。
【恐喝罪などで有罪 ホストクラブ元副店長】「ホストっていうような商売をしていたら思い当たる節がなくはないので(逮捕されたときは)『あ、ついにきたか』というようなところが正直ありました」
元副店長は去年9月、女性客から現金およそ160万円を脅し取った疑いなどで逮捕され、先月、有罪判決を受けました。
なお、元副店長とともに恐喝などの罪で起訴された元ホストの男は、現在も大阪地裁で裁判が続いています。
■ 犯行で使っていたマニュアル「一撃講習」
取材には、犯行で使っていたあるものを持参。
それが「一撃講習」と題するマニュアルです。
初めてホストクラブにくる女性客から大金を脅し取る方法を『一撃講習』と名付け、ホストたちに教え込むために作ったものです。
【恐喝罪などで有罪 ホストクラブ元副店長】「当時、グループ内で評価軸もあんまりなかったのでその分、見えるような努力をした人が勝ち、出世するみたいなシステムやったんです。なんで、率先して僕が教育しますと」
■女性客から大金を脅し取る方法『一撃講習』
一体、どのようなものなのでしょうか。
【恐喝罪などで有罪 ホストクラブ元副店長】「かなり強い文言で書いてるんですけど、なんて言うんですか…未収(売掛金)させて通ってもらうまでのロードマップみたいな感じになっています」
■一撃講習が指南する方法とは ホストの知識がない女性がターゲット
「一撃講習」では、こう順序だてて指南していました。
1.まず、マッチングアプリでターゲットを絞ります。条件は20歳以上で昼間に仕事をしているホストの知識がない女性。
【恐喝罪などで有罪 ホストクラブ元副店長】「恋愛観が成熟してない女性の方が、刷り込みやすいというか、初めに教えられたことを『そうなんだ』と人間思うと思うんで。そういうような方が理想であるってということです」
2.アプリ経由で知り合い好意を抱かせて交際した後、「同伴してくれたら遅刻の罰金を免れる」などと嘘の説明をして女性をホストクラブへ。
3.その後、正常な判断ができなくなるまで酔わせて高額なシャンパンを注文させる。
4.その状態の女性に対して膨れ上がった飲食代金を返済する案として以下を提案。
▼キャバクラや風俗店で働くこと
▼消費者金融での借り入れ
■入念な手口「『自主的に入っている証拠』になるため建物の中に1人で入ってもらう」
【恐喝罪などで有罪 ホストクラブ元副店長】(Q.恋愛感情を抱かせる営業について)「良くないでしょう。きもいですよ、普通に。やっていることは。大金を稼ごうと思ったらグレーなところを渡っていかないといけないんかなと」
マニュアルには犯行が発覚しないため、入念に練られた手口まで書かれていました。
【マニュアルより】「(消費者金融の)建物の中には1人で入ってもらう。自主的に入っている証拠になるため。これはカメラをあとから見たときに自主的に入っている証拠になるため」
そして、建前上は「彼女」だった女性客を、最後はこうあしらうそうです。
【恐喝罪などで有罪 ホストクラブ元副店長】(Q.フェードアウトとは?)「『一撃』の定義が(常連客になる)見込みがないじゃないですか。その子にいてもらっても困る、LINEするだけ手間、仕事が増える。色々言い訳を使って徐々に距離を離していく」
一方で、副店長は新人ホストにこんなことも教えていたそうです。
【恐喝罪などで有罪 ホストクラブ元副店長】(Q.どういうことを大切に教えていたのか)「一番は本当に感謝の気持ちを忘れるみたいな真逆は逆みたいなところなんですけど」(Q.誰への感謝?)「お客様への。それが一番、講習しました」
感謝の気持ちを忘れて女性客からあの手この手で搾取する実態。
こうしたホストクラブを巡るトラブルは相次いでいて、去年、警察への相談件数は3年前に比べて700件以上も増加しています。
■娘がホストにのめり込み半年で4500万円ほど使い込む
【ホストにのめり込んだ娘の母親(50代)】「本当に信じられないですよね。『えっ!?』みたいな感じで私にしたら、『何が起こったの?』みたいな感じで」
この女性の娘は大学生だったときにホストにのめり込み、親族の相続で得た家のお金をたった半年で4500万円ほど使い込んだといいます。
【ホストにのめり込んだ娘の母親(50代)】「(通帳の)出金を見たら、毎日のように20万、30万、15万、20万、みたいな感じだからそれこそシャンパン入れてみたいな感じもシャンパンタワーみたいなにしたら、もう2、300万ですよね。(娘の)気持ちを利用してる。恋愛感情を利用している。うちの娘が違うお店にちょっと行こうとしたら(ホストから)『なんでそっち行くねん』みたいなガーッと『鬼LINE』が来るみたいなことを言ってたから」
家族がホストクラブに通うのをやめるよう説得し、いまは行っていないそうですが、この一連の出来事がきっかけとなり…
【ホストにのめり込んだ娘の母親(50代)】(Q.いま、娘さんはお仕事は何を)「風俗系でアルバイトしてるみたい。ショックですよね本当に。何のために育ててきたみたいな感じですよね」
■「ホストっていうのは人間として終わっている」
後を絶たなない悪質ホスト問題。
「一撃事件」を指南した元副店長は二度とホストの仕事には関わらないとしたうえでホストの闇について…
【有罪判決受けたホストクラブ元副店長】(Qホストが果たす社会的な役割は?)「ないと思いますけど。(ホストクラブは)無くなっていいと思います。(Qホストは不要?)僕はそう思いながら働いていました。ホストっていうのは人間として終わっていると思っているので」
”悪質ホスト”被害がなくなる日はくるのでしょうか?
■今月末から風営法が改正 ”色恋営業”の一部”やスカウトバック”も禁止に
深刻な被害が社会問題になっている悪質なホスト問題。今月末から風営法が改正されて、取り締まりが強化されます。
ホストが「売上トップになれないと会えなくなる」と言わば、恋愛感情を利用して客に飲食をさせる、いわゆる”色恋営業”の一部が禁止となります。そして、ホストが料金を支払えなくなった客を風俗店に紹介し、見返りとして、紹介料を風俗店がホストに支払う、いわゆる”スカウトバック”も禁止となります。
悪質ホスト問題に詳しいNPO法人ぱっぷすの金尻理事長は、「被害者に”恋愛感情につけこまれている”と主張させる必要もあり、立証できるかが課題」とおっしゃっています。
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「これだけマニュアル化されてますから、ある種の闇バイトにも近いようなものを感じますよね。それからスカウトバックに関しては、別の事件でも裏に暴力団が関わっているっていうケースもありましたから、組織犯罪としても成立してしまうっていうところなんですよね。
なので、どこまで具体的にこういった言葉があったら、罰則っていうような具体例まで挙げられるかが、今後の改正法の肝だと思いますね」
【共同通信社 太田昌克編集委員】「今回、よく証言してくださったと思うんですよ。マニュアル、ロードマップ、これ完全な組織犯罪。しかもスカウトバックの有無はともかくやってることは人身売買ですよ。人権侵害どころの話じゃない。女性の一生、それから家族の一生、そして何よりホストに手を染める、悪いホストの方々の一生も狂わせる。なかなか実効性が難しいかもしれないけど、私たち自体がこういった行為自体が悪なのであるっていう悪の烙印を押す、そういう社会文化っていうのは広げていく必要があるんじゃないかと思いますね」
悪質ホストの手口がはっきりと見えてきました。いたちごっこにならないような対策が早急に求められます。
(関西テレビ「newsランナー」2025年6月9日放送)