「暑熱順化」という言葉をご存じだろうか。文字通り、暑さに体を慣れさせることだが、本格的な夏を迎える前に、鹿児島県さつま町の消防本部で行われている「暑熱順化」を目的としたトレーニングを取材した。
キーワードは「暑熱順化」
2025年5月14日。この日は鹿児島県内33の観測地点のうち26地点で最高気温が25℃を超えた。鹿児島市で26.4℃、県内で最も高いさつま町柏原では28.6℃を記録した。さつま町は2024年に最高気温38.1℃を観測するなど、県内でも夏場には高い気温が観測されることが多い場所だ。

そんなさつま町の消防隊員たちが4月からあるトレーニングを始めた。シャツ1枚でも立っているだけで汗ばむ暑さの中、隊員たちは重装備で、ランニングを行う。
実際に火災が起きた時と同じ格好で走る隊員たち。「暑熱順化」のためのトレーニングだ。
暑熱順化とは体を暑さに慣れさせること。運動などで汗をかく習慣をつけ、本格的な夏場になっても早く汗を出すことで体温上昇が抑えられるという。

本格的な夏を乗り切るため 早めに訓練
さつま町消防本部では、熱中症予防の一環で数年前からこの取り組みを始めた。
さつま町消防本部の伊尻成寿さんは「自分たち隊員が熱中症で欠けてしまうと活動に支障が出てしまうので、早い段階から暑さに慣れようということで、暑熱順化訓練が行われている」と、訓練の目的について話す。


ランニングの後は、はしごを使った救出訓練。
夏の火事現場では厳しい暑さの下、重いボンベを背負って消火や救助にあたらなければならない。


隊員たちはこれからやってくる本格的な夏を乗り切れるよう、トレーニングに励んでいた。
訓練を終え「めっちゃ汗かきました!」と話す隊員だが、常日頃鍛えている成果か、苦しい表情は見られなかった。

伊尻さんは「4月にも訓練をしていたので、1回目と比較すると体が慣れてきているかなと。暑いから火災がないというわけではないので、こういう訓練で体を慣らしていくのは大事。これからの夏本番に向けて災害に対応できるよう、消防本部一丸となって活動していきたい」と話した。

一般の人が可能なトレーニングも 今から暑さに備えを!
さつま町消防本部では、より特殊な暑熱順化が行われているが、私たちにもできることはあるそうだ。
一般的には30分程度のウォーキングやサイクリング、1回30分の筋トレやストレッチ、湯船にお湯を張った入浴などが効果的とされている。

暑熱順化には個人差があるものの、数日から2週間程度かかると言われているので、暑くなる前からできる範囲で余裕を持って暑さに備えたい。
(鹿児島テレビ)