静岡県掛川市の病院で患者に対してわいせつな行為をしたほか、その様子を動画で撮影した罪などに問われた小児科医について、静岡地裁浜松支部は懲役7年6カ月の実刑判決を言い渡しました。
判決を受けたのは中東遠総合医療センター(掛川市)の小児科診療部長の男(44)で、2017年から2023年にかけて当時10代だった少女4人に診療を装って服を脱がせ胸や陰部を触ったほか、4人を含む10人に対して裸やわいせつ行為の様子を動画で撮影しました。
これまでの裁判で、撮影した動画は編集した上でハートマークや性的な内容のテロップを入れていたことがわかっていますが、男は撮影した目的について「診察の確認・記録のため」と話し、「文字や静止画だと必要な情報が入らなかったり、後から比較できなくなったりする場合があるため」と主張していました。
また、服を脱がせたことについては「着衣の上からだと細かい部分を判定できない」と述べ、胸を揉んだ理由に関しては「胸郭の進行を確認するため」などと正当性を訴えていました。
5月9日の判決公判で、地裁浜松支部の来司直美 裁判長は「自己の性的好奇心を満たすためと認められる」と指摘した上で「医療目的やそのための資料作成のためとは到底考えられない」と断罪しました。
裁判の中で、男は衣服を脱がせるなどした理由について「側弯症の経過を確認するため」と口にしていましたが、中には一度も側弯症と診断されたことがない被害者もいて、来司裁判長は「カルテ上も男人が側弯症を疑ったことやそのための検査を行ったことを示す記載は一切なく不合理」と述べたほか、胸を揉んだ行為についても「被害者の背後から乳房の膨らみ部分のみを執拗に揉んだり、乳首をつまんで弄んだりしており、胸郭のゆがみを確認する触診の方法としては不自然極まりない行為が多々認められ、診察目的でこれらの行為を行っていたとは到底考えられない」と認定しています。
その上で「男がもっぱら事故の性的好奇心を満たすために各行為をしたことが間違いなく認められる」と論じ、「性的自由の侵害程度の高いわいせつ行為を常習的に繰り返し、被害者や親が男に対して全幅の信頼を置いていることを利用して自身の性欲を満たすために本件各犯行に及んだものであり態様は極めて卑劣で悪質」と非難しました。
さらに、中には現在も心身の不調から通院を余儀なくされている被害者もいて、「信頼していた医師に裏切られたことにより医療機関への不信感を募らせていて、被害結果も重大。男は裁判でもっぱら診察目的であったなどと不合理な弁解に終始し、真摯な反省の態度は見られない」とした一方、計750万円の被害弁償を支払っていることや今後は医師として活動しないため同種の犯行に及ぶ機会がないこと、前科前歴がないことなどを理由に検察の求刑(懲役14年)を大きく下回る懲役7年6カ月の実刑判決を言い渡しています。
判決を受け中東遠総合医療センターの宮地正彦 院長は「当院の医師が刑事事件により有罪判決を受けたことは医療に携わる者として決してあってはならない事態であり、このような事件を当院の医師が起こしたことを大変遺憾に思っており、被害を受けられた方々ならびにご家族のみなさまには心より深くお詫び申し上げます。また、市民をはじめとする関係者のみなさまに対し多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを重ねてお詫び申し上げます」とのコメントを発表しました。
中東遠総合医療センターは男の逮捕を受け、再発防止に向けた取り組みを進めていますが、改めて第三者委員会を立ち上げて、病院側の対応について検証する方針を明らかにしています。
なお、男については判決内容を精査するとともに本人への事実確認を行った後、厳正に処分する考えで、処分内容については改めて説明の機会を設けるとしています。