「コメは買ったことない」発言からわずか3日。急転直下の辞任劇となりました。
21日午前8時前、首相官邸に入る際、腕を直角に曲げあいさつをした江藤拓農水相。
「(話すのは)後ほど。(Q.今日辞任されるということで?)後ほど」と言い残し、石破首相のもとへ。
その15分後、再び官邸のエントランスに現れた江藤氏は、どこか少し口角が上がっているようにも見えました。
江藤前農水相:
ただいま石破内閣総理大臣に辞表を提出してまいりました。今、国民の皆さま方がコメの高騰に大変ご苦労されている、そういった中で、所管の大臣として極めて不適切な発言をしてしまった。
自分が今、農政のトップを務めることは適切でない。
そう語る一方で、米価格高騰に向き合った仕事ぶりについては、「この7カ月間あまりはこれまで経験したことないくらい懸命に働いた」と自画自賛するようなひと幕も。
大臣辞任の発端となったのは、3日前の講演での「私はコメを買ったことがありません正直。支援者の方々がたくさんコメをくださるんですね。まさに売るほどあります、我が家の食品庫には」との発言でした。
米の高騰に多くの国民が苦しむ中、「コメを買ったことがない。売るほどある」と発言。
江藤氏の釈明は世間の批判が大きくなるにつれ、変化していきました。
この発言が報道された19日の昼ごろ、発言の真意を問う報道陣に対し、「(私自身が)定期的にお米は買っています。やっぱり講演になると、もうなかなか会場も盛り上がっていたので、ちょっとウケを狙って強めに言いましたが、売るほどというのはない。ないというのが妻からの話」と述べ、講演での発言は“ウケ狙い”だったと説明。
そして、記者からの「発言について撤回の考えは?」という質問に対し、発言を撤回せずに“修正”するとしたうえで、自身の進退や責任を問う記者に怪訝な表情を浮かべた江藤氏。
しかし、風向きは大きく変わります。
記者の質問から1時間半後、発言の撤回を表明。
そして、この日の夕方、注意を受けていないとした石破首相のもとへ。
江藤前農水相:
(コメ買ったことない発言は)大変不適切であると(首相から)大変厳しくお叱りをいただきました。
そして進退に関する受け止めもこの日の昼とは一変します。
江藤前農水相:
私も総理のご意向で辞職すべきだと言われればそうするつもりで官邸にまいりました。しかし、総理と官房長官からは“引き続きしっかりやれ”と。
しかし、波紋は広がり続けます。
一夜明けた20日になっても。
「夜になってYouTubeであるとかSNS系を朝明るくなるまでずっと見てました。国民の皆さま方がいかに憤慨されているのか、どれだけ怒っておられるのかということを」と、夜通し、自身に関するニュースを見続けたといいます。
その後、臨んだ農水委員会。
自らの“米は売るほどある”発言について、「私、言い訳はしたくないんですが、宮崎ではたくさんいただくと“売るほどある”とよく言うんですよ。ですから、宮崎弁的な言い方ではあったんですけども」と釈明しました。
「売るほどある」は出身地である宮崎の方言だと釈明。
立憲民主党・田名部議員:
国民いま苦しいわけですよ、ウケ狙いって…全然面白くないですよね。どこかウケると思ったんですか?
江藤前農水相:
確かにウケる話じゃないですよね。全くピント外れだったと思います。
釈明を繰り返すものの窮地へと追い込まれていった江藤前農水相。
野党からは辞任要求も。
国民民主党・榛葉幹事長:
ふざけるなって話ですよ。国民感覚、生産家の思いがわからない農水大臣は即刻辞めるべきだ。
20日の午後、野党側は石破首相に対し江藤氏の更迭を求めることで一致。
21日の党首討論までに動きがなければ、不信任案を出す構えを見せていました。
そして迎えた21日朝、石破首相に辞表を提出した江藤氏。
事実上の更迭になりますが、「今後、私が引き続き、このこと(コメ高騰対策)のトップを務めることが適切であるかといえば、私自身、私ではいけないのではないかという判断を自分自身でいたしました」と述べ、あくまで自ら決断したと強調する江藤氏。
辞任を決めたタイミングについては、「きのう参議院の委員会がありました。法律(法案)の採決が終わりました。あと1本残ってるんですが。そして委員会室を出てですね、車に乗ったタイミングぐらいで、あっこれが最後だなと」と述べました。
そして、米は買っていることをアピールしたのか、「私が先週買った米もですね、税込みで3480円だったんですよ。安い米も備蓄米の放出によって一定程度は進んでいることは事実でありますから」といった発言をしました。
この辞任劇に江藤氏の地元・宮崎県では…。
宮崎市(80代):
がっかり。もっとしっかりしてほしかった。もう少し私たちのことを考えてくれれば、あんな発言しなかった。
日向市(80代):
消費者みんなを裏切ったことかな。どうしてあんな言葉が出るのかなと思う。
江藤氏の後任となる農林水産相には、自民党の農林部会長を務めた小泉進次郎元環境相が内定しました。
小泉新農水相:
総理からは農水大臣に任命すると、そういった話を頂いた。国民の皆さんにこれでコメがちゃんと買える、安心感を持って足りない不安とかそういうことがないように。私の中では、今私がやらなければいけないことはとにかくコメだと。もう米担当大臣だというような、そういった思いで集中して取り組んでいきたい。
江藤農水相が辞表を提出した21日、午後3時から始まった党首討論。
米価格の問題についても論戦が交わされました。
石破首相:
コメについては、新しい農林水産大臣のもとで必ずコメ(の価格)を下げるという事をやっていきますが。
小泉新大臣のもとで必ず米価格を下げると意気込んだ石破首相。
しかし…。
野田代表:
コメどうやって安くするか(具体的な)話は全くなかったですけども。
石破首相:
コメならコメをどう下げるか、どうやって一つ一つの品目を下げていくかということについて我々自民としてはひとつひとつ精緻な議論をして物価の上昇を止めてまいります。
具体策を示さない石破首相に国民民主党の玉木代表も「新しい大臣のもとコメの値段、必ず下げるとおっしゃいました、どのように下げるのか。いつまでに5kg、いくらまで下げますか?明確にお答えください」と追及。
石破首相:
なぜ高いのかと、わからなくて下げることはできません。おまじないやっても仕方がないし、気合で下がるわけでもないので。コメは3000円台でなければならない。4000円台などということはあってはならない。一日でも早くその価格を実現する。
国民民主党・玉木代表:
5kg3000円台に下がらなければ総理として責任とりますか?
石破首相:
これは責任とっていかねばならないと思います。下げると申し上げているわけですから。