お茶といえば静岡!とのイメージが強いが、2024年、荒茶生産量で静岡県を抜き初の日本一に輝いたのは鹿児島県。実は全国有数のお茶どころ・鹿児島に、お茶に魅せられ、日々おいしいお茶を追求する小学生の「お茶博士」がいる。

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お茶博士は小学5年生

鹿児島市の小学校5年生、豊留旭くんは明るく元気な男の子。そんな彼はとにかく「お茶」に精通している。知識、技術ともに大人顔負けの、まさに「お茶博士」と言っても過言ではないハイレベルだ。クラスメートに旭くんとお茶について聞いてみると「旭が入れたお茶を飲んだことあるけどめっちゃうまかった!」と絶賛していた。

豊留旭くん(中央)とクラスメート
豊留旭くん(中央)とクラスメート

実力も一級品

お茶の世界に魅せられた旭くん。自宅を訪ねると、「こんにちは!」と、弟と一緒に元気に出迎えてくれた。家の中には立派な盾が2つ並んでいた。何の大会で優勝したのか尋ねると、「T-1グランプリ」と答える旭くん。

弟と一緒に仲良くお出迎え
弟と一緒に仲良くお出迎え

 「T-1グランプリ」とは、小学生を対象にしたお茶の大会で、筆記試験と実技試験で知識や技術を競う。旭くんは2023年と2024年、初の連覇を果たした。家族にも毎日お茶を入れるようになったそうだ。

お茶にハマるきっかけは「○○」

旭くんの母、いずみさんは「私が入れるよりすごくおいしい」と話し、父の裕章さんは「のめり込むタイプではあったがまさかお茶にハマるとは思わなかった」と語った。旭くんに、なぜこのT-1グランプリにチャレンジしようと思ったのか聞いてみると、「最初はお茶に興味がなかったが(優勝賞金の)2万円にひかれた」とのこと。その賞金で欲しかったものは「ベイブレードとハイパーヨーヨー」と、なんとも小学生の男の子らしいきっかけだった。初めは大好きなおもちゃ欲しさの挑戦だったが、勉強を始めてからすっかりお茶のとりこになってしまったそうだ。

優勝賞金でお目当てのおもちゃをGET!
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今ではすっかりお茶のとりこに
今ではすっかりお茶のとりこに

T-1グランプリでは一体どんな知識が問われるのか、旭くんに例題を出してもらうことにした。解答するのは鹿児島テレビの入社2年目、河内杏月アナウンサー。3問出題してくれるというのだが、「でも(VTRが)5分だから3問出す時間あるかな?」と驚きの一言。なんと番組で何分放送されるかまで考えてくれていた。T-1グランプリ連覇のチャンピオン、ディレクターとしての才能に、プロのテレビマンもたじたじである。

まずは簡単な問題からー

旭くん:Q.「お茶はどこの国から伝わった?」
河内アナ:「お茶は…中国!」
旭くん:「○」

最初は優しい問題から
最初は優しい問題から

次の問題は、いきなりハイレベルに…

旭くん:Q.「鎌倉時代に、永谷宗円というお坊さんが、中国からお茶の種を持ち帰り育てたことから、日本でもお茶が作られるようになったと言われています。○か×か」
河内アナ:「うーーーん…○!」
旭くん:「…×。永谷宗円は、お坊さんじゃないから。人物が違う。永谷宗円は中国の釜で煎る製法と違って、蒸して揉むお茶の製法を作った人だから」丁寧な解説はとどまるところを知らなかった 。

一転、かなりの難易度に…
一転、かなりの難易度に…

師匠の存在

たくさん勉強して、難しい知識を身につけた旭くんには師匠がいる。鹿児島市内のお茶屋さんの店主、柚木原拓朗さんだ。

柚木原さんがホワイトボードに図を書きながら「熱湯で90秒抽出したらどうなる?」と尋ねると、「茶葉がめっちゃ開いて味が濃くなる」と、サッと答える旭くん。お茶の知識を貪欲に深める旭くんの姿に師匠の柚木原さんも「色んなことに興味があって、全部吸収しようとするので、(教えるのも)楽しいですよ」と目を細める。

貪欲で可愛い弟子に師匠も目を細める
貪欲で可愛い弟子に師匠も目を細める

高度なお茶の入れ分け技術を実演

T-1グランプリで優勝してから、旭くんはお茶の魅力を広めるため、様々なイベントにも参加している。今回は旭くんが通う鹿児島市立和田小学校でその技を見せてもらった。

今回、お茶を振る舞うのは、日本有数のお茶の産地、知覧出身の中村宗義校長と、5年生を受け持つ岡野佳華先生。

旭くんが「どんなお茶がいいですか?」と聞くと、「少し苦めの大人な味」と中村校長。一方、岡野先生は「さわやかで甘いお茶で」と注文。

とても対照的な注文だが、旭くんは同じ道具、同じ茶葉を使って入れ分ける。まずは、苦めが好みの校長先生のお茶から。「(お湯の)温度で茶葉をもっと開くようにして、苦めの味を作る」と話す旭くん。お湯の温度ひとつでお茶の風味が変わるそうだ。「このくらいの熱さだったら、もうちょっと待とうかな」と、感覚を研ぎ澄まし、丁寧に入れていく。

校長先生のお茶が完成した。「どうぞお召し上がりください」「少し甘めにしてあります」と渡すと校長先生は「色も濃くて。香りもいい。少し苦みがあるが甘みもある」「やはり違う。我々の口でも分かるぐらい違う」と、とても満足した様子。

校長先生も驚く美味しさ
校長先生も驚く美味しさ

続いて岡野先生からオーダーされた「甘いお茶を淹れる旭くん。「ちょっと茶葉を少なくして味を抑える。湯冷ましを長くして温度を低くする」と話し、校長先生のお茶とはお湯の温度と茶葉の量が違うとのこと。キレのある手つきで、“旨味が凝縮している”という最後の1滴まで注ぎきり、完成だ。

同じ茶葉で淹れ分けたお茶…はたしてお味は?
同じ茶葉で淹れ分けたお茶…はたしてお味は?

岡野先生は「さっきと茶葉が一緒だと聞いたが全然味が違って甘みがあったので、旭くんの最後の一滴が良かったんじゃないか。美味しい」と、同じ道具、同じ茶葉を使って違う味を淹れ分ける技術に感心していた。

旭くんの高度な技術に先生も感心
旭くんの高度な技術に先生も感心

探究心を持ってお茶と向き合い続ける旭くん。最後に「誰にお茶を入れてみたい?」と聞くと、「総理大臣」と、笑顔で答えてくれた。

荒茶の生産で全国1位となった鹿児島。奥深い世界を求め、鹿児島の「お茶博士」豊留旭くんの探究はこれからも続く。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
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