皆さんは2019年に31歳の若さで亡くなった鹿児島出身の音楽アーティスト、wowakaをご存じでしょうか。

現代の音楽シーンを彩るAdoやYOASOBIといったアーティスト達はyoutubeやニコニコ動画など、インターネットでの活動がきっかけでメジャーデビューにつながりました。

そんなネット発のアーティストの先駆けとして活躍したのが鹿児島出身のwowakaです。

死後6年が経過した今も、多くの人の心を震わすwowakaの足跡を、関係者の証言とともにたどりました。

県立鶴丸高校。

校内の図書室に、卒業生の関連書籍を集めたコーナーがあります。

その中の1冊。

「wowaka歌詞集」。

wowakaが世に送り出した曲の歌詞を全て掲載した1冊で、2024年に出版されました。

在校生たちが手に取ってはwowakaが卒業生だったことを知り、驚きの声を上げると言います。

wowakaは2009年5月、音声合成ソフト・ボーカロイドを使ったオリジナル楽曲を動画投稿サイト「ニコニコ動画」に投稿し、ボーカロイドプロデューサー、いわゆる「ボカロP」として活動を開始しました。

独特の言葉づかいで、恋愛に振り回される少女の心情を歌った『裏表ラバーズ』や…明るい曲調の中にどこか孤独を感じさせる少女を歌った『ローリンガール』などで若者たちを中心に人気を集めるとー、4人組バンド・ヒトリエを結成し、ボーカルや作詞作曲を担当。

2014年、メジャーデビューを果たします。

今でこそ珍しくないネット発のアーティストのメジャーデビューですが、当時はまだ、そんなアーティストはごく少数。

wowakaはその先がけと言える存在でした。

高校時代までを鹿児島で過ごし、大学進学を機に上京。

本格的な音楽活動を始めたwowakaの活躍は、当時、家族にとっても驚きの出来事でした。

wowakaさんの母親
「(wowakaの)高校時代の思い出と言えばバンド活動しか私も記憶がないくらい。自分はギターを弾いて、ボーカルは別の人がやっていてという感じ。もうとても信じられない。(wowakaは)人前に出るのは本当に苦手。自分の思っていること、考えていることを伝えたいという気持ちがすごく大きかったのかなと今は思う」

順調に活躍を続けていたwowaka。

しかし、そのときは突然やってきます。

2019年4月。

急性心不全でwowakaはこの世を去りました。

平成から令和に、時代が切り替わろうとするさなかの訃報。

31歳でした。

亡くなる数日前、彼のツイッターでの最後の呟きとなった『令和きれいだー。』の投稿。

さながら墓標のごとく、そこには多くのファンやアーティスト仲間から彼の死を惜しむ声が寄せられました。

しかし、彼が亡くなっても、遺した作品が消えるわけではありません。

ボカロPとして、あるいはヒトリエとして作った楽曲の全ての歌詞を掲載した歌詞集が出版されます。

wowakaさんの母親
「wowakaが亡くなって2年くらいしてから、どうしても(歌詞集を)残してほしいなという気持ちが私の中にあって、彼が思っていたことがちゃんとそこ(歌詞)に残っている」

KADOKAWA・熊倉由貴さん
「『本を出せそうな文才のあるボカロPって誰だろうね』と雑談的に話していた時があって、そのときに友人が『本当はwowakaさんなんだけどね』と言ったことがあって。ひょっとしたら歌詞集ならできるんじゃないかしらと。『wowakaさんのお母様も歌詞集の出版を希望されていて』という話を聞いて。すごくメールを3度見くらいして震えているという状況に」

遺族と出版社、双方の思いが一致して生まれた「wowaka歌詞集」。

「wowakaさんと出会えてよかったです」

そうメッセージを寄せたのは、wowakaと同時期に「ボカロP」として活動し、メジャーデビューを果たしたハチです。

現在は、米津玄師の名前で活動しています。

現在の音楽シーンを彩る様々なアーティストたちのメッセージも寄せられ、歌詞集からはwowakaが音楽史に残した影響の大きさが伺えます。

KADOKAWA・熊倉由貴さん
「『こういう本が出るよ』という告知の段階からSNS上などで熱いコメントがたくさんあって、『(歌詞集と)一緒に桜を見に行ったよ』と写真を投稿されている方もいらっしゃって、カバーが(wowakaさんの)写真になっていることもあって、この本が一種、wowakaさんであるみたいに認識して、色んなところに連れて行っている方がいらっしゃるのがすごくうれしい」

さらに2024年11月には、新たな展開も。

生前、wowakaが歌った未発表音源を元に、残されたヒトリエのメンバーたちがアレンジを加えた新曲、『NOTOK』を発表しました。

wowakaが亡くなって、6年余りがたちました。

それでも、あるときは誰かの「歌ってみた」動画で、あるときはスマートフォンゲームの収録曲として、あるときはふと手に取った1冊の本を通じて彼は生き続けています。

wowakaさんの母親
「彼をそのまま見ることはできないですけど、曲だったり歌詞だったりに彼の生きた証、彼の魂が残って生き続けてくれるのかなと思うので、やはりいろんな方に聴いていただきたいし、見ていただきたいと思う」

wowakaが残した作品の数々はきょうもどこかで、誰かの心を震わせ続けています。

※記事で紹介したwowakaさんの関連動画です。

・ヒトリエ『センスレス・ワンダー』MV / HITORIE - Senseless Wonder
https://www.youtube.com/watch?v=o5VQbrrrpgs&list=OLAK5uy_nWv0saPWa2lbrCXnHMwdw_vVTkDPW4Teo&index=11
・ヒトリエ 『コヨーテエンゴースト』 / HITORIE - Coyote and Ghost 
https://www.youtube.com/watch?v=W9LBQZtFrvE&list=OLAK5uy_nWv0saPWa2lbrCXnHMwdw_vVTkDPW4Teo&index=28
・ヒトリエ『NOTOK』
https://www.youtube.com/watch?v=w-GC2rUFpjA&list=OLAK5uy_nWv0saPWa2lbrCXnHMwdw_vVTkDPW4Teo&index=12

鹿児島テレビ
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