北海道函館市でともに80歳の夫婦が人生の半分以上をラーメンづくりに捧げている。
店の屋号は「バスラーメン」。
移動販売に密着すると、地元で愛され続ける理由が分かった。
地元で愛され続ける「函館元祖バスラーメン」
チャルメラの音を響かせながら走ってくるのはキッチンカー。
「函館元祖バスラーメン」だ。

この車で移動販売を続ける丸山憲雄さんと妻の寿子さん。
ともに現在80歳だ。

「はい、塩できたよー」(寿子さん)

一番人気のメニューは、大きなチャーシューがのった函館名物の塩ラーメン。
製麺会社に特注した「もちもち中太麺」を、豚足や鶏ガラなどを6時間煮込んだスープでいただく。

「目玉飛び出るくらいおいしい。個人的な感想だけど(麺が)もちもちしてておいしいとしか言えない」(女の子)

夫婦が人生の半分以上を捧げたラーメン
二人がラーメンの移動販売を始めたのは、47年前。
最初は赤い色の小さな車だったが、「バスラーメン」と名付けた。

その後、念願だったバスを購入。
車内で食べられるようにしたかったという。

5年前、それまでのバスが古くなったので、長男がキッチンカーをプレゼントしてくれた。
現在の5代目「バスラーメン」だ。

ラーメンの仕込みはすべて家で行う。
「仕込みは見えないところが一番大変。これは誰にも分らない苦労だ。食べるのは5分か10分だけど、スープ取るにしても6時間、チャーシュー煮るにしても6時間かかるんですよ」(憲雄さん)

「こんにちは」(客の女性)
「おー、元気だったか」(憲雄さん)
「この間お菓子ありがとう。おばさんと2人で食べて」(客の女性)
「ありがとうな」(憲雄さん)
「おばあちゃんからもおみやげ」(寿子さん)
「ありがとう」(客の女性)
「何歳になったの?」(寿子さん)
「2歳です」(客の女性)
「おばあちゃん、8歳とマル(0)つくんだよ」(寿子さん)
「80歳だって!」(客の女性)

「今日来るかな?」 地域で愛されるバスラーメン
「娘が毎週水曜日になると『今日来るかな?』『今日来るかな?』みたいな。今日やっと来たもんね。(家)出た瞬間『(チャルメラ)鳴ってるー』って」(客の男性)
「行ったときに笑顔で迎えてくれて『今度いつ来るの?』って言葉がでるんですよ。『来週くるよ』『再来週いくよ』とか(言うと)頑張ってまた行かなきゃいけない。それが励みになって頑張っている。ただそれだけですね」(憲雄さん)
「作りたてのラーメンを提供できる、そこの玄関で作って渡すんだから、そういう面もお客さんがきっとおいしく食べていただいてるんだなと」(寿子さん)

休業日は不定期。
雨が強ければ休む。
営業はだいたい午後5時ごろから始まり、ときには隣町の北斗市に行くことも。

「ラーメン食べるな。今度大きくなったらな」(憲雄さん)
「子どもたちもお風呂に先に入っちゃってバスラーメン来るのを待ちました」(客の女性)

「もう食べていい?」(子ども)
「いいよ」(客の女性)
「いただきます」(子ども)
「助かります。ちょっと手抜きたいときに今日来る曜日だと思うとやっぱりちょっと期待して」(客の女性)

バスラーメンを走って追いかけてきたお客さんがいた。
「走った分だけチャーシュー入れました」(寿子さん)
「(Q:サービスですか?)いっつも。昔から」(走って追いかけてきた男性)
「ごめんね、走らせて。その分ラーメンおいしいと思う」(寿子さん)

「健康でなければお客さんの笑顔も見れないし、お客さんも嫌がりますよ。具合悪くてさ、嫌な顔で作ってる顔みたらさ、ラーメンもおいしくない。健康であればいつまでも続けたい」(憲雄さん)
「100歳までやるもん、アハハ」(寿子さん)

午後8時ごろ、この日の営業終了。
80歳の夫婦のバスラーメンは、きょうもどこかでチャルメラの音を響かせている。
