日本企業がヨーロッパのプロサッカーチームを経営。
人材の交流など日本との懸け橋になりながら、黒字転換を果たしました。
日本から1万3000km離れたベルギーのシントトロイデン。
人口わずか4万人の街にあるサッカークラブが、サッカーの本場ヨーロッパで注目を浴びています。
実はこのシントトロイデンというクラブは日本企業DMMグループが経営権を持っているのです。
サッカーの本場でもあるヨーロッパで、日本企業として初めて1部リーグのクラブオーナーになりました。
クラブのCEOを務めるのは立石敬之氏。
チームの強化からスポンサー対応まで、多岐にわたって活動しています。
シントトロイデン・立石敬之CEO:
フットボールで言うとヨーロッパが本場ですが、そこで私たち日本人も力を十分発揮できるんだというのを見せたいという野心とか、そういった夢がありまして、そこに対する挑戦をする人たちを応援するプロジェクトなので「ここから世界へ」。スローガンを掲げてこっちにやってきました。
「ここから世界へ」というビジョンの下、主に3つの面で新たな可能性の架け橋となっています。
まず、DMMグループが経営権を取得してから多くの日本人選手が在籍するようになりました。
日本代表の遠藤選手、冨安選手、鎌田選手らはこのクラブでの活躍が評価され名門クラブへとステップアップ。
立石CEOは「(スカウトは)増えましたね。(1試合)平均大体30から40クラブぐらい。イングランド、フランス、イタリア、ドイツ、スペインから来ます」と話します。
これまで多くの選手を強豪クラブへ送り込むことで、移籍金での収益はもちろん、日本人選手全体の評価を上げることにも成功しています。
また、シントトロイデンでは選手だけでなく日本人のコーチやトレーナー分析スタッフらが在籍。
育成組織の責任者も日本人が務めています。
選手だけでなくクラブを支える優秀な人材においても、ヨーロッパへの架け橋となり拡大を目指しています。
シントトロイデン・立石敬之CEO:
日本がワールドカップで勝とうと思うと国の総合力が問われていると思いますので、監督だけがいいとか、選手が成長しているのすごく大事ですけど、やはりその周辺のスタッフがやっぱり世界で戦えるレベルに引き上げられるかなっていうのもありますし。
そして経営においても日本企業ならではの強みがあります。
シント トロイデンの収入の柱はベルギーでは類を見ない、130を超える日本のスポンサーからの収入。
シントトロイデン・立石敬之CEO:
私たちシントトロイデンの特徴はここにも営業チームがいますけれども、日本にもマーケティングチーム、広報チーム、営業チームいまして、2本柱で両輪で動いてます。これほど明確に日本のチームを持っている、私たちの言うマーケティングチームをしっかり稼働させている組織っていうのは(ベルギーに)ないと思いますので。
選手の移籍金を収益源とするクラブが多いものの、成績にも左右され先が不透明な部分も。
しかし、シントトロイデンは安定したスポンサー収入によりベルギーリーグにおいても数少ない黒字チームの一つになっています。
シントトロイデンのサポーターからは「いい感じです。健全な経営ができています」「もう少し投資してほしいが、全体的に安定はしています」といった声が聞かれました。
実はホームスタジアムも2年前に長野県の「大王わさび農場」がネーミングライツを取得。
「大王わさびスタイエンスタジアム」となりました。
4月に現地で開催されたジャパンフェスではわさびを取り扱ったブースを出店。
クラブが企業の海外進出や日本文化の架け橋にもなっています。
さまざまな形の交流を行うチームをベルギー王国・エヴラー駐日大使も「指導者やクラブスタッフの人材交流にはとても価値があります。お互いのことと、両国の理解を深めることができるし、両国のメンタリティー、文化、仕事の取り組み方、プレースタイルや戦術を知ることができます色々な方面からベルギーと日本の距離を縮められる良い試みです」と高く評価。
日本サッカーの新たな可能性へ、シントトロイデンの挑戦は続きます。