5月21日夕方、長野県須坂市で走行中の長野電鉄の車両に強風で飛ばされた農業用のパイプ製の小屋が衝突し、乗客3人が死傷した事故で、国の運輸安全員会の調査官が現地調査に入った。また、気象台も現地調査を行い、21日午後5時40分から50分にかけて、現場周辺で発生した突風の種類はダウンバーストまたはガストフロントの可能性が高いと判断したと発表しました。

(記者リポート)
「午前11時30分です。運輸安全委員会の調査官が長野電鉄の事務所に入っていきます」

昼前、須坂駅近くにある長野電鉄の事務所に入った国の運輸安全委員会の鉄道事故調査官。21日の事故を受けた現地調査です。

事故があったのは長野電鉄の信州中野発長野行きの3両編成の普通列車です。

21日午後6時前、須坂市の日野駅の手前を走行中、強風で飛ばされたとみられる農業用のパイプ製の小屋が先頭の車両に衝突しました。

この事故で長野市の会社員の56歳男性が死亡し、男性2人が頭に軽いけがをしました。

3人は、先頭車両で割れた窓ガラスの近くにいたということです。

亡くなった男性は、通勤のため毎日、長野電鉄を利用していたということです。

知人:
「電車通勤だった。朝早く行ったり、毎日リュックしょって通っていた。まさか…。真面目で、仕事と少し車とで生真面目な人だったから」

(記者リポート)
「事故があった線路近くには、きのうまで農機具を覆うように小屋が立っていたということです」

近所の住民によりますと、線路脇には、最近、パイプとトタンなどで作られた小屋があったということです。

警察も、その小屋が風に飛ばされ、列車と衝突したとみて調べています。

近所の住民:
「トラクターが雨でぬれるからやった(建てた)んだね。屋根は両端がトタンで青いシートで巻いてあった。あれはだめだ、飛んじゃう。(きのうは)空が変わってきて、何かと思ったら雨と風がすごかった」

風にあおられながら打ち付ける激しい雨。こちらは、事故が起きたのと同じ時間帯の須坂市内の様子です。

当時、須坂市を含む県北部には「竜巻注意情報」が出されていました。

長野電鉄によりますと、一時、全線で運転を見合わせ、事故に遭った列車も須坂駅を4分遅れで発車したということです。

22日は、気象庁の機動調査班が現場を訪れ、当時の状況を調査しました。

気象庁機動調査班・渡辺記秀さん:
「当時は大気の状態が不安定で雷もなり、竜巻注意情報も発表になっていて、竜巻や激しい強風が起こりやすい状況だった。今のところ(ほかの)被害の状況は見られないが、これから近くに住む方に当時の状況を聞き取り調査して、そういったところからできる限り推測したい」

その後、気象台は、21日午後5時40分から50分にかけて、現場周辺で発生した突風の種類はダウンバーストまたはガストフロントの可能性が高いと判断したと発表しました。その強さは風速約30m/sと推定されるとしています。

その根拠について、次のように説明しています。
・突風発生時に活発な積乱雲が付近を通過中であった。
・渦の目撃など、竜巻を示唆する情報が得られない。
・突風は比較的短時間(1~10 分)および比較的長時間(10 分程度)であったという証言がそれぞれ複数得られた。
・突風は強雨またはひょうを伴っていた。

ダウンバーストとは、積乱雲から強い風が吹き下ろす現象です。ガストフロントは積乱雲からの下降気流の先端と周囲の暖気の間で形成される前線のことです。

また、国の運輸安全委員会の調査官も現地調査に入り、長野電鉄への聞き取りや現場周辺の調査を進めています。

鉄道事故調査官・小沢隆之さん:
「事実情報を一つずつ丁寧に集めて、真実が何か、発生原因が何か、突き止められるように調査したい」

長野放送
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