「手術の傷を人に見られたくない」といった悩みを持つ、がんを経験した人に旅館を貸し切って存分に温泉に入ってもらおうというイベントが、6月にあわら市で開かれます。自らもがんを経験した温泉旅館の女将の発案で実現しました。
あわら市にある「みのや泰平閣」は、1957年創業の温泉旅館です。6月7日にがん経験者とその家族や友人限定の貸し切りイベントが初めて開かれます。
きっかけは旅館の女将、美濃屋亜由美さん自身ががんになったことでした。「私自身ががんになり当たり前だったことが一変した。髪の毛が抜け落ち、体がやせ細り、体力もなくなって、温泉に入るとき人目を気にするようになった」と闘病を振り返ります。
温泉に入ることをためらうがん経験者は少なくないことから、美濃屋さんは「がん経験者同士なら互いの容姿を気にすることなく大浴場でくつろげるのではないか」と自身が通うがんサロンに相談し、実現することになりました。
最長1泊2日で食事まで楽しめるこうした取り組みは全国的にも珍しいそうです。サロン代表の牧野智恵さんは「銭湯を日帰りで貸し切るイベントはやっているところもあるようだが、温泉を貸し切るというのは今回が初めてだと思う。ましてや、あわら温泉で開催できるなんてとても嬉しい」と話します。
イベントは女性限定で、女湯を「がん経験者用」に、普段男湯としている温泉を「家族・友人用」と分け、それぞれがゆっくりと入浴できるよう配慮されています。
女将の美濃屋さんは「人目を気にすることなく、のんびりと体を伸ばして温泉に浸かって、くつろいでもらいたい」と話しています。
温泉以外にもオーケストラによるコンサートやがん相談コーナーなども予定されています。半日コース、1日コース、宿泊コースがあり、料金は2000円から。滞在中は何度でも入浴が楽しめます。予約は先着50人で、まだ若干の空きがあるということです。