4月27日、日本維新の会・梅村みずほ参院議員が離党した。

その理由として「ガバナンス不全」を挙げている。梅村議員は関西テレビの単独インタビューに応じ、その真意を語った。

■予備選は「現時点で今回のみ」岩谷幹事長の発言に「強い違和感」

【梅村議員】「(予備選を)ルール化するのではなく、なぜ1期目の私からスタートして、かつ『現時点で今回のみ』なんだろうと、非常に強い違和感を覚えました。ずさんな、制度設計にもなっていないようなトライアルで、議員の人生を懸けた戦いを左右するのは、あってはならないのではと」

維新は2016年の参院選から、大阪選挙区でずっと2議席を得ている。2025年の改選に向け、衆院に転出した東徹代議士会長の後任を選ぶため、維新は「党内予備選」を行った。

現職の梅村議員も予備選の対象となったが、敗れて公認の権利を逃し、8日後に離党届を提出した。

同じく予備選に出た広田和美大阪市議も離党し、後味の悪さが残った。

■予備選をルール化するの?しないの?

岩谷幹事長は4月9日の会見で、予備選について「現時点では、今回に限った措置と考えている」と発言した。

梅村議員は、これが離党の引き金になったと話す。

発言への反発は、別の議員にも広がった。

【大阪府内選出の維新国会議員】「岩谷の発言はアカン。予備選は参院選だけでなく、衆院選でもやらないと。今の執行部は、自分が予備選の対象になったら勝てる自信がないから言えないのだろう」

岩谷幹事長は27日、「発言を少し切り取られてネット等で流れている。他の選挙も併せての質問だから『今回限り』とお話しした。

同時に、『検証し大きな課題がなければ、3年後の参院選でもやらなければ、おかしい話になると思う』と申し上げている」と補足したが、広がった波紋は収まらなかった。

【梅村議員】「(2022年の)代表選のとき、自分も『予備選のルール化』を掲げて戦っているので、賛成。当然、衆院選でも首長選でもやるべきです。『ルール化をする』と明言していただいたら、離党はありませんでした。ルール化されたのなら、『梅村外しではない』となるが、『今回だけ』と言われると疑問符がついてくる。疑念を抱かれる選挙になってしまったという側面はあるのではないでしょうか」

■「腹に収めた」過去の処分に不満も

梅村議員は、過去に「党員資格停止処分」を受けたことがある。

2023年、「出入国管理および難民認定法」改正を巡る質疑で、スリランカ国籍の女性が施設収容中に死亡した事案についての発言が、「女性の尊厳を傷つける事実無根の発言」などと猛烈な批判を浴びた。

維新は発言内容ではなく、「党の指示に従わずに質疑したガバナンス違反」を理由に、梅村議員を処分した。

梅村議員は、「ハレーションが起こるかもしれないけど…」とためらいながら、当時のことを語り始めた。

【梅村議員】「確かに、私の質疑で至らないところがあった。1期6年の付託を受けているので、完遂するんだって思いもあり、色々と腹に収めながら処分に服していたわけです。私からすると、ガバナンスが崩壊していたのは党の方だったのでは。非常に苦しい処分だったんです。炎上したとき、最後まで党は委員の差し替えをしなかった。正式な命令もいただけなかった、という認識です」

梅村議員は当時について、批判を浴びた後に党の職員が、「この質問はしないように」「SNSのこれは削除して」などと伝えてきたため、議員の質問権に関わることを理由に「党の正式な命令を出してほしい」と求めたところ、最後まで命令がないまま処分されたのだ、と主張している。

■「世間の批判を浴びたから態度を変える」維新のガバナンス機能不全

筆者から見て、維新がとる対応が「世間の批判を浴びたから態度を変える」ように感じたことがある。

例えば、擁護から一転し辞職を迫った、兵庫県の斎藤元彦知事の一件もそうだ。梅村議員も、同じような印象を持っていたという。

【梅村議員】「維新のガバナンス不全の現象は、よく似通っています。私の処分、斎藤知事の問題、そして今回の予備選。細かくは違うが通底している。当事者の声は聞いているか、問題の根幹は何なのかを突き詰めて、適切なプロセスで判断しているかが問われている。理由を後付けして整えるのではなく、強い意思のもと判断したという、芯の強さが見えないと思っています」

■「今も大好き」維新復活に必要なもの

「当選したのは『維新の看板』のおかげ。私は今も日本維新の会が大好き」と語る梅村議員。

一方で、有権者に「維新は何をやりたい政党なのかが分からない」と言われたり、地方議員に「このままだと維新の旗は振り続けられない」と相談されたりしたという。

支持率が低迷し、地方議員の離党が相次ぐ維新の現状を、どう見ているのか。

【梅村議員】「維新というのは、強烈なカリスマのリーダーシップのもと、一致団結して1つの目標に向かっていた政党ではないかと思います。圧倒的なカリスマが不在になって現れた現象なのかもしれない。ベクトルがそれぞれ違うところを向いているのが、維新らしさを失っている1つの原因なのかもしれないですね」

■「維新の議員は採決の起立要員のようなもの」他の野党議員からも同情

かつて維新を引っ張った橋下徹氏や松井一郎氏は、もういない。

吉村洋文代表に新たなカリスマ性を持たせようとする議員もいるが、今のところ、そうはなっていない。

筆者は度々、他の野党の議員から「維新の議員は採決の起立要員のようなもので、かわいそうだ」という声を聞いた。

「次のカリスマ」を生んでそれに従うより、議員同士の議論をもっと活発にして、丁寧にベクトルを合わせていく作業こそ必要なのではないか。梅村議員はこう語る。

【梅村議員】「この組織に私が必要なのだろうかと、疑問に思ってしまった瞬間があります。平場の議論の場が、なかなかなくて。議論に参加して意見も反映されて政策ができ上がる、そのプロセスを皆で見届け、政策を国民の皆さんに届けていこうという、一体感が生まれづらかった。丁寧な議論は、自分の力を国政に生かせているという、充実感や士気につながると思います」

■離党後も「政治家をあきらめない」

「せめてもう1期続けたかったのが本音」と語る梅村議員の今後は、「白紙」だという。

だから、積極的に維新と関わり続けることも、他党候補の応援をすることにも、今は慎重なのだという。

【梅村議員】「例えば、首長選挙にも興味があります。1つの自治体に自分の人生の時間をささげて、好モデルを実現して全国展開の道を開く。いじめや児童虐待の対応とか、自治体でぐっと推し進めていくことにも興味があります。政治家自体をあきらめるつもりはないです」

梅村議員は参院で1人会派の結成を届け出て、7月28日の任期満了まで活動する予定だ。

維新が極めて強い大阪では、公認候補になれば、議員や首長の地位は約束されたに等しかった。

それが「既得権益」にならないよう、予備選ルールの策定は急務だ。そこがグダグダのままでは、府民に見透かされ、維新は大阪でもその強さを失うだろう。

(関西テレビ報道センター永田町担当 鈴木祐輔)

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