北海道幌加内町の夏の景色、そば畑が…。


 絵本のような幻想的な一枚に。

 稚内市の夕暮れに荒れる海岸では…まるで洗練された絵画のよう。

 この心を奪われるような美しい写真の数々。

 風景写真家、鎌田光彦(みつひこ)さんの作品です。

 「みんテレ」でも過去に、北海道の「知られざる絶景」をたくさん紹介してくれました。

 「風景写真は、ただ撮って綺麗だったなと、1回見ただけでそこまで印象に残らず終わってしまう。私が目指すものとして、風景写真はアートでなくてはいけない」(風景写真家 鎌田光彦さん)

 普段は札幌市の職員として働きながら、風景写真家としても活躍。一枚の写真を撮影するために何度も現場に足を運び、奇跡の瞬間を狙ってきました。

 そんな鎌田さん、この春、大きな変化が…。

 「35年間近く勤めた役所を今回(早期)退職しました」(鎌田さん)

 35年間勤めた札幌市の職員を早期退職。これからはプロの風景写真家として、今まで以上に絶景を追い求めます。

 「(写真家として)商業的に成功するということ以上に、自分が本当に表現したいモノを一枚でも多く撮りたい気持ちが強い。どうしても(仕事しながらは)我慢できなかった」(鎌田さん)

 ということで、今回は「風景写真家・鎌田光彦が教える…知られざる北海道の絶景2025」をご紹介します。

 2025年で初めて撮影に密着したのは、3月。陸別町へ向かいます。

 「(Q:深夜3時ですが向かっている時点ではどうですか)きょうは可能性が非常に高いんじゃないかな。-15℃、よければ-20℃以下で(天気が)ピーカンってなったら、かなりの確率で出ます」(鎌田さん)

 冬の絶景を狙うのは、この日が今シーズンのラストチャンスです。

 「きょうの陸別は-11℃。まだちょっと冷え込みが弱い」(鎌田さん)

 札幌市から5時間。日本一寒い町「陸別町」。

 2025年だけで9回も訪れています。

 鎌田さんは、冬の北海道東部では過去にも多くの美しい絶景を撮影してきました。

 今回狙うのは、冬の自然現象「ダイヤモンドダスト」。

 条件は気温-15℃以下で、湿度も高く、さらに太陽光が強いこと。

 「-18℃になりましたね。めっちゃ良いぞこれは」(鎌田さん)

 温度と湿度、そして太陽。条件を満たしたこの日、果たして冬の絶景は撮影できるのか?

 「めっちゃでてる。これは大成功です、サンピラー」(鎌田さん)

 空気中に浮遊するダイヤモンドダストが、太陽の光を反射して光の柱のように見える現象「サンピラー」です。

 「(Q:これだけサンピラー出るのは珍しい?)もう今シーズンはこれ一回限り。今シーズンで最高です」(鎌田さん)

 冬の奇跡の一枚がこちら。タイトルは「樹氷に降り注ぐサンピラー」です。

 さらにこの日、周辺では美しいダイヤモンドダストも出現していました。

 「肉眼で見ても色がついている。今シーズン9回目ですがこれが一番」(鎌田さん)

 冬の撮影も終わり…5月。今シーズン2度目の密着は、これから撮影シーズンに入る「初夏の絶景」です。

 「きょうは室蘭に行こうと思っています。そこは10回以上行っている場所」(鎌田さん)

 札幌市から車で2時間の室蘭市。

 地球岬をはじめ、最近では工場夜景など気軽に楽しめる絶景が沢山あります。

 しかし、鎌田さんが狙うのは、なにやら山の中にあるようです。

 「途中からちょっと急な下りがあるので、そのあたりを気を付けながら」(鎌田さん)

 ロープが張られた山道を海岸に向かい、ゆっくりと下っていきます。

 山道と岩場を歩くこと30分、撮影スポットに到着。

 「室蘭の蓬莱門です。水位が多いときは腰まで来る。波が高いときは(撮影を)諦める」(鎌田さん)

 室蘭の隠れた絶景スポット「蓬莱門(ほうらいもん)」。

 マグマが冷えてできた岩が波により浸食、大きな門の形をした奇岩です。ここには引き潮の時にしか来ることはできません。

 この蓬莱門で撮影した奇跡の一枚がこちら。

 「(蓬莱門の)形が素晴らしい。波とかきれいに折り重なった岩とかがあり、被写体としては最高」(鎌田さん)

 さらに夜になると、蓬莱門は違う顔を見せます。

 「自然相手だとその日ごとに条件が全く違う。何回も通って、自分のイメージしたものを撮りたいですね」(鎌田さん)

 室蘭市から札幌市へ帰る途中、鎌田さんが立ち寄ったのはお気に入りのポイント。

 「新千歳空港から車で5分くらい。すごく光芒のきれいな場所」(鎌田さん)

 釣り人にはよく知られた、千歳市内の林の中を流れるママチ川。

 鎌田さんがこれから、夏の撮影で大切にしているのが自然の光です。

 そんなママチ川の奇跡の一枚がこちら。

 「車で走っているときに、ここの一部がすごく光り輝いて見えた。ここは!と思い慌てて降りていくと、光芒がきれいに差し込み幻想的な雰囲気が出ていた」(鎌田さん)

 続いて向かったのは…車で2時間半の旭川市。

 「就実の丘です。広大な丘陵地帯の奥に十勝連峰がきれいに連なっていて、いい景色だなと」(鎌田さん)

 地元では絶景スポットとしても知られている「就実の丘」。

 今回は撮影現場につくと…

 「(鎌田さんを)師匠と呼ばせていただいています」(風景写真家 西川文彬さん)

 鎌田さんを師匠と呼ぶのは、写真家の西川さん。

 10年前に鎌田さんの撮影に同行してから、風景写真の世界にハマりました。

 今では、北海道の期待の若手風景写真家です。

 この日は久しぶりに師弟揃っての撮影ということで、鎌田さんも撮影に気合が入ります!

 そんな就実の丘で撮影した奇跡の一枚がこちら。

 「よく狙うのは早朝と夕方の日が沈む少し前のタイミング。どこを見渡しても広大でいい景色が広がっている」(鎌田さん)

 さらにこの日は…美しい風景の中にうれしいお客さん。

 鎌田さんの前に現れたのは、エゾシカの群れ。

 ギリギリまで近づき撮影…逃げるエゾシカ。鎌田さん、シャッターは?

 「撮れた。(シカが)走り抜けるシーンなんか結構いい感じ」(鎌田さん)

 鎌田さんが撮影した奇跡の一枚がコチラ!

 美しい青と白の山並みに緑の大地、そして躍動的なエゾシカ。

 「(鎌田さんの風景写真は)私と違う画角で撮っている。勉強になります」(西川さん)

 夕日が沈むころ、撮影も終了かと思ったら…。

 「絵になるね。(トラクターが)耕して煙が立ち込めてる感じもいい」(鎌田さん)

 一見、よく見かけるような田園風景。それが奇跡の一枚に!

 トラクターの耕した跡が、美しい模様のアートに生まれ変わります。

 今後はプロの風景写真家へ…鎌田さんの目標は?

 「(今までは)年間70日くらい撮影に出ていたが、作品になるのは年間3、4枚。元気なうちにたくさん撮りたい。そのためにこういう生活にしました。講演会とか(写真関係の)仕事がなければ、全部撮影に全振りしようかなと思う」(鎌田さん)

 残された人生を「絶景写真」にかける…。

 奇跡の瞬間を追い求める写真家、鎌田光彦さん。今後の活躍も楽しみです。

北海道文化放送
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