岩手県盛岡市内には植物にまつわる地名がいくつかある。
その由来について、長年にわたり県内各地の地名について調査している奥州市出身の宍戸敦さんは次のように説明する。

宍戸敦さん
「戦後の新しくできた町名、特に植物に関する地名については全国的に見ても多い。盛岡市であれば『松園』『つつじが丘』『紅葉が丘』『月が丘』は代表的だと思う」

盛岡市内にある植物にまつわる地名で「つつじが丘」「紅葉ヶ丘」など植物が名前に入っている地名はあるが、「月が丘」の「月」と「丘」は植物とどういった関係があるのか。

「月が丘」は盛岡市の西側に位置する地域だ。
宍戸さんによると、昭和初期、現在の月が丘周辺の地域は未開拓の地だったという。

宍戸敦さん
「新しく施設を建てようと建設適地を探している時、辺り一面に月見草が咲いていた。『月見ヶ丘』と名前を付けるのも面白いと話題になった。その後この地域にどんどん人が増え、自治会の名前が『月が丘』になり、さらに昭和44年に『月が丘』が正式な地名となった」

「月が丘」の「月」は月見草が由来していた。
月見草は夏の夜に一晩だけ咲く花ということで「月を見る草」と名付けられたという。

かつての「月が丘」について70年以上この地域に住んでいる平野良司さんは、「『月見ヶ丘』と名付けられた当時は原野だった。原野には様々な植物と一緒に月見草が生えていたのではないか」と話す。

現在の「月が丘」は、かつて「観武ヶ原」と呼ばれた広大な土地の範囲に含まれていた。この開拓されていない原野に、月見草がたくさん咲いていたと考えられる。

続いては「松園」。名前の通り辺りにはたくさんマツが生えている。
盛岡市松園は住宅団地が広がる地域で、団地の造成前はその名の通りアカマツが多く生えていた。

宍戸さんによると、「『松園』の松は、ナンブアカマツが多く生えていたので、そこから『松園』という地名となった。しかし命名は、当時、住宅供給業務を兼務していた岩手県知事が命名したといわれている」という。

全国各地で栽培されているアカマツの中でもナンブアカマツは、岩手県産のもので品質がいいと言われていて、県の木にも指定されている。

松園地区自治協議会の吉田哲男さんは、「元々は、私の記憶では『松園』は山また山という感じだった。しかし、この『松園』は県内で初めての大型ニュータウンとして開発された、第一号だった」と話す。

この地域では1970年からニュータウンの開発が進められ「松園」という地名も、その頃に名付けられた。

松園地区自治協議会 吉田哲男さん
「松園ニュータウンができたとき、一つのシンボルマークとして(松を)たくさん植えたのではないか。松園の住民などで公園に松を植栽し、地域の景観づくりを行ったという話を聞いている。この松の間から岩手山がきれいに見えるので良い」

盛岡市内に多く残る植物の名が入った地名には、地域の歩みと植物の息吹を感じられる。

岩手めんこいテレビ
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