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プレスリリース配信元:マンションリサーチ株式会社
■調査背景
不動産市場において、物件価格の構成要素にはさまざまな要因が存在しますが、その中でも「面積帯」は重要な指標のひとつです。特に中古マンションにおいては、単純な坪単価だけでなく、物件の総額(グロス価格)との関係も評価されることが多く、市場動向を読み解くうえで注視されるべきポイントとなります。一般的に、専有面積の大きいマンションは当然ながら総額が高額になる傾向があるため、購入者にとっては資金的なハードルが高くなります。その結果、需要は比較的手ごろな価格帯である中小面積帯の物件に集中しやすくなり、結果として「坪単価」は小規模な物件のほうが高くなると言われていました。これは、面積が狭いほど一坪あたりの価格が割高になりやすい、という現象として説明されることも多いです。
しかしながら、最近の東京都23区における中古マンション市場に目を向けると、この従来の常識とは異なる動きが顕著になってきています。とりわけ、2021年を境に、大型面積帯(80平方メートル 以上)の物件の坪単価が急上昇するという現象が観測されています。今回は、東京都23区の中古マンション市場における面積帯別の価格推移を詳しく分析し、その背景や今後の展望について考察していきます。

グラフ1に示すとおり、本分析では、東京都23区内の中古マンションを以下の3つの面積帯に分類して坪単価の推移を比較しました。
・50平方メートル 未満(小規模)
・50平方メートル 以上80平方メートル 未満(中規模)
・80平方メートル 以上(大規模)
グラフ1東京都23区:マンション面積帯別 成約坪単価

出典:福嶋総研
これらのデータを2020年から2025年初頭まで時系列で追跡したところ、特筆すべき変化が2021年中盤以降に生じていることが確認できます。
2021年初めまでは、これら3つの面積帯で大きな坪単価の差は見られませんでした。ところが、2021年の半ばから状況が一変します。80平方メートル 以上の大規模マンションの坪単価が急上昇し、他の面積帯を大きく引き離すかたちで高騰し始めました。この現象は、東京都23区全体で広く観測されており、特定のエリアに限らない市場全体の構造的な変化であると考えられます。
コロナ禍と不動産市場の構造変化
この急激な価格変動が始まった2021年中盤というタイミングは、新型コロナウイルス感染拡大が社会経済に大きな影響を与えていた時期と重なります。とくにコロナ禍によって在宅勤務が広く普及し、生活様式が変化したことにより、住環境に対するニーズも大きく変容しました。これまでは職場へのアクセスを重視していた多くの層が、広い住空間や快適な居住環境を求めるようになり、都心部であっても広い間取りを有するマンションへの需要が一気に高まったのです。これにより、特に80平方メートル 以上の大規模物件が新たな評価軸で注目され、価格が高騰する要因となりました。
都心5区の特異性と価格上昇の顕著さ
さらに分析を進めると、千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区といった都心5区における傾向は特に顕著であることがわかります。グラフ2では、これらのエリアに限定した場合の坪単価推移を示しています。グラフ2:東京都都心5区 マンション面積帯別 成約坪単価

出典:福嶋総研
元々、都心5区では希少性の高さやブランド価値の観点から、大型物件の価格が高水準であったことは周知の事実です。とはいえ、2021年以降の価格上昇はそれまでのトレンドを凌駕するスピードと規模で進行しており、2025年1月から3月にかけての平均坪単価は、ついに1,000万円に迫る水準にまで到達しています。
この背景には、国内外の富裕層による都心物件への強い投資意欲、円安による海外マネーの流入、さらには国内金利の長期低下による資産移転など、複数のマクロ経済的要因が絡んでいると考えられます。

グラフ3:東京都都心5区以外の区部 マンション面積帯別 成約坪単価

出典:福嶋総研
一方で、グラフ3に示されているように、都心5区を除くその他の23区においては、価格上昇のスピードと規模はやや抑えられています。80平方メートル 以上の物件は都心と同様に値上がりしていますが、その上昇幅は限定的で、坪単価は都心部ほどの水準には達していません。これにより、都心と郊外のマンション価格の「二極化」がより鮮明になっていることがわかります。
この価格の二極化は、単に物件の価値だけでなく、そこに住まう層やライフスタイルの違い、さらには資産形成の手段として不動産を捉える意識の差によっても生じていると考えられます。

今後もこのような二極化傾向は継続する可能性が高いと見られています。とりわけ、東京都心部ではインフラの高度化や再開発の進行により、今後も資産価値の高い物件への注目度が高まると考えられます。また、海外投資家による都心物件への需要も継続しており、この動きが価格を支える要因となり得ます。
一方で、金利の動向や税制改正など、政策的な変化によって需給バランスが崩れる可能性もあるため、市場の動きには今後も注視が必要です。

東京都23区の中古マンション市場においては、これまでの常識を覆すような価格の動きが見られています。とくに80平方メートル 以上の大規模マンションが高騰しており、その傾向は都心部でより顕著です。これは、コロナ禍以降の生活様式の変化や、富裕層・投資家の動向などが複合的に作用した結果といえるでしょう。
今後もこのような傾向が続くかどうかは予断を許しませんが、面積帯ごとの価格変動を的確に捉えることは、不動産購入・売却において極めて重要な視点となるはずです。住宅の「価値」は単なる広さだけでなく、立地、需要、希少性、そして時代背景によって大きく左右されることを改めて実感させられる結果といえるでしょう。
筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
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【マンションリサーチ株式会社について】
マンションリサーチ株式会社では、 不動産売却一括査定サイトを運営しており、 2011年創業以来「日本全国の中古マンションをほぼ網羅した14万棟のマンションデータ」「約3億件の不動産売出事例データ」及び「不動産売却を志向するユーザー属性の分析データ」の収集してまいりました。 当社ではこれらのデータを基に集客支援・業務効率化支援及び不動産関連データ販売等を行っております。
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代表取締役社長: 山田力
所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
設立年月日: 2011年4月
資本金 : 1億円
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