江戸時代に大火で失われたとされている大分県大分市の「府内城」天守閣。残された櫓(やぐら)や石垣などがその歴史を伝えている。
その府内城が、2025年3月世界的な人気ゲーム「フォートナイト」のステージとして復元された。
メタバースと呼ばれるインターネット上の仮想空間に蘇らせた取り組みについて取材した。

世界に登録者が約5億人 人気ゲーム「フォートナイト」
「フォートナイト」はオンライン上に集まったプレイヤーが参加して陣取りゲームなどの対戦を楽しむゲームで世界に登録者が約5億人いるともいわれている。
今回作られた府内城はゲームのフィールドの一つとして利用できる。

大分市中心部を盛り上げる方法を模索する中で「メタバース」に着目
このプロジェクトに取り組むのが大分市のまちづくり会社おおいた未来まちづくりの代表、渡辺翔太さんだ。
渡辺さんたちが大分市中心部を盛り上げる方法を模索する中で目をつけたのが市場規模が年々拡大しているメタバースだった。
そして他県の事例などを参考にメタバースの一つであるインターネットゲームに着目。テーマに選んだのが府内城だった。
「やはり外国の方とか、県外の人から見たときに、やっぱり府内城は一番大分市のシンボルとしてふさわしいのではないかという話になって」と渡辺さんは話す。

東京のゲーム制作会社の協力も得て約300年の時を経て復元
府内城は、江戸時代の大火で天守閣が失われたとされている。
渡辺さんたちはできるかぎり忠実に府内城の姿を蘇らそうと、資料集めからスタート。
ーー渡辺翔太代表
「やはり実際に府内城がどれぐらいの大きさだったのかというところがしっかり資料として残っていたので、自分たちで実際に府内城を歩いて長さを測って」
そして東京のゲーム制作会社の協力も得ておよそ300年の時を経て復元させることができた。
復活した府内城、対戦が始まる前の待機画面は府内五番街の商店街が再現されている。
石畳や看板の一つ一つまで実際の五番街と同じように細部までこだわって再現。

制作費は約2000万円 収益の仕組みは?
かかった制作費は約2000万円。いかに収益を得るかが課題でもある。
その方法は主に2つ。1つはフォートナイトの運営会社からそのフィールドへのアクセス数に応じて支払われる配当金。
そして、もう一つがフィールド内に設置されたのぼりなどに協賛企業が広告を掲載することで得られる広告費だ。
渡辺さんたちは、こうした形で収益を得る計画で、2025年2月に発表してから、徐々に利用は広がりつつあるという。
こうしてゲームのステージとして復活した府内城、どんなものなのか詳しくみていく。
プレイする際は、まず2チームに分かれ、自分が使う武器を選ぶ。
そして、いよいよゲームスタート。
フィールドを進んでいくと、今はなき勇壮な天守閣が見事に再現されていた。

大分ならでは「温泉」で体力回復
「戦国から江戸に移るそのあたりに築城され始めた城なので戦う城ということでけっこう急斜面とか急こう配になっている」と内装について説明する渡辺翔太代表。
そして、天守閣の頂上に到着。
ーー渡辺翔太代表
「これが府内城の天守閣からの眺め。歴代の府内城の天守閣が焼けるまではこの景色をきっとここのお殿様も見てたのではないかなと」
また、フィールド内には、大分ならではのものも。「温泉」だ。
「ここに入ると、体力が回復するので闘いの合間にちょっと体力ないなとなったら入って体力を回復してもらうという感じ」と渡辺翔太代表は語った。

ご当地アイテムとしてカボスやシイタケも登場
そしてほかにも大分ならではの部分が。ご当地アイテムとしてカボスやシイタケがあって獲得すると、体力などが回復するといった機能があるという。
またゲーム内のBGMには、滝廉太郎の荒城の月をアレンジした曲が使われていたり、大分らしい演出も。
このプロジェクトについて渡辺さんは収益化だけでなく、可能性を広げたいとして教育現場で活用してもらうことなども考えているという。
メタバースを生かしたまちづくりに今後も期待が高まりそうだ。
