秋の味覚といえば、サンマ。しかし、今年は宮城県内での水揚げがいまだにない。全国有数のサンマの水揚げ量を誇る女川町では、様々な業種に影響が出てきている。

女川駅前の商店街に店を構える鮮魚店。この日、店頭には北海道産の生サンマが並んだ。
1皿5枚のタイが500円なのに対して、この日のサンマの値段は1本400円。

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水揚げ遅れ…影響広がる

客:
サンマが入っても高いよね。身も細いし

平初鮮魚店 平塚俊明社長:
これでは誰も買わない。値段も高いし

50年以上、女川で店を続けてきた平塚さん。この時期、サンマの水揚げがないと町に活気が出ないという。

平初鮮魚店 平塚俊明社長:
女川にサンマが揚がれば、人もどんどん来る。早く来てもらいたい

今シーズン、県内で水揚げされたサンマはゼロ。
記録が残る1982年以降、初水揚げが最も遅かったのは2013年の9月11日で、今年はすでに1週間以上過ぎている。

女川魚市場 加藤實 社長
震災以降ずっとこういう状況が続いている。9月いっぱいは大変厳しい状況。毎年そういう状況が続いています。10月になれば量がまとまる。それに期待している

震災前は、本州一のサンマの水揚げ量を誇った女川。鮮度抜群で良質なサンマは女川の代名詞となり、町の発展を支えてきた。
女川魚市場は現在、サンマの不漁を受け、イワシやサバなどの漁船を呼び込むなど、水揚げ量の確保に努めているが、主力魚種であるサンマには遠く及ばないという。

女川魚市場買受人協同組合 石森洋悦理事長:
サンマはすごく裾野が広くて市場や買受人だけではない。町全体にサンマの水揚げは良い影響をもたらすので、それが止まることは、女川にとって大変な事態

“サンマの街”に会社をかまえる誇り

女川町浦宿浜で、鮮魚用発泡スチロール箱の製造・販売を行う、こちらの会社もサンマの不漁に頭を抱える。

渡邊商店 渡邊俊季社長:
これがサンマ用

うずたかく積まれた発泡スチロール。加工会社や個人宅に出荷する際、鮮度を保つために使用されるサンマの鮮魚箱。

渡邊商店 渡邊俊季社長:
今こんなことをやっているはずではない。今の時期は汗を出してみんなでわいわいやっているはずなんです

こちらの会社では、年間出荷量の約6割をサンマが占めている。

渡邊商店 渡邊俊季社長:
サンマの町なので、それに特化した町。我々も追随して商売してきた。代わりとなる魚が揚がればいいが、軒並み駄目なので、どうしていいか分からない

多い日には、1日2万ケース以上出荷するというサンマ。
長期間の在庫は、会社の負担も大きいとしながらも、減らすことは難しいという。

渡邊商店 渡邊俊季社長:
迷惑かけるわけにはいかないですから、大量に在庫していつなんどき出てもいいように、絶対物は切らさない、欠品は絶対しない、それで信用をいただいていると自負しているので、その対応をしていく

“サンマの街”に会社をかまえる誇り…今はただ、一日も早い水揚げと豊漁を願っている。

渡邊商店 渡邊俊季社長:
どう乗り切るか考えながら、魚が一日も早く揚がってくれることを願っている状態

去年、過去最低となった漁獲量。今年はさらに減少の見通し

専門家は、今年は親潮の勢力が弱く、三陸沖の海水温が平年と比べてもかなり高いため、サンマが近づけない状態が続いていると見ている。

宮城県水産技術総合センター 増田義男研究員:
しばらく漁場が遠いという状況が続くと思います。北海道の東の海域にサンマがやってくるのは、10月中旬という予想が出ています。三陸沖に来るのはさらに遅くて10月下旬以降にならないとやってこないと思います

サンマの漁獲量は、去年、過去最低となったが、今年はさらに漁獲量が減るとの見通しが出ている。
専門家は、サンマから別の魚への漁の見直しも含め、対応の検討を呼び掛けている。

宮城県水産技術総合センター 増田義男研究員:
去年は過去最低でしたけど、今年はさらに下回ると思います。しばらくこの状態は続くと思う。今年だけではなく、数年間は続く。逆にマイワシやサバの資源がかなり増えてきているので、可能であれば、資源を有効利用できる態勢を

(仙台放送)

仙台放送
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