関係者を含めた来場者数が500万人を突破した大阪・関西万博。
27日の「ソレってどうなの?」は、「万博エスカレーター“2列並び”定着」をテーマにお伝えします。
万博会場の人気スポット「大屋根リング」に向かうエスカレーター。
利用する人は片側を空けずに立ち止まっています。
なぜ“2列並び”しているのか聞くと、利用者は「止まってくれた方が景色見られるからいい。止まって写真撮りたい」「(Q.普段はどう?)子どもと一緒にいるときは歩かないが、1人のときは歩く」「2列で立ち止まった方が早い。東京に行ったとき、右側に乗っちゃったので必死になって上の方に上がってた。『止まってよ!』って思った」と話しました。
大阪駅の映像を見るとエスカレーターを歩いて上る人がいますが、万博会場右側では皆さん立ち止まっています。
実は万博会場の最寄り駅・夢洲駅では、「片側空け」防止の新しい機能を搭載したエスカレーターが登場しているそうなんです。
というのも、LEDライトを活用して立ち位置を照らしたり、段差を強調したりして、人が立ち止まりやすいように設計されているんです。
開発したメーカー「日立ビルシステム」に目的を聞くと、「多くの来場者が訪れる万博期間中、ホーム内の人の滞留を抑止し、スムーズかつ安全にエスカレーターを利用できる仕組みが必要だということで、LEDを活用して2列利用への誘導と安全面の注意喚起を行うエスカレーターを開発しました」という答えが。
その効果は出ているのでしょうか。
映像を見ると、多くの人が立ち止まってエスカレーターを利用している様子が分かります。
ところでこの「片側空け」は、いつから始まったのでしょうか。
エスカレーターの文化などを研究している江戸川大学の斗鬼名誉教授に教えてもらいました。
江戸川大学・斗鬼正一名誉教授:
エスカレーターの片側空けが始まったのは大阪は1967年ごろ。東京は1989年ごろ。1967年ごろというのは高度経済成長期、1989年ごろはバブル。どちらも「早いことが絶対的にいいんだ」という時代背景があった。
では万博で「2列並び」が定着しているのはなぜなのでしょう。
江戸川大学・斗鬼正一名誉教授:
混んでいることもあるが、すごく象徴的なのは、本当は良くないが後ろ向いたり横向いたりして乗っている方が大勢いる。エスカレーターって元々楽に上るとか、眺めを楽しむ、そういう道具だった。だから「昔のエスカレーターが復活した」という感じで私はとてもうれしい。
最近は転倒事故などを防ごうと全国各地でエスカレーターの安全な利用を呼びかけるキャンペーンが行われています。
27日朝、宮城・仙台市の地下鉄の駅でも、仙台市交通局の職員がエスカレーターで両側に立ち止まるよう呼びかけていました。
他にも、愛知・名古屋市では2023年10月から、政令指定都市で初めてエスカレーターで立ち止まることを条例で義務付けています。
「STOP」と書かれた看板を背負ったスタッフが、月に4日から5日程度、エスカレーターを立ち止まって利用するよう呼びかけるキャンペーンも行われていました。
市によりますと、この呼びかけなどで利用者の95%近くが立ち止まるようになったそうです。
さらに埼玉県でも、条例で「エスカレーターは立ち止まった状態で利用しなければならない」と定められています。
見ていくと各地で定着しつつあるエスカレーターの「2列並び」ですが、さらに広まるにはどうすればいいのでしょうか。
専門家は次のように指摘しています。
江戸川大学・斗鬼正一名誉教授:
日本社会全体、特に東京がそうだが、同調圧力が非常に強い。これを自分たちで自覚する、これがすごく大事。つまり高度経済成長期の「何でも早ければいい」という効率一辺倒、(今も)そういう社会が続いていて、ただ安全性ということだけでなく、自分自身、我々一人一人の問題だというふうに考えることが大事では。万博は非常に良い機会だと思う。
安全のためにもぜひ「2列並び」を自分事として考えていきたいですね。